琉球の天の川はずっと高いところで笑ってる（前編）
いつの間にか眠りに落ちていた。
飛行機が高度を下げはじめ、気流の悪いところを通過したせいでガタンと大きな音を立て揺れた。びっくりして目を開けると、既に今日の目的地である石垣島が眼下に迫っている。
分厚い雲を抜け時折差し込む日差しは、さすが南の島だけこのとはある。この時期の本州の陽光とは明らかに違って鋭い。もう常夏ではないかとさえ思えてしまうほどだ。
しかし、そんな気分にさせて頂いたのはほんの一瞬。
すぐさま窓には大粒の水滴が流れはじめている。雨だ。雨かよ。何でだよ。
今回の主目的は星景写真を撮影すること。三脚に愛用のカメラをセットし、シャッター時間を長くとり露出を目一杯全開にして狙う天の川。延期に延期を重ね漸く辿り着いたオッサンのひとり漫喫旅行のはずであった。
雨かよ。
毎年4月3週目の週末は、同僚に仕事を押し付けてひとり旅行と洒落込んでいる。昨年は対馬、その前はコロナで中止、そのまた前は台湾だったかな。兎に角、毎年この時期に強引に実行しているのです。
空港に到着すると携帯電話にショートメールが届いていた。
駐車場④の列にご所望のお車を設置してあります。
ダッシュボードにリモートキーを入れておきますのでお楽しみください。
尚、返却時はガソリンを満タンにしてお返しください。
最近のレンタカーは余分な手続きがいらないから便利。
勝手に空港に配車して頂き、使い終わったら予め指定しておいた場所に乗り捨てることができる。車を受け取ると鍵はかかっておらず、まるで田舎のおばあちゃん家みたいなサービスだなぁと毎回感心してしまいます。
車を走らせ街の中心部に到着する頃はかなり本格的に降り出していた。
このままホテルにチェックインをするのも何となく癪なので、軽く昼食を取った後はそのまま川平湾へと車を進めることにしました。
遠くには微かにエメラルドグリーンの海は確認できるものの、灰色で分厚くなった憎たらしい雲のせいで、どんよりした灰青色の海が広がっていた。「それでも大阪湾で眺める海と比べたらよっぽど良い」と無理やり前向きになっている自分にほとほとがっかりする。
雨を交わしながらパシャリ。
青々と繁った葉っぱの間を潜るときだけは、あぁ南国にいるんだと実感します。
一通り風景撮影を終え、ホテルへ戻る前にバンナ公園へ立ち寄ってみることにしました。バンナ公園は海の見える山の公園で、夜になると星空がとっても綺麗。天体観測にはもってこいの場所なのです。もしかすると雨が上がるのではと一縷の望みをかけました。
そんな細やかなオッサンお願いも届かず、公園の駐車場に着く頃は雨はさらに酷くなり、結局車から一歩も出ることなくホテルに向かうことになりました。僕は何してるのだろう。わざわざ灰色の海を撮影するために石垣島までやってきたのか。仕事を同僚たちに丸揚げして、待っていたのは雨に打たれているレンタカーだけ。星の写真なんてとんでもなさそうだな、こりゃ。
天の川？
側溝には溢れるほどの雨水が流れて僕を嘲笑っている。なんと風流な雨の川なのか。
予定より3時間も早くホテルに到着。荷物をベッドに放り投げてそそくさと居酒屋へ駆け込むことにしました。2年ぶりにきた石垣島。前回来た時になんとなく気になっていたライブ居酒屋に自然と足が向かっている。独特な琉球楽曲を三線の音色とともに60度の泡盛で酔いしれたい。今日はそんな気分でした。
気づけば今日の目的は変わっていました。
奇遇にも若者の間で超有名なYouTuber（レイクレさん）が来店しており、YouTuber通しのよしみでライブに参加させてもらうことになりました。彼らは既にチャンネル登録者数が120万人を超える超有名人、貧弱な僕とは比べ物にならないくらいの格の違いってやつを見せつけられてしまった。
本当に凄かった！！
レイクレさんと琉球音楽の奏でる渦に飲み込まれ、居酒屋に居合わせたお客のほぼ全員が三線の音色に合わせて踊り出す。老若男女入り乱れてのメチャクチャな踊り。
「それ阿波踊りやろ」なんて笑い声まで飛び出したところで、見兼ねた地元のスタッフが即興で踊り方を指導しはじめる始末。
沖縄の基本的な踊り「カチャーシー」これは幸せをかき混ぜると言う意味。
星景写真は撮れませんでしたが、カシャーシーの実践講座を強い泡盛と共にご機嫌なYouTuberさんらと受講できました。
意識が遠のくまま、石垣の夜は更けて行きました。
さて、明日は与那国島へ飛びます。星景写真は明日以降にお預けです。
どうやら琉球の天の川は、まだまだ空の高い場所で笑っているようでした。
最後まで読み進めて頂きありがとうございました。🍀
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