見出し画像

今こそ地方の医療をアップデート!北信越スタートアップの挑戦

地域医療における課題は深刻化する一方ですが、その解決に向けて地方発のスタートアップが革新的なアプローチを模索しています。本記事では、彼らの挑戦とその可能性に焦点を当て、地域医療の未来に新たな光を当てます。


日本の医療業界の現状と課題

<出典>日本の医療課題・問題点を分かりやすく整理【一覧表付き】 | 大病院の事務業務を90%削減するアルテリア(特許取得) (workvision.net)

日本の医療業界は、先進国でありながらもさまざまな課題に直面しています。以下に、その一部を抜粋して示します。

医療の地方格差

都心部から離れた地域に住む住民たちは、都市部に比べて医療サービスの提供が限られているため、健康へのアクセス権に大きな格差が生まれています。これにより、病気や怪我の治療が遅れることで、健康状態が悪化するリスクが高まります。具体的に、京都市のではこのような事例があります。

例えば、京都府の北のほうで心筋梗塞を起こした患者を、その地域で治療できる態勢がなければ、京都市まで行かなければならない。しかし患者にとって、それだけ移動する余裕はない。「肺ガンなどであれば、京都府のどこからでも患者は京都市に来ることができる。もちろん地元で治療できればいちばん患者も楽でしょうが、あらゆる地域にそういった能力をもつ病院をつくることは、予算上からも専門家が必要ということからも無理です。ですから5疾病の中でも心筋梗塞と脳卒中に関しては地域の仕組みづくりがとても重要になります」

<出典>地域医療の格差をなくす - POLICY DOOR ~研究と政策と社会をつなぐメディア~

医療機関の経営状況

  • 約4割から5割の病院が赤字経営

  • 物価上昇や光熱費の高騰により、2022年度には約52%の病院が赤字経営となっています。

<出典>医療機関経営状況調査(一般社団法人 日本病院会、公益社団法人 全日本病院協会、一般社団法人 日本医療法人協会)

医療従事者不足

  • 超高齢化により医師・看護師不足が深刻です。

  • 人手不足を補うために長時間労働を強いられる医療従事者も多く、休職者や離職者が増加しています。

  • 医療従事者の数に地方格差が生じており、持続可能な医療体制が危ぶまれています。

医療費の増加

  • 日本の医療費は年々増加しており、高齢化の進展によりさらに増加しています。

  • 国民全体の医療費は年40兆円を超え、対GDP比で5%程度だった医療費支出は**現在では約8%**となっています。

<出典>医療保険制度をめぐる状況 令和元年9月27日 第119回社会保障審議会医療保険部会 資料2

<ここまでの出典・参考文献>
Microsoft PowerPoint - ④【資料2-2】医療・介護資源等に関する地域差のデータ (mhlw.go.jp)
医療保険制度をめぐる状況 令和元年9月27日 第119回社会保障審議会医療保険部会 資料2 (mhlw.go.jp)
日本の医療課題・問題点を分かりやすく整理【一覧表付き】 | 大病院の事務業務を90%削減するアルテリア(特許取得) (workvision.net)


注目のスタートアップ企業特集 in 北信越

北信越地域には、革新的な医療サービスを提供するスタートアップ企業が数多く存在します。これらの取り組みは、地域医療の向上や医療のアクセス性の向上に寄与しており、地域社会に大きな貢献をしています。

1.LABTECHS株式会社(ラボテクス) (富山)

会社HP:LABTECHS株式会社
設立:2021年9月

なにをしている会社?
LABTECHSは、医療検査キットや医薬品、医薬部外品の製造販売などを行なっています。

<出典>無菌の証明を1日で ~医薬品の開発、製造時間の短縮~ – くすりのシリコンバレーTOYAMA創造コンソーシアム (kusuri-consortium.jp)

事業内容
体外診断薬および医薬品の製造・販売
医薬部外品の製造・販売
検査(臨床検査、医療に限定しない迅速無菌検査)の受託
検診事業(臨床検査)の実施
前各号に附帯又は関連する一切の事業

特筆コメント!

  • 創業の背景:富山大学発ベンチャー第1号として認定され、大学(医学部)での研究成果を基に新規性の高い製品を世に送り出しています。

  • 事業領域の多様性:体外診断薬および医薬品の製造・販売、医薬部外品の製造・販売、検査(臨床検査、医療に限定しない迅速無菌検査)の受託、検診事業(臨床検査)の実施など、幅広い事業を展開しています。

  • イノベーションへの取り組み:「イノベーションの担い手」として、新市場の創出を目指しています。

  • 無菌検査キットの製造販売:高感度かつ迅速な「無菌検査キット」の製造販売に取り組んでおり、医療分野でのニーズに応えています。

従来の無菌検査法では、無菌の証明に約14日かかりました。しかし、LABTECHSの技術を使用することで、6時間~1日まで時間を短縮できます。これにより、医薬品製造工程の効率化とリスク低減に貢献します。

富山県をはじめとして、大学発の研究開発型ベンチャーは複数登場してきています。大学内で蓄積されていた知見が、広く社会に還元されることが期待できます。このように大学発ベンチャーが多数進出することは、大学、学生の双方にとって良い機会を生むことが期待できます。大学は財政状況の改善、学生は就業時の選択肢を広げることができます。

<参考・関連文献>
無菌の証明を1日で ~医薬品の開発、製造時間の短縮~ – くすりのシリコンバレーTOYAMA創造コンソーシアム (kusuri-consortium.jp)
LABTECHS株式会社 – T-Startup
LABTECHS株式会社 | 富山市新産業支援センター (toyama-sinsangyo.jp)


2.イントロン・スペース株式会社 (石川)

会社HP:イントロン・スペース株式会社
設立:2019年10月

なにをしている会社?
イントロン・スペースは、石川発の排尿ケアサービスを提供。特に、革新的な拡張ボディ(外付け人工膀胱)を社会実装することを目指しています。

<出典>製品 ―Products― - イントロン・スペース株式会社 Intron Space Inc.

事業内容
超軟性・超高伸張性素材を用いたパーソナルケア/ヘルスケア製品の研究開発、企画・設計、販売および関連するサービスを提供

特筆コメント!

  • 排尿ケアの革新: イントロン・スペースは、石川発の排尿ケアサービスを提供しています。特に、拡張ボディ(外付け人工膀胱)の開発と社会実装に注力しています。この製品は、違和感なく身に着けられ、普通のトイレで普通の姿勢で尿を捨てることができる革新的なアイテムです。

  • 製品提案と展望: イントロン・スペースは、まずは男性用の排尿についての「拡張ボディ」商品を世の中に提案したいと考えています。高齢者やトラック運転手、高所作業者などの事業者、レジャー活動を楽しむ人々に健康と安全を守りながら仕事に集中し、余暇の質を高めることを目指しています。また、前立腺がん患者などの尿もれで悩む方々にも利用されています。

  • スタートアップコンテストで最優秀起業家賞: 「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ」の2023年度において最優秀起業家賞を獲得しています。
    受賞結果 | スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ (isico.or.jp)

病気や健康上の問題によって、普段できていたことができなくなることは生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。特に排尿に問題を抱える人々は、日常生活においてさまざまな制約を受けることがあります。イントロン・スペースは、この革新的なアイテムを社会に実装し、排尿に問題を抱える人々の生活をサポートしています。

病気や年齢により、それまでできていた活動が制限されることがありますが、「拡張ボディでいつものように活動できる」ということを実装しようとしています。


3.株式会社コルシー(群馬・新潟)

会社HP:COMPANY | CORSHY
設立:2018年1月

なにをしている会社?
コルシーは、心電図遠隔判読サービスを提供しています。

<出典>圧倒的成長!医療スタートアップで事業拡大を担う営業WANTED! - 株式会社コルシーの事業開発の採用 - Wantedly

事業内容
心電図遠隔判読サービス「CORSHY」

  • 健診・診療を問わず、心電図のデータを送るだけで、専門医が判読を行い、結果・所見をデータ入力

  • 病院側の指定期日までに結果を返却!最短1日で結果をお戻し・心電図は1枚〜数千枚/月の対応も可能。

  • IT × 心電図判読で医療機関の業務を効率化するサービス

特筆コメント!
心電図の情報から、以下のことがわかります。

  • 心臓のリズムと異常検出: 心臓のリズムが乱れている場合、脳梗塞や心臓発作などのリスクが高まります。心電図はこれらのリスクを評価するための重要なツールです。

  • 心臓の冠動脈の状態: 冠動脈の問題は心臓病の主な原因であり、早期発見と適切な管理が重要です。

  • 筋梗塞のリスク評価: 心筋梗塞は心臓の一部が酸素不足で壊死する状態です。心電図は心筋梗塞のリスクを評価し、予防措置を講じるのに役立ちます。

心臓や脳の異常は、命への影響が極めて高いです。医療業界はデジタル化が昔より進んでいるとはいえ、心電図の判読はまだまだ紙が主流です。その結果、判別結果がわかるまで1週間以上の時間がかかる状態でした。

この状況を変えるのが、心電図遠隔判読サービス「CORSHY」です。紙のデータを電子化し、電子データでのやり取りを促進する同社の事業によって、より迅速な診断医療の地方格差を是正することに繋がり、データの保存・分析・検索がより簡単になります。
同社の事業によって、まだまだ紙が主流な医療業界に新しい風がもたらされることが期待できます。

<参考文献>
家庭での心電図記録を新しい文化に 予防医療で健康寿命を延ばそう | 日本経済新聞 電子版特集 (nikkei.com)

おわりに

北信越地域で活躍する医療系スタートアップ企業各社の取り組みは、地域医療の発展に寄与しています。これらの企業の取り組みが地域の医療サービスの向上や革新に貢献し、地域住民の健康と福祉の向上にさらに寄与していくことを期待しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?