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土曜日は家族で中華

幼い頃、毎週土曜日は家族で中華料理屋へ行くのが習慣だった。

父が休みであったので、一週間の疲れを取り、家以外の場所で家族と時間を過ごし、母を労うために計らったものだったのだろう。昼過ぎ頃から出発して、スーパー銭湯に寄ってから中華を食べに行くのがお決まりのコースだった。

店に着くのはおよそ17時頃。
サウナで4キロ痩せてしまう父は大ジョッキのビールをものの10分ほどで2杯飲み干す。いい飲みっぷりだねぇと中華屋の女将はいつもの笑顔。柔らかい空気に包まれた心地の良い空間はまるで親戚の家のようだった。

中華屋は右手に田んぼ、左手に学校が見える道路の真ん中あたりにポツンとあるお店だ。お世辞にも綺麗と言える外観ではないが、中は綺麗で沢山の人が行き来しているため建物が生き生きとしている。価格もリーズナブルで早くて美味しいことから週末は地元の人で溢れる街の人気店。

一押しのメニューはラーメン。
でも決まってチャーハンを頼んだ。幼少の頃はラーメンがそれほど得意じゃなかったからだ。女将に今日はどうするの?と聞かれても頑なにチャーハン!と声を上げた。

笑いが起きる。空気が和む。
その場所が大好きだった。

今、街で中華屋を見かけるたびに懐かしい気持ちになるのは幼少の頃の思い出があるからだ。ふと中華を食べたくなるのもあの空気を思い出したくてドアを開くのかもしれない。

綺麗でなくていい。
活気があって、中華鍋を振る音が聞こえて、みんなが大きな声でおしゃべりをする中で女将があちらこちらに動き回る。そんな場所を見つけると気になってしょうがない。

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