見出し画像

ムサビ学生の真っ直ぐな目に、これからの働き方のヒントを見つけた気がした

働き方改革がやっと本格的にスタートした

ここ数ヶ月で、働き方がガラリと変わった人は少なくないと思う。

「働き方改革」という言葉は数年前からよく見聞きしていたが、ようやく、ついに、日本の働き方改革が本格的に始まった、という実感がある。

あれだけ導入が進まなかったテレワークや時差出勤が一気に当たり前の選択肢となり、オンラインで済ませられる業務はオンラインで済まそうという合理化がどんどん進んでいる。多くの企業がもはやデジタルを無視することはできなくなった、とも言える。

これまでは一つの場所にみんなが集まることで、そこにいるという存在自体がひとつの価値になっていたが、その前提が崩れたことで、これからはより純粋な成果に価値の比重が置かれるようになるかもしれない。

こうなると、従業員にお願いする仕事内容も「ついでにこれやっといて」「これ手伝ってくれない?」という曖昧なものではなく、欧米のジョブ・ディスクリプションのように役割分担・責任の範囲を明確にすることも必要になってくるだろう。

これからの働き方はどうなっていくのだろうか。どうあるべきだろうか。そんなことを考えていると、ふとある学生のことを思い出した。


ブランディング会社に美大生がやってきた

1年ちょっと前、「勉強を兼ねてアルバイトをしたい」とムサビで建築デザインを学ぶ学生がやってきた。六本木の小さな事務所に、だんだんと人が集まってきてくれるようになってきた頃のことだ。

僕が学生の時なんて、ブランディングのブの字も知らなかった。経済学部や商学部はつまらない学部の代名詞ぐらいに勘違いしていたし、とにかく興味のない勉強がしたくなくて、ただ映画とか自分がかっこいいと思うことをやりたかっただけだった。

僕がそんな経験しか持っていないものだから、彼と話すのもおぼつかない。

彼はブランディングをどういうものだと思っているのだろうか?

かっこいいクリエイティブをつくりたいなら、「利益の上がる戦略とクリエイティブ=ブランディングを提供する」なんて生々しい話をする会社じゃなくて、もっとクリエイティブを強く押し出している会社の方がいいんじゃないだろうか?

彼が学びたいことが僕の会社にあるのだろうか?

実際に彼と会うまでのあいだ、そんなことばかりを考えてしまった。


20代前半のビジョンとスタイルにワクワクした

彼は僕の想像を大きく上回り、ブランディングに対する僕の想いや考えを理解してくれているのかは定かではないけど、「サイトの内容に共感した」と言ってくれた。うちのWEBサイトを見て、「学びたいことのど真ん中」なんて言ってくれる。デザインで経営に貢献したいというようなことも言っていた。

事業がどうしたらもっと成長するのか、そこにこそ価値があると彼は言う。共感したポイントがそれだとするならば、20代前半にして目線が同じなことに率直に驚いてしまう。親は会社経営をしているという。きっと、それも影響しているのだろう。

彼は当時の僕が持っていなかったものを、もう一つ持っていた。それはビジョンとスタイルだった。

30歳の時の理想の年収と働き方のようなものが、今日僕に会うにあたってしたためてくれた手紙の中に書いてあった。僕はそれを見てうれしくなってしまった。

希望はとても高い年収(サラリーマンの平均年収の4倍近く)で、しかも限りなく労働時間の少ない働き方が書かれていたのだ

直感的にいいなぁと思った。

僕も年収を高めようとがむしゃらに頑張ってきたけど、とてもじゃないけど少ない時間で得たものではない。そのために多くの時間とお金を投資し、いろいろと犠牲にしてきたこともある。

ブランディングというものが、効率よく利益を上げるための方法だと言うのなら(言ってるのは僕なのだが)、彼のビジョンとスタイルは実現可能なんじゃないかと思ってしまったのだ。と同時に、なぜか未来を感じた。

聞けば、大病を患ったことが高い年収と少ない労働を求める思考に至った理由だった。病気になってみて、身体を酷使してまで働くことに価値を感じなかったのだろう。

彼はとても真面目で、まっすぐ目を見て話す姿や僕の言葉を聞こうとする態度がなんともキレイだった。


働き方を変えるのもブランディングだ

戦略とは弱者が勝つための方法だと、『戦略がすべて』(瀧本哲史著/新潮新書)には書かれていた。

もしそうだとするならば、素晴らしい戦略さえあれば、体が弱くたって、心が弱くたって、勝てるかもしれない。僕らの世代みたいにがむしゃらに働かなくたって、大金を稼ぐことができるかもしれないのだ。

ブランディングは、戦略とクリエイティブでできている。強者しか勝てないブランディングなんて、優れたものとは言えないだろう。弱者が勝ててこその戦略であり、ブランディングなのだ

新しい光が、若い彼の目の中にあるような気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?