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「暮らしと価値観の変化を見つめて」キッチン&マーケットブランディングプロジェクト | エイチ・ツー・オー松元努さん#2 [前編]


阪急オアシスが手がけた新業態、グローサラント「キッチン&マーケット」。2018年、梅田にあるLUCUA osakaの地下2階にオープンした食事もできる市場で、現在関西を中心に3店舗展開されています。
https://www.hankyu-oasis.com/kitchenmarket/

SKGはロゴマークやグッズのデザインに携わらせていただいております。
当時、企画開発・ブランディングをリードされていた松元さんにお話を伺うことができました。

松元さんへのインタビュー記事#1はこちら

松元努さん
株式会社エイチ・ツー・オー 食品グループ
取締役専務執行役員
SM事業 商品グループ長 兼 店舗開発部長 兼 MD計画部長

1988年(株)阪急百貨店に入社。タイ、バンコクでの駐在を経て経営政策室に配属。食品の宅配事業「阪急キッチンエール」取締役、スーパー「阪急ファミリーストア」社長、(株)阪食(現(株)阪急オアシス)取締役を歴任。PBのリブランディングや「キッチン&マーケット」の企画開発を手がける。


食材から食事へ、変化とともに

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—キッチン&マーケットのコンセプトはいつ頃からお考えになっていたのですか?

松元 スーパーは食材を売るところっていうイメージがあるじゃないですか。でも2009年から言い出していたことは、商材のウエイトが食材から食事に移行しているということです。

—食事ですか?

松元 もともとスーパーの役割は、1970年代の高度経済成長の時っていうのは冷蔵庫の代わりだったんです。いかに鮮度を維持したまま、生鮮品を消費者にお渡しするかに注力していました。
でも雇用機会均等法が成立して、「奥さん、代わりにウロコ取りますか」とか「三枚に下ろしましょうか」とかなってきて。さらにみなさん忙しくなってきて、「ここでも食べられますよ」になってきたんですね。
今、キッチン&マーケットはLDKの代わりになって「もうここでくつろいでもらいましょうか」となっていますし、今のオアシスの新店舗はイートインを充実させています。

例えば、お魚売り場でおすしを売り出したのも2009年からなんですよ。お肉売り場でデリを販売し始めたのは、結構我々早かったんですけど、今普通になりましたね。
それは食材から食事に、お客さんが買うものが変わってきているからです。
バイヤーからの「魚離れ」といった言葉がヒントになりました。

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—魚離れ。

松元 はい。
「魚離れ」とバイヤーは言うけど、日曜日、わたしの家の前の回転ずし屋さんは周りに迷惑になるくらい交通渋滞が続いて。やっと駐車場に入れてもまた名前書いて30分とか待つじゃないですか。

—ほんと、人気ですよね。

松元 今オアシスの水産部門は好調ですが、お魚売り場の売り上げの半分以上がすしと刺身です。「魚離れどこ行ったの?」ってなるんですけど。
おすしとお刺身というのは食材じゃなくて食事なんですよ。
その食事の選び方も、外食で食べるよりもオアシスでより安く、みたいな考え方に拍車がかかっていると感じていますね。

—なるほど。コロナの影響もあるんですかね。

松元 今コロナ禍で食卓の様子が変わってきています。
お客さんがアプリで食卓の様子を画像で送ってくださるんですけど、食卓のレベルがすごく上がってきているんですね。
コロナ禍で外食さんがテイクアウトやデリバリーとかに力を入れてこられた時に、自分の家でもそうなったんですけど、テーブルの真ん中におしゃれな本格的なオードブルがあって、それはレストランさんのオードブルなんですね。
で、そこにワインがあって、大皿のサラダがあって、そのサラダはオアシスのサラダをうまくボールに入れて。メインはボリューム感のあるチキンのソテーが載っているんですけど、これはオアシスでバーゲンで買ったチキンを焼いていらっしゃるんです。
家でもうレストラン気分、ものすごく上手です。みんなテイクアウトにすると高くついてしょうがないですよね。コストパフォーマンスを考えながら、いろいろ工夫して外食レベルにしちゃうみたいな方が増えています。作るものが外食的化してるなって感じていますよ。

—そういう変化があるんですね。松元さんたち、スーパーならではの気づきですよね。


人も暮らしも20年で大きく変わった

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—他にもキッチン&マーケット立案のヒントになったことはありますか?

松元 そうですね。今、高齢化社会、高齢化社会って言ってますけど、今の70代はすごくかっこよかったり、女性もきれいだったりするじゃないですか。
1971年にマクドナルドが銀座にできて、カップヌードルができたんです。立って食べる、歩いて飲むをしていた世代なんですよ。
高齢者マーケットを考える時に、やさしくかめるとかすぐ言い出すんですけど、それはちょっと違うんじゃないか、切り口が他にあるのでは…と思っていました。

あと、これは自分が経験したことなんですけど、これ古いデータですよ。2013年くらいの話です。
海外に遊びに行く人と比べて、著しく増えているのは海外に駐在する人なんです。私が行っていたバンコクには当時、日本人が3万人行っていたんですよ。すごいでしょう。今15万人っていうことです。

—そんなにいらっしゃるんですね。

松元 日本は上海でも10万人以上、香港でも7万人行っているんです。シンガポールだって今もう10万弱になってる。
旅行の人と何が違うかって言うと、語弊があるかもしれないですけど、本物のエスニック、インド料理、中華料理を知っているんです。特に向こうで生まれ育っていると。そういう人たちが実際、20年間で400万人帰って来ているわけです。
ですから我々が知ったかぶりでイタリアフェアとかエスニックフェアってやっても鼻で笑われているぞと。百貨店での海外催しでも、実際に現地に行かれたことのあるお客様からの反応が多くなっているそうです。追体験の要素があるのかもしれません。
だからこの20年ぐらいでいろんなものが変わってきたなと。それはすばらしいことだと思うんですよ。


後編へ続く

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