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「労働者」じゃないの?家事使用人の雇用ガイドライン

今年秋頃のフリーランス新法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」)の施行が騒がれる中、フリーランス同様に労働基準法の適用除外である家事使用人に関するガイドラインが公開されました(2024年2月8日)。

ガイドラインには、2023年9年に公表された「事使用人の実態把握のためのアンケート」(独立行政法人労働政策研究・研修機構実施)の結果を踏まえて、家事使用人の働きやすい環境を確保するための、労働契約を結ぶ際注意点や、就業中に留意すべき事項等が記載されています。

ガイドラインの主な内容は下記の4点。
雇用主、家事使用人本人、家政婦(夫)紹介所の三方に向けた留意事項です。

①労働契約の条件の明確化
②労働契約の条件の適正化
③適正な就業環境の確保
④保険の加入状況の確認
出典:家事使用人の雇用ガイドライン(概要版)

家事使用人は労働基準法は適用対象外ですが、労働契約法に関しては適用対象のため、①は義務の再掲の意味合いですね。
②や③は現状法定の義務ではありませんが、労働基準法や労働安全衛生法に定められている労働条件の基準・安全衛生管理を推奨する内容になっています。

前述したアンケートを見てまず驚いたのが、家政婦(夫)紹介所の数。全国に541箇所(※1)もあるそうです。ハローワークの数が544箇所(※2)なので、ほぼ同数ですね。ちなみに家事使用人の数は9,220名との報告です。
※1:令和2年度職業紹介事業報告で報告されている紹介所の全数
※2:令和5年4月1日時点

そして次に、属性と労働時間。
今回アンケートの有効回答数が約2,000件。99%が女性で、年齢は60代が27%、70代が50%、80代以上が7%。全体の1日の平均労働時間は2〜5時間であると回答をしたのが約40%で最も多い。と、ここまでは、ふむふむなるほどね、と。
ただし中には、1日10時間以上働いている長時間労働の層が13%ほどいるようで、なんとこの長時間労働層、年齢が高くなるほど割合が高くなっています。実に70代以上の17%が10時間以上働いているとの結果です。

有効回答が約2,000名、そのうち60%弱が70代以上で、その17%…最低でも200名の高齢者が1日平均10時間以上働いている・・・!?(有効回答が2,000件と全体の21%なので、実際の人数はもっと多いはず)
ただし、70代の60%が週平均勤務20時間未満と、必ずしも週5日フルで働いているわけではないようです。

また業務内容と労働時間の関係についても分析されており、「掃除」「洗濯」「食事」等に主に従事している方よりも、「高齢者・認知症介護」「障がい者の介護」に従事する時間が最も長いと回答した層の労働時間の方が比較的長い傾向にあるようです。

なんとなく労働の実態がイメージできてきました。

同一の人に家事使用人としての業務と、介護保険サービスの双方を依頼しているケースも多くあるようで、それらの業務区分を明確にすることや、合算した労働時間の管理等家事使用人の過重労働を防止するための注意喚起がガイドラインにおいても取り上げられています。

長時間労働撲滅、過重労働の防止が謳われる昨今、ましてや高齢者の勤務時間については労働基準法の適用有無の如何に関わらず、注視していかねばなりませんね。
(まだまだ現役並みに元気ハツラツな高齢者の方も沢山いらっしゃることとは思いますが・・・!)

その他相談先やハラスメント、業務中の怪我や保険加入等、「労働者」に関する基本的な事項がわかりやすく解説されたガイドラインになっています。

ライフスタイルや働き方の多様化が進む現代において、守らねばならない「労働者」は労働基準法に定める労働者だけではありません。
広義の意味での「労働者」にまでも必要な権利を保障し、働きやすい環境を整えることが求められる時代なのではないでしょうか。

最後に、ちょっと興味深い比較。
最近何かと話題の従業員満足度調査。
家事使用人の肯定解答率(満足している・やや満足している)は、なんと85%!
一方、少し古いですが、2021年にリアルワンが行なった日本の従業員満足度全国調査では、肯定解答率は約50%でした。
出典:従業員満足度、エンゲージメント、 在宅勤務・テレワークの 基礎データとそれぞれの特徴

・・・日本の肯定解答率に寄与できるように頑張るぞー。

参考文献:
厚生労働省HP 家事使用人について(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00454.html

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