「お客さんはみんなお見通し」お客さんやデザイナーとの関係づくり | エイチ・ツー・オー松元努さん#3
SKGがデザインに携わらせていただいた、阪急オアシスのプライベートブランド「阪急の味」、グローサラント「キッチン&マーケット」。
それらのブランディング全体を取り仕切られていた松元さんにお話を伺うことができました。
お店の人より店のことを知り倒しているお客さん
—さまざまなブランディングプロジェクトにまつわるお話、伺ってきました。その中で、松元さんのお話には何度も「お客さん」という存在が出てきます。
松元 よく言うんですけど、うちのメンバーに。スーパーに週2回来ていただくと上顧客なんですよ。
週2回ということは年間100回ですよね。オアシスの近くに家を建てたから利用するってなると10年で1,000回来てもらうことになるんです。1回3,000円使っていただいて1,000回買っていただいたら、乗用車や超高級腕時計を買うのと変わらないくらい買っていただいていることになるんです。
ただ、1,000回というのはすごく怖くて。
例えば情けない話で、お客さんは私よりオアシスの棚にどんな商品があってどこに埃がたまっててどこのプライスカードがいつも斜めになってるかというのは、知り尽くしてらっしゃるんですよ。
週に2回いらっしゃるお客さんは、店長が変わったとか、トイレットペーパーが薄くなったとか、みんな知り尽くしていらっしゃるんです。
—(笑)お店の人より詳しいと。
松元 もう1つはチラシも分かり尽くしているんですよ。
—チラシですか?
松元 例えば5キロのお米はチラシに出る頻度が決まっているんです。5キロのお米を4人家族で消費する時の購買頻度に合わせてお米は出てくるんです。
ヨーグルトは4人家族だったらこれくらいで消費すると予想して、なくなったくらいに出てくる。全部一応ロジックがあるんですよ。
引っ越しってそんなにしないじゃないですか。スーパー選ぶ理由は7割が近いから、お忙しい人は特にそうです。
そうなると本部の我々よりも、お客さんは店の中のことを知り尽くしていて、チラシはもうパターンを分かり尽くしているんです。一応見るけど「やっぱりそうだ」と。
そうしたらチラシなんか見なくなってくるでしょう、よく来ていただいているお客さんは。
—確かに(笑)見る必要ないですもんね。
松元 2020年の秋からLINEでアプリを始めました。
で、出す情報を変えたんです。もうお客さんは知り尽くして、分かり倒しているから、「えー!」みたいな限定性や即時性に焦点を当てたんです。
例えば去年だと、サンマがなかなか獲れなくて高かったわけですね。でもたまに急にたくさん獲れて、すごく安く出てくることがあるんです。
どうしてか。サンマはすぐ腐るからです。
もう早く売りさばかないといけないんで、その情報をキャッチした瞬間に水産部のバイヤーがLINE担当に言って、すぐ載せるんです。サンマが明日だけ安いです、売り切れごめんで。
それをアプリではお客さんをクラスごとに分けて情報発信できる。健康志向のお客さんだけにとか、何々店のお客さんだけにとか、相当分けられるんです。
そうすると「私は一番店のこと分かってる」っていうお客さんに、「これは知らないでしょう」って出せる。すると来店回数が増えてくる。
週2回、3回とよく来てくださるお客さんの来店回数を増やすっていうのはものすごく難しいんですけど、チラシの反応よりもアプリの反応の方が高いんですよね。
半年間で9万人くらいアプリを入れていただきました。LINEだったら今70代、80代の方でもお孫さんとのやり取りとかで使っていますから、見てくれるんですよ。
アプリだとお客さまが反応していることが見れて、そこがすごくよかったなと思います。
「夢の中まで出て行く」くらい質問責めに
—なるほど、LINEというところもポイントなんですね。
松元 はい。メッセージの出し方などは、お客さんとの接点が狭域で多頻度なところがゆえに、より大事になってきたなと思います。
例えば、アプリに載せるサンマのキャッチコピーが、チラシと同じような「今年のサンマは安い高い」みたいなキャッチコピーだったら困るわけですよね。安いのには訳があるっていうストーリーを載せるのと、画像のビジュアルもちょっと考えて、とか必要なんですけど。そうなってくると今までの感覚を変えないといけないですね。
だからアプリ担当している人間にも、「バイヤーを質問責めにして『夢の中まで出て行くように』」ってよく言うんですけど、そうじゃないと今までの感覚を変えることはできないみたいなところがあると思うんです。
—私たちも結構質問することが多いかなと思っています。こうしてほしいというオーダーに対しても、何でこう思うんですか?みたいな質問を繰り返していくことも多いです。
松元 そういうふうに考えられるというのは、すごく大事なことだと思っています。
クリエイティブに作っていくという中では、聞いてもらうっていうのは我々のメンバーにとってもすごく大事なところで。
「何となくこんな感じで」と言ったものを印刷会社さんがそのまま出してこられることがあって。それは困る、というのはいつも言っているんですけど。
でももう印刷会社さんもずっとそれできていて。例えばここに牛乳198円で置いたら10万本売れます、みたいな固まったロジックの中で動いているところがあるんですよね。
だから何か表現するってなった時にまずは聞いてくださるっていうのはすごく大事なことかなと思います。
例えば百貨店でいたときは、まず先にコピーライターからうんざりするくらい質問を受けるんですよ。「なんでこんな商品売るんですか」「何がウリなんですか」とか「それでうれしいんですか」みたいな。で、返しているうちにいいキャッチが出てくるんですね。
—前提を疑う姿勢の大切さですよね。
デザイナーやライターとのいい関係を作りたい
松元 「何かとりあえずいい感じにやっといてよ」「いいキャッチ考えといて」とか、「見たら分かるでしょ」みたいなお願いの仕方をして、またデザイナーも「分かりました」って受け取っちゃう。
それではいいものを作るのは難しいと思うんですよ。
—残念ながらそういうケースもありますね。
松元 今少しずつそれを変えていこうとしていて。
ここの事務所の中にも百貨店からの参画者も増えてきています。今からそういう部分を少しずつ取り入れながら、変えながらやろうとしているところです。
私はうまく表現できないですけど、「聞かれたことにちゃんと答えてたら、いいように作ってくださるわ」というふうに商品側やいろんな人間が思えるようになると、デザイナーさんとかクリエイターの方といい関係になれると思います。
—ありがとうございます。そのような関係が築けると、デザイナーも力を発揮しやすくなるかなと思いながら伺いました。
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お忙しい中、さまざまなお話を聞かせてくださった松元さん。
松元さん、お時間ちょうだいしありがとうございました。
お近くの方はぜひ、阪急オアシスやキッチン&マーケットのお店にもお立ち寄りください。
https://www.hankyu-oasis.com/
SKGのstoriesでは、noteに収録しきれなかった松元さんのお話を番外編としてご紹介しています。松元さんのお仕事だけでなく、すてきなお人柄もお伝えしています。
ぜひご覧ください!
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