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【Hanoi, Vietnam】チャビー君

ハノイ行きの飛行機は午後10時15分の出発だったが、遅れがあったのか出発は11時30分ごろだった。

機内には修学旅行なのか、何かの団体旅行なのか、多くの子どもたちがいた。座席はと言うと、窓側から女の子、中央にチャビー君、通路側にぼくだった。

そして、このチャビー君、席に着くやいなや食事メニューを眺め始めた。LCC(格安航空会社)なので機内食などは出ず、都度支払いをする必要があるはずだ。

離陸後、すぐにCAさんを呼び止め、ごはんとジュースを注文! 30分かかると言われていたが、他の子どもたちにお菓子やジュースが先に来ると待つことができなくなったのか、

「エクスキューズミー!!」

と何度も自分の注文の進捗を確認していた。

そして、ついに! ジュースが来た時、

チャビー君は、既に定位置を決めていたかのように、CAさんが氷の詰まった青のプラスチック・コップをテーブルのくぼみに置こうとする手を払いのけ、ペットボトルのジュースを自分で置き直した。さらに、入れ方はとても慎重にまるでバーテンダーがウイスキーグラスに注ぎ込むかのように、グリーンティージュースをコップに満たした。

彼は「一滴もむだにしないぞ!」という心持ちで注ぎ入れ、キャップを閉めた後もペットボトルを傾けながらキャップに指をあてがい、ごぼれてこないかどうかのダブルチャックも行った。

最初のオーダーが来て安堵したのか、とてもうれしそうに満足そうに笑う。

そして、ようやくメインディッシュが来た。待ちきれずにシルバーの入れ物を自分の側へ引き寄せる。


「あっちー!!」

すぐさま手を払いのけ、ブンブンと手を振ってその熱を逃がす。

「でも、来たのである!」

そのうれしさが勝っていたのか、何度も人差し指をシルバーの部分に当て、熱さを確認する。そのやけどすらもうれしいようでニコッと笑い、手で首裏をさする。

それにしても、おいしそうに食べる。

彼は食べ始めるとすぐに独自の食べ方を完成させた。ブルーのスプーンを右手に、ブルーのフォークは左手に持ち、それらを巧みに操作する。なくなりそうになれば、股に挟んだペットボトルを手に取り、コップに注いだ。

「お金なんて二の次だ!」

受け取ったお釣り札をシートに置いたかと思うと、太ももを重石にしふたをする。一心不乱に米をかきこむ。

CAさんがやって来て、彼の頭上のライトを点ける。

その瞬間、彼だけにスポットライトが当たり、舞台上で食事シーンが行われているかのようだった。

隣にいるぼくは完全に陰になってしまい、木の役になっていた。


本当に愛らしい、おもしろいチャビー君だった。ほんわかさせられた、ハノイ行きの機内だった。

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