米国での就労ビザを失った外国人技術者や科学者はどこへ向かうのか?

トランプ大統領の勝利

2016年11月8日、あの米国大統領選の日だ。

私は、ニューヨーク・マンハッタンにあるアジア料理店3階にある古くて薄汚いアパートの一室にいた。ベットの上以外に居場所がない狭い部屋だった。PCを開き投票が進む様を眺めていた。野次馬根性を出して中心部へ行きたい気持ちはあったものの、万が一でも事件に巻き込まれてしまっては困ると言うところで大人しくしていたのだ。

開票が始まってから数時間、トランプ大統領が優位であるという情報が流れ出した。当然、事前の予想通りクリントン候補が勝つと思っていたし、トランプ候補と接戦するとすら考えていなかった。これはまずいことになってきたぞと、共用リビングにあるTVをつけて真剣に放送をみはじめた。

当時、南カリフォルニアを拠点にNY、ボストン、シカゴ、シリコンバレーを旅していたので、Uberに乗るたびに「あなたは次の選挙で誰に投票する?」と必ず聞いていた。外国人であることをあかした上だったので大抵ははぐらかさず答えてくれたのだが、Uberの運転手の半数以上が「トランプ候補へ入れるよ」と答えていたのがずっと心に引っかかっていたのだ。

就労ビザ発給に関する規則の変更

トランプ大統領の勝利が揺るがない状況になった頃、ウォール街にある投資銀行へインターン中のフランス人学生(パリ在住・当時MBA候補生)のジャンくん(ルームメイト)が帰ってきた。二人でリビングのTVを眺めながら「アメリカはこれからどうなっていくんだろうねぇ。僕らは日本人とフランス人だからアメリカで就労ビザを得るなんてのはかなり厳しくなるね」なんて話したものだ。

トランプ大統領は移民へ厳しい処置をとると宣言していた。米国の強さの源泉は、研究から実用化へ向かうエコサイクルにある。莫大な研究予算を投ずる政府、寄付を惜しまない民間人、予算を費やすに値する世界トップレベルの研究開発機関、革新的な研究を知財に変えるためにリスクを取るスタートアップ、リスクマネーを供給する投資家の存在は必要不可欠だ。やりすぎては国力を低下させる。

しかし、2017年4月、トランプ大統領は、宣言していた通り高度なスキルを持った外国人労働者向けの就労ビザ(H-1B)発給に関する規則を変更する意向を示した。賃金水準が最も高い申請者への発給を増やすと言明したのだ。インド人技術者は米国内における安価な技術者需要にこたえていたが、経済合理性の視点からインド人を含む海外人材を雇うことに疑義が生じ始めた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29940260X20C18A4FFN000/

https://www.technologyreview.jp/nl/the-us-government-may-restrict-chinese-researchers-and-that-would-be-a-disaster/?utm_source=MITテクノロジーレビュー+-+ニュースレター&utm_campaign=4fe53922c0-NewsLetter_TheDaily&utm_medium=email&utm_term=0_6f0fb6e76b-4fe53922c0-194308045&mc_cid=4fe53922c0&mc_eid=26f6b62a7f

カナダを目指す技術者たち

そこで、白羽の矢がたったのはカナダである。バンクーバー、トロント、モントリオールらの大都市圏は既に多種多様な民族が入り混じって暮らしており住環境はとてもよい。また、アメリカ企業にとっては時差がなく仕事ができる点でもメリットがある。この機会を好機ととらえたカナダは、アメリカとは真逆に高度なスキルを持った人材へのビザを緩和する方針を打ち出した。

もともと昨今の人工知能ブームの火付け役となった舞台はカナダだった。ディープラーニングの衝撃の発信元であるジェフリー・ヒントン氏はトロント大学の教授だ。モントリオールも同様である。人工知能の研究所がどんどんできていると聞く。あまり知られていないが人工知能研究は実に泥臭い作業がおおく、人手も必要になる。不足する人材を広く海外から募ると言うのは実に合理的である。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24568950T11C17A2970M00/

http://torja.ca/toronto-amazon

インド人技術者は日本へも?

最近、私の生活圏内に日本で就労するインド人が増えてきた。だから、当然増えているだろうと思い直近の「外国人雇用状況」の統計を見たところ、残念ながら悪い意味で愕然とした。

確かに外国人労働者は増え続けており、前年同期から18%増加、5年連続増加らしい。しかし、インド人が特段目立って増えている様子はない。製造業へ従事する人材が多く、情報通信産業に従事する外国人労働者は52,038人(前年同期比4.1%の増加)と相対比較した場合、増加量はかなり少ない。しかも、インド人の就労者数が全体と比較して少ないので増加数を把握することすらできなかった。

折角、千載一遇の好機が到来しているのだから、日本企業はインド人技術者を積極的に雇用しても良いのではなかろうか。真面目なインド人は本当に一生懸命働いてくれるし、ステレオタイプのように騙してくるインド人もいる。これは日本人も同じである。文化の壁は無いとは言わないし、様々あるものの私は強くオススメしたい。

えっ、弊社?当然高度なスキルを持った外国人技術者を積極雇用しますよ(笑)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26189750W8A120C1EA4000/

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192073.html

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