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“3本線”には商標権がない。 それでも人は、3本線にadidasを想起する

ストライプ流行の時代に「3本ストライプ」で差別化

adidasを象徴する、3本線の「スリーストライプス」ロゴ。

誕生したのは1949年。創設者のアディ・ダスラーによって発案されました。

スポーツシューズの側面にストライプを施すことが主流だった時代に3本のストライプを引くことで、遠くからでも一目でadidasだとわかるようになり、ブランドの認知度は飛躍的に高まったとされています。


adidasロゴの変遷

初代ロゴは、3本のストライプを施したスパイクのイラストを、ふたつの「d」の縦棒で支えるデザインでした。

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1950年代には既に世界的なスポーツメーカーとなっていたadidas。彼らは一度ストライプから離れ、文字だけのシンプルなロゴを採用しています。

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1960年代にはコンパクトさが増し、「d」と「i」の縦棒の長さは統一。「a」と「d」は丸みを帯び、現在も使われている「adidas」の書体はこのとき完成したのです。

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1971年、同社はアパレル部門に進出していたことから新しいロゴが必要になりました。

そこで100以上のデザイン案の中から選ばれたのが、「トレフォイル(三つ葉模様)」のロゴです。

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ブランドロゴの原点であるスリーストライプスが復活し、三つ葉も「3」にちなんだもの。葉っぱが繋がったデザインは同社の多様性も表しています。

さらに、1972年のミュンヘンオリンピックからこのロゴを導入したことで、オリンピックの「スポーツを通じて文化や国境など様々な違いを乗り越えて世界平和の実現に貢献する」という精神にも重なり、新ロゴの認知は一気に世界に広まりました。


1990年、時代は高機能シューズブームの真っ最中。adidasは自社の高機能プロダクト向けに「スリーバー(3本の棒)」ロゴを考案します。

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右に向かって斜めに伸びる3本の棒は未来に向けてのチャレンジと目標達成を表し、山のように見えることもチャレンジ精神を見事に体現していました。このロゴはご存じのとおり、現在も様々な製品に使われています。


2002年、adidasはフランスのスポーツメーカーのサロモンを吸収合併し、世界ナンバー2のスポーツ用品メーカーへと成長を遂げます。

この際、部門がスポーツヘリテイジ、スポーツパフォーマンス、スポーツスタイルの3つに分かれ、スポーツヘリテイジにはトレフォイルのロゴを、スポーツパフォーマンスにはスリーバーのロゴが採用されました。

そして、スポーツスタイルには新たに地球をモチーフにしたロゴが与えられます。

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2005年、サロモンの事業部門を売却したことを機に、3部門の統一ロゴを新たに考案。adidas全体を包括するブランドロゴが誕生しました。

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以来、adidasはこのブランドロゴのほかに、スリーバーのロゴ、トレフォイルのロゴ、地球モチーフのロゴの4種類をプロダクトに応じて使い分けています。


スリーストライプスに商標権はない

このように、プロダクトのコンセプトや時代の潮流に合わせてバリエーションを増やしていったadidasのロゴ。

ロゴの種類が多いとブランド認知が散漫になる場合もありますが、adidasはその一つ一つがグローバル規模で消費者に浸透しています。

その根幹を支えているのが、創業者アディ・ダスラーが生み出したスリーストライプスであることは間違いないでしょう。


なお、この3本線はEUの知財産庁により「独自性がない」と判断され、実は2019年に行われた裁判でも商標権は認められませんでした。

しかし、たとえ商標権がなくても「3本線=adidas」という認識はもはや世界共通といっても過言ではないでしょう。

※ちなみに、adidasは靴やウェアの特定の場所につける3本線を図形商標登録しているため、スリーストライプス自体に商標権がないからといって、誰でも自由に3本線ロゴを使えるというわけではないようです。

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