見出し画像

採集的な野菜生活

うちには雑草にまみれた畑がある。

畑といっても家庭菜園をやっている程度で、毎年夏と冬に季節野菜を少し植える程度だ。苗を買うこともあるし、種を蒔くこともある。夫がその手のことにやや詳しいため、わたしは夫の指示に従い作業をする。

ここへ引越してきたばかりの頃は、見渡すかぎり自分より背の高い藪にまみれていたのだから、農耕生活ができるスペースが生まれたのは喜ばしい。もちろんカチカチの土を耕すのには苦労したし、スコップを思い切り踏み外し、骨折疑惑で総合病院へ直行したこともある(幸い打撲で済んだ)。

そんなこんなで生まれたうちの小さい畑は、基本「雑草まみれ」である。もちろん最低限の手入れはしている。それでも夏などは客人から「ここは畑です、よね……?」と疑われるほど。

それでも自分がこの畑を好きなのには、とある理由がある。

***

わたしの趣味は旅行だ。結婚する前も、した後も、それだけは変わらない。

旅に行くとき、なるべく出発前に冷蔵庫の中身を空っぽにしておきたい性分だ。一泊ならまだしも連泊の旅となると、その間に冷蔵庫に眠っている野菜が傷むと思うから。そのため、出発前日の食卓には野菜が多く並ぶ。

逆に言うと、旅を終えて帰宅すると冷蔵庫はスッカラカン!ということになる。

先日、北陸地方へ旅したときもそうだった。出発前に野菜をほぼ消費し尽くしていて、帰宅後は空っぽ。さっさと買い物に行けばいいものの、今回はなぜか買い物に行く気持ちにならず、結局夕飯の準備の時間になってしまった。

「そういえば庭でまだナスが実ってた気がする」

買い物に行くのが面倒だった自分は、庭に出て食材を集めることにしてみた。夏野菜はほぼ終わりの時期だけれど、ナスが実っていたような、いなかったような、そんな光景をふと思い出したのだ。

淡い期待を抱いて畑に行ってみると……あった!ナスが3本。

タマネギ、カボチャ、ゴボウなど保存のきく野菜はいくつかあったから、ナスが3本あるだけで十分だった。これにより無事おかずの一品には、ナスの煮浸しを提供することができた。

そう考えると家庭菜園とはいえ、かなり適当に畑をやっているなと思う。毎日観察はしないし、収穫時期が過ぎて大根みたいに大きく成長しすぎた野菜を食べることもしょっちゅうだ。でもそれくらいの向き合い方でいいし、だからこそ楽しさがあるのかなと思う。

「そういえばあったような気がするな~」と気軽にフラッと宝探し気分で畑に行ってみて、それを採って食べる。こんな計画性のない農耕生活はもはや収穫というより「採集」に近いような気さえする。

でもそれが何故か子供の頃に感じていた遠足前のワクワク感に似ていて、クセになるのだ。わたしが雑草まみれの小さい畑を好きな理由はこんなところ。

***

もうそろそろ夏野菜は本格的に終了で、先日冬野菜の種を蒔いた。

夏野菜のクズやもう使わない葉はヤギたちが食べる。特にトマトの葉や茎は大好物で、気持ち良いくらいに綺麗に食べてくれるのでありがたい。これにて「雑草まみれの小さい畑2022夏」は終わろうとしている。

この記事が参加している募集

わたしの野菜づくり

夏の思い出

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。