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【ウェビナー前編】シノプス×東急ストアのDXを活用した食品ロス削減と生産性向上

4月20日に「東急ストアのDX戦略 ~ リアルタイム在庫・需要予測 を活用した食品ロス削減と生産性向上 ~」と題したウェビナーを開催しました。スーパーマーケットでの作業効率化や食品ロス削減など、東急ストアさまとシノプスが一緒に取り組んだ事例についてお話ししました。前編ではデリカ部門の値引き作業のDX事例をご紹介します。

東急ストアとは
東京都目黒区に本社を構え、東京、神奈川の東急沿線を中心に首都圏で87店舗を展開する総合小売業のチェーンストア。主力業態である食品スーパーマーケットの「東急ストア」をはじめ、ハイクオリティー&ハイサービスをテーマに健康・品質・味にこだわった食の専門館の「プレッセ」、小型スーパーマーケットの「フードステーション」などの6業態を展開しています。

東急ストア ウェブサイト

東急ストアのDX戦略

まずは東急ストア営業本部デジタルマーケティング部DX推進課長の山口 修平さまに東急ストアさまのDX戦略についてご説明いただきました。

東急ストアさまでは、近年の少子高齢化・人口減少や新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化などを受け、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を打ち出しています。

小売業を取りまく環境の変化
➤少子高齢化による労働力不足
➤ローコストオペレーションの限界
➤購買人口減少
➤余剰消費減少
➤コロナ禍による購買行動激変

「こういった環境の変化に対応するにはデジタル技術を駆使した抜本的な改革が必要と考え、社長を筆頭に役員や部長、課長まで全社を上げてDX戦略を推進しています。経営者にはスピーディーな経営判断をしてもらい、そしてあらゆる部署、店舗を巻き込むことで、新しい発想が生まれると考えています」(山口さま)。

お付き合いは賞味期限切れチェックから

シノプスと東急ストアさまのお付き合いは2017年から。賞味期限切れの商品の販売を防止するために賞味期限チェックアプリ「sinops-Dcont」を採用いただいて以来、さまざまなシステムを導入いただいています。

東急ストアさまとシノプスの取り組み

東京都ICT活用食品ロス削減事業に共同で取り組む

2020年にはシノプスが東京都の「ICT 等を活用した先進的な食品ロス削減」に向けた新たなビジネスモデル事業に応募したことをきっかけに、需要予測型自動発注システム「sinops-CLOUD」を活用した食品ロス削減の実証実験に共同で取り組みました。
「ちょうど当社もデリカ部門の値引き業務をシステム化したいと考えていたタイミングでお声がけいただきました」(山口さま)。

ICT等を活用した先進的な食品ロス削減
新たな情報通信技術であるICT等の活用により食品ロスの削減に向けた取り組みを先駆的に実施する事業者を公募し、事業に要する経費の一部を補助するもの。
対象事業は、ICT等を活用した食品ロスの削減で、以下の効果を期待。
1)新たな技術の活用による効果的な食品ロスの削減
2)新技術の新たな市場創出
3)食品サプライチェーン全体へ食品ロス削減が波及

東京都報道発表資料(東京都公式ホームページ)を要約

お惣菜の値引きは担当者の経験と勘頼み

お惣菜やパンは賞味期限が短く、食品ロスが多いカテゴリと言われています。どのタイミングでどのくらい割り引けば良いか判断が難しく、売り場担当者の経験と勘に頼っているお店が多いようです。東急ストアさまでも「担当者によって値引き作業にばらつきがある」と、各店舗からの声があったと言います。

【例】23時閉店の店舗で19時にカットフルーツの在庫が10個の場合
Aさん(社員10年目)
閉店までに売れると見込み22時時点では値引きを行わなかった。
22時時点で在庫が残り2個になったため、値引き率20%に設定し、閉店までに売り切った。

Bさん(アルバイト1か月)
19時に10個すべて値引き率20%で設定し、22時で売り切った。
ロス金額はAさんより高くなった。

在庫数を15分単位で把握

そこで、シノプスと東急ストアさまは、お惣菜の値引き業務にAIを活用する取り組みを推進するべく、データの収集から着手しました。
新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要などにより、お惣菜の売れる種類や購入のタイミングが変化しました。そういったデータをAIに学習させるため、発注情報や納品情報、レジ通過情報のほか、インストア調理品は製造実績や計量器の情報も収集し、「sinops-CLOUD リアルタイム在庫」と連携。その結果、在庫数を15分ごとに把握できるようになりました。

需要予測と発注を自動化し、欠品を防ぐ

データをもとにsinops-CLOUDの特徴であるAIによる需要予測を実施しました。商品の販売実力(過去の値引きや廃棄実績など)に応じて発注量を自動調整。さらに惣菜などのデリカ食品は「どこまで売上を伸ばせるか」が重要になります。「単品の欠品補正をするだけでは不十分。対象のカテゴリの販売力をロジックを用いて査定し、伸張する可能性がある商品や店舗については大幅に発注数を増やすなどの伸びしろを自動考慮できるように設計しました」(山口さま)。

AIが適切なタイミングで値引きをアラート

当日の商品の陳列量をリアルタイム在庫で把握し、今後の天候などから時間帯別の来店客数、販売数を予測し、在庫数が想定通りかを自動でチェックします。在庫数が余剰になった場合は値引きアラートを発報します。
「現場では売り場に並ぶ数を見て『ちょっと多いなぁ…』と不安に感じ、感覚で値引いてしまうことがあります。AIを活用して適切なタイミングで適切な値引き率を算出することで、粗利の改善と食品ロス削減の両立が実現できます」(山口さま)。

食品ロスは半減、売上と粗利も数ポイント改善

このシステムの導入により、東急ストアさまでは実証実験を行った30店舗の平均で食品廃棄330kg削減、売上8ポイントアップ、ロス金額10ポイント改善(月/店舗)の効果が得られました。「単純計算にはなりますが、全国2万2000店舗のスーパーマーケットで同様の効果を出せたら、食品小売業の食品ロス64万トンのうちの2%を削減を実現できます。さらに食品ロスの削減のほか、同じ売れ数でも値引き業務を最適化できたことで、売上が数ポイント改善することもわかりました」(山口さま)。

東急ストアさまでは全店舗で導入済み

東急ストアさまではすでにsinops-CLOUDによる値引き業務を全店舗で展開いただいています。「アウトパック品については今年の2月に全店で導入済みです。インストア加工品に関しては小型店を中心に9店舗で導入しています。中型・大型店については今後導入を検討しています」(山口さま)。

後編では、品出し支援とネットスーパーのピッキング作業の改善について紹介します。