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夏の緑とツクツクボウシ

最近は午後になると、ひよこのお散歩のため必ず庭に出ている。

13時過ぎ~16時までの数時間、自分もひよこになった気分でお日様の下でボーっと過ごしている。とはいえ、ひよこの動きが面白すぎて、実際は観察に夢中になるからボーっとしている瞬間は多くはないのだけど。

この夏はうんざりするほど暑かったけれど、それでも汗水垂らしながらひよこたちと夏の午後の時間を過ごしたことは良い思い出だ。おかげで腕や足がこんがり焼けた。

8月下旬に鳴き声がピークになるというツクツクボウシが盛大に鳴いていて、少しずつ季節の移ろいを感じている。世界は夏から秋に変わろうとしている。

ツクツクボウシの声を聞きながら、庭に何本か生えているモクレンの木を見上げると、緑の葉が透明感あふれる様子で風になびかれていた。セミの抜け殻もくっついていた。

体いっぱいに夏を感じている。

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こんなふうに夏の緑やツクツクボウシを目一杯感じられているのは、今年の夏は何の不安も不満もなく過ごすことができたからだ。

心が凪いだ状態になるのは、本当にいつぶりだろうか。もはや懐かしいとさえも思えないほど、この感覚を忘れていた。いや、もしかしたら忘れていたのではなく、そもそも初めて味わったのかもしれない。それもわからない。

凪いだ状態というのは、とても幸せなことなのだと知った。

なぜこんな気持ちになるのかじっくり考えたわけではないけれど、理由は単純だと思っている。恐らく次の3つだろう。

仕事が順調、人と程よい交流がある、家庭と健康。

ここ数年は大体この3つのどれかでうやむやしていて、たくさん悩んだし停滞もした。3つともピタッとはまってうまくいくことはなかった。

それが今年は3つ全部がパズルみたいにはまってくれて、心が凪いだ状態になることができたのだと思う。

以前なら何もしないボーっとする時間はただもったいなく感じていたし、何かしらの不安や課題が頭を埋め尽くし、ざらざらした流れを自分のなかに抱え、綺麗な景色を見てもしこりが取れない感じだった。

それが今年は全くない。

こんな日々を過ごしていると、人間とは不思議なもので、逆に「もう二度とこんなに良い夏はないかもしれない」と心配になってくるものだ。それで少し萎えたりもするけれど、未来のことは誰にも分らないし、今この時の貴重な「凪ぎ」を精一杯楽しむことにした。

普段なら一人でこっそりこの感覚を楽しむところだけど、記録として文章にしておこうと思い、今こうして綴ってみている。

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外で暮らす生き物や植物は常に日光を浴びている。

ひよことのお散歩があることで、最近は特に日に当たる機会が増えた。太陽光はビタミンDを増やすからカルシウムの吸収に貢献する、みたいな話はよく耳にするけれど、心にもいい影響があるんじゃないかな。

とはいえ、夏の緑をのんびり楽しめているのは、基本的にはやはりさっきも書いた3つが大きく影響していると思う。

仕事が楽しく忙しいから、夏の緑が一層美しく見える。程よく人と交流を持てているから、ツクツクボウシの鳴き声に一層風情を感じる。家族円満みな健康だから、ひよことのお散歩が一層楽しい。

全部揃っているから心が凪いでいる。

これからもこの3つをどう整えて、どう維持していくかを常に考えていきたい。幸せの三原則みたいなものだから。

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