すでに解散したバンドのファンになった話
先週、たまたま Youtube のオススメとして紹介されていた一本のビデオを観て、妙に感動してしまいました。ブルーハーツの「青空」です。
音楽に限った話ではないですが、芸術に関して、くどくどと感動した理由などを説明するのは好きではありません。芸術においては、「その人の心に響くかどうか」だけが重要で、理屈は必要ないと思うのです。興味がある人は、下のリンクをクリックしてビデオを観ていただくのが良いと思います。
ブルーハーツに関しては「リンダリンダ」だけは聞いたことがありましたが、あまり印象には残っておらず、バンド名すら知らないという状況でした(ちなみに、「リンダリンダ」と「青空」が発表されたのは、それぞれ87年、89年で、私が米国に来たのが89年です)。
「青空」だけでも何十回も聴きましたが、ブルーハーツの他の曲や、インタビュー番組などを Youtube から見つけだして片っ端から観て楽しみ、すっかりファンになってしまいました。
残念なことに、ブルーハーツは1995年に解散しています。つまり、2018年にシアトルに住む私が、Youtube のおかげで時空を乗り越えて、すでに解散してしまったブルーハーツというバンドのファンになるという面白い現象が起こったのです。
2014年にアップロードされたこのビデオのコメント欄を見ると、私と同じく、このビデオでブルーハーツのこと知ってファンになった人がけっこういます。その中には、「僕が生まれる前の曲だけど感動した」という19才の人もいれば、「もっと若い時に出会っていたらどう感じていたのだろう」と書いている61才の人もいます。
「Youtube のおかげで、すでに解散してしまったバンドや、死んでしまったミュージシャンのファンになる」という現象は、ごく普通に起こっている現象なのです。
そう考えてみれば、原発事故の後に、しばらく Youtube でタイマーズの曲を聞きまくっていたことを思い出しました。「Love me tender」とか「Summer Time Blues」です(どちらも Youtube で、音が出るので注意)。
タイマーズは、忌野清志郎がRCサクセションとして原発を批判する曲を含むレコードを発売することを東芝から拒否されたために作った「覆面バンド」です。
忌野清志郎は、福島での原発事故が起こるよりもずっと前に、原発政策の不合理性に気がつき、それを強烈に批判するメッセージを、音楽で発信していたのです。
私は、原発事故が起こるまでは政府や電力会社のやっていることは合理的に違いないと決めつけ、原発反対派の人たちの声に耳を傾けていなかったため、この不合理性にまったく気付いていませんでした。
その反省もあり、事故後には猛烈に勉強をし、その結果として、ようやくタイマーズのメッセージがストレートに受け止められるようになり、大ファンになったのです。
このケースでも、原発事故の2年前に忌野清志郎は他界しており、ブルーハーツと同じく、時空を乗り越えて、私はタイマーズの大ファンになったのです。
ちなみに、ボーカルの甲本ヒロトとギターの真島昌利は、ブルーハーツ解散後も一緒にバンドを作って活動していますが、彼らの生き様が私はとても好きです。
特に、甲本ヒロトのセリフには、ものすごく共感を覚えました。
バンドのゴールなんてないよ。ゴールはバンドを組んだときにもう達成してるんだ。中学生が音楽がやりたくて教室のすみっこでホウキをギターにして弾くでしょ あれがロックの全部なんだよね もうあそこで完成してんだよ。
もうこうなってくると、趣味だけやってる隠居なんだよな。... それがもう30代ぐらいから、我々はリタイア組なんだよ。もう、引退はないんですよ。死ぬまでやるしかない。
私も、高校生の時にプログラミングを覚えましたが、プログラムを書くことによって何かを成し遂げようなんていうものはまったくなくて、純粋にプログラムを書くことそのものが楽しくて、一生懸命に勉強して、プログラミングしていただけです。
Microsoft を辞めたのも、会社が大きくなりすぎて、「ここじゃあプログラムを書かせてもらえない」と思ったからだし、その後、いくつも会社を立ち上げたり、オープンソースのプロジェクトを立ち上げているのも、結局はプログラムを書くのが楽しいし、プログラムを書いている自分が好きだからなのだと思います。
「そうか、俺の人生はロックだったのか」と思いながら、ブルーハーツの曲を聞くとまた格別なのです。
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