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めっちゃ燃えるごみ(戯曲)

 老人がきょろきょろしながら舞台の真ん中まで歩いて来る。
 
 老人はごみ袋を1つ置き、足早にその場を去ろうとする。
 
 下手から青年が登場する。
 
青:ちょっと待ちなさいよ。
 
老:・・・・・・なにか。
 
青:これ、ちょっと。
 
 青年はゴミ袋の中を確認する。
 
青:やっぱり。今日は「燃えるごみ」の日ですよ。これ、「めっちゃ燃えるごみ」が混ざってるじゃないですか。「めっちゃ燃えるごみ」は第3金曜日ですから。
 
老:おや。ついうっかり「めっちゃ燃えるごみ」が混ざっていたようですみません。
 
 老人はゴミ袋をひったくって帰ろうとする。
 
青:あなたね、そんなこと言ってこの前も「やや燃えないごみ」の日に「かなり危険なごみ」を出そうとしてたじゃないですか。その前だってそうだ。「明らかにプラごみ」の日に「もう少しで古紙」を出そうとしたりね、あなたね、こんなことしてるとそのうち捕まりますよ。
 
老:捕まるってねえ。そもそも、分別がおかしいんだよ分別が。細かすぎるんだから。
 
青:あなたたちがごみを雑に捨ててきたせいでこうなってるんでしょうが。
 
老:うるせえよ。何でもかんでも俺たちのせいにしやがって。
 
 怒った老人が青年に「めっちゃ燃えるごみ」を投げつける。
 
 青年も怒って老人に掴み掛かる。
 
青:この、ごみが、ごみじじい。ごみじじいが。
 
 青年が老人の首を思いきりしめていると、老人が動かなくなる。
 
青:はあ。はあ。はあ。・・・・・・や、やばい。やっちゃった。
 
 青年は周囲をうかがいながら老人を引きずって去って行く。
 
 暗転
 
 青年が、明らかに人が入っている大きな黒いゴミ袋を舞台の中央まで引きずって来る。
 
 青年はゴミ袋を置き、足早にその場を去ろうとする。
 
 警察官Aがやって来る。
 
警A:すみません、ごみの分別の抜き打ちチェックやってまして。
 
青:え、そんな! あ、いや、その。
 
 警察官Bも来て、青年を逃がさない。
 
警B:お手間は取らせませんので。
 
警A:なあ、今日は何の日だっけ。
 
警B:「やるせないごみ」の日
 
青:あ、あ・・・・・・。
 
 警察官Aが袋の中を見て眉をひそめる。
 
警A:こ、これは、一体どういうことですか。
 
青:それは、あの・・・・・・。
 
警A:これは明らかに、「燃えるごみ」ですよね。
 
警B:「燃えるごみ」の日は明日ですね。
 
青:あ・・・・・・す、すみません。勘違い、してまして。
 
警A:今回は見逃しますが、気を付けてくださいね。では。
 
 警察官2名は去っていく。
 
 青年は、嫌そうに、ごみ袋を引きずって家に帰る。
 
 
 

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