知られざる #短歌条例
最近はベランダに出て過ごしてることが多くて、なんだか変だ。そういうの変だと思うこともなく、本当はただ陽を浴びている。
眩しさに、まさに日光と思ったら、修学旅行が思い起こされ、でも私、日光なんて行ってないし、三猿も教科書で見ただけ。
見ざる言わざる聞かざるの三猿が思い浮かんで、素足の甲が、サンダルになんか擦れてむず痒く、鼻息が荒くなってしまう。
インドアの趣味の貯蓄も尽きてきて、ぼーっとするのも違う気がして、目を閉じる。見ざる、でも聞こえてしまう。風の音とか、鳥の声とか。
日光に照らされているマンションの、金属製のベランダの柵が温まり、パチンパチンと膨張し、軋みはじけるあかるい音とか。
ふと急に、もしも四猿目がいたら、とか考えて、雲を眺める。
……知られ猿。そう、知られ猿ならいいな。未来を見てるような横顔。