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いつまでも、真剣に遊ぶ【24.3.17】

・明るくなって目を覚ますというのが増えてきた。足元で寝ている猫といっしょに伸びをして起きる。

・「病欠がでちゃって、午後の三時間だけ仕事に入れない?」と同僚からメッセージ。日曜日の午後の数時間なんて特に忙しいこともないはずなので快諾する。

・午前中の間は庭の仕事をしつつ、明日のカヤックの準備をする。枝集め、薪割りは永遠に終わらない。キリがいいタイミングでカヤックの点検をし、ギアを車に詰め込んでおく。

・明日は天気も海も穏やかそうなので、マセットの入り江を漕いでみることにする。外海に面したマセット周辺の海は冬の間荒れることが多いが、2日前から風もほとんど吹いていないので大丈夫なはずだ。オールド・マセットの墓地の奥から漕ぎ出して、入江の対岸のヤーン村跡を訪れたい。

・工房ですこしパドルの彫刻を進めて削りかすを集める。かんなガラは焚き付けにぴったりなのだ。イエローシダーの薄皮は樹脂をたっぷり含み、よく燃える。

・スープとバナナで簡単にランチを済ませ、村に向かう。クライアントの一人は外出しており、もう一人はずっと昼寝をしていたので、先住民文化セーフティのトレーニングを受講して三時間を潰す。

・6時に家に帰り、隣の家に遊びにいく。ルークの家には本土BC北部のテラスから遊びに来ている友人がいた。今日はセント・パトリック・デイ。アイルランドの血を持つルークにとっては大切な祝日。

・ハイキングから帰ってきたシャーとビクラムも合流。にぎやかにソーセージ・マッシュポテト・サラダのディナーをいただく。

・シャーのパートナーであるビクラムは日本とインドのハーフ。母親は倉敷出身で、母方の家族はみな日本にいる。バンクーバーで育った彼は現代アートをノルウェーのオスロで学び、今ではハイダグワイの小学校で給食を作っている。
「自分の食べたいものを食べたいだけ作って、子供達を満腹にさせて、金をもらえる。アートの何倍も素晴らしい仕事だよ」と南アジア由来の掘りの深い目を細めて笑う。

・彼の携帯には来週の給食スケジュールがあり、そこには肉じゃが・からあげ・カニコロッケが並ぶ。ほとんど日本食である。いつでも食べに来いよ、俺の友達はみんな給食タダだぜ、ということ。

・ルークの製材仕事で出た木のゴミを燃やして火を囲む。ビクラムと北欧とカナダの話になる。同じ北国とはいえ、スカンディナヴィア諸国における生活とカナダの田舎暮らしは大きく異なる。もちろん、日本のそれとの差はさらに大きい。

・開拓国家・植民国家であるカナダの自由な環境、単一民族国家日本の和が重んじられる環境をパラダイムの両端に据えるとしたら、個人主義的かつ社会主義的な北欧における生活はその曖昧な中間に位置づけることができる。北欧の洗練されたシンプルな生き方も、日本の「世間」的な世界も甲乙つけがたいが、カナダの特に田舎における「大人でもバカできる」ような環境は単純に楽しい。

・何もかも適当で大雑把で、周りの目なんて気にせずに好きに生活し、心持ちのいい仲間と時々こうして火を囲んでビールを飲む。いまはこれでいい。

・みんなが去った後、ルークとふたりで木材の山を燃やし切ってしまう。ふたりで粉塵まみれになりつつ火を大きくする。「妻にはないしょだぜ」と言ってルークが持ってきたのは古いガソリン。ジップロックにガソリンを詰め、火に投げ込んで爆発させて遊ぶ。レッドネック的な遊びである。

・いつも父親業でてんやわんやのルークとふたりでじっくり話す機会は、よく考えたら初めてかもしれない。彼のこれまでの島での生活や家を買うこと、今後のプランなどを聞かせてもらう。
「この物件はむかしレストランで、父親と小さい頃にサーフィンをした後スープを食べにきていたんだ。そんな場所が自分のものになるなんて、今でも信じがたいよ」
ルークの家の敷地には古いレストランとキャビンが立っている。4月には音楽イベントも始まるのだとか。エレーナが大きくなったらでかい家を隣の空き地に作る予定だよ、と嬉しそう。

・ハイダグワイの川辺に30歳で土地を持ち、自分の好きなように好きなものを建て、家族と住む。これまでいろいろな家族像のロールモデルを見てきたけれど、彼のそれも理想の一つだ。

・束の間ひとり暮らしの男性となったルークとふたりでビールをたくさん開け、ピクルスとサラミをつまみながら話すのは楽しかった。彼も8月の間一ヶ月間のカヤック旅を計画している。モレスビーのどこかで会えれば最高だね、と話し、おやすみを言って別れる。

・明日は久しぶりにカヤックを漕ぐ。早めに寝る・

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