『おんな極悪帖』(1970)【この映画に注目!】
「地獄、極楽、覗きカラクリ―――」
…おぉ、素晴らしい。♪
これが、「映画は大映」と世に言わしめた大映が、
最期に振り絞った断末魔の喘ぎか…!
狂気と野心と陰謀が渦巻く、ゲバゲバピカレスクロマン。
謀略、殺害、裏切り、殺害の連続でグエグエと何人も死んでゆくが、
同情や哀れみを誘うキャラが全く存在しない。
どいつもこいつも、ゲッスくて楽しいヤツらばかり。(笑)
最終的には、登場人物がほぼ全滅!という素敵な展開。☆
主人公となる側室の安田道代をはじめ、
強請りタカりの小悪党に遠藤辰雄(遠藤太津朗)、
スケベぇな奥医師に小松方正、
他にも佐藤慶、芦屋小雁と、いずれもハマリ役。
特に怪優・岸田森のイカれっぷりは、観る者の期待を裏切らない。
気まぐれに家臣の首を刎ねたり、逃げ走らせて弓矢の的にしたりと、
ヒャッハーな振る舞い!
この危険な殿様を、『血を吸う』シリーズの吸血鬼にも並ぶ、
岸田森のベストアクトに挙げておられる方も多いが、
役者と役柄のシンクロ度があまりにも高く、違和感が無さ過ぎて
逆に普通に見えたりする。(笑)
彼の場合、青白いメイクだけで既に狂気なのだ。☆フハハハ…!
自分の中では、『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』の汐路章と
双璧を為す乱行殿様だが、東映のエログロ路線とは毛並みが違う。
良く言えば上品。悪く言えば物足りない。
しかし個人的には、やはり田村正和。
まるで役者絵から抜け出して来た様な色男。♪
スゥッ…と前髪を掻き上げながら、あの例の声で、
「何事も、御意のままに…」
…もうあれだね、「クール」とか「色男」ってのは、
マサカズのために用意された言葉だよねきっと。☆
殺陣がイマイチとの定評があるマサカズだが、この作品においては
それが功を奏しているのでは(?)と思われる。
一瞬にして複数の敵を斬り倒す剣の手練れながら、何処と無しにバタ臭く、止めを刺す時は何故か、ヤクザの様にブッ刺す!(笑)
そして返り血まみれになりながら、またスゥッ…と前髪を流して
クールダウンするのだ…。
この緩急の付け方がね、もう堪まらないのよ。♪
…まぁいずれはさて置き、
「照千代様、グッジョブ!」
と言う他は無いね。(笑)
ラストカットで、奇しくもファイナリストとなった者が見せる
あの高笑いが、不気味で忘れられない…!☆
(“ファイナリスト”とはいえ、決して“勝者”ではないのだが…。)
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