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こころ浮き立つ魔法の言葉

 来月に第一子が産まれる予定です。いのちは奥さんのお腹の中にもうありますが、来月、我らと同じ次元に顕現する。
 名前はまだ決まっていない。
 職場の同僚や家族や友だちとか、子どもがいるいろんな人に、名付けについて話をきく。
 その中で「ウチの場合は、これは入れたいっていう漢字をあらかじめ決めてから考えたよ」という話をしてくれた人がいた。
 好きな漢字かあ。
「好きな漢字じゃなくっても、好きな言葉とか。とにかく、思い入れのある字を決めておくの」
 それから散歩してるときや本屋にいったとき、テレビみてるときとか、いつもより「思い入れのある言葉」「好きな漢字」って意識で文字を見るようになった。
 その文字をみたときの自分の心を見つめるんだ。そのときワクワクしたり、ときめいたり、思わず嬉しくなってしまったり、少しでもそういう感情になる文字を探そう。集めよう。

 炭火焼鳥。

 飲み屋街のほど近くに住んでいる。夫婦ともに呑むのが好きで、居酒屋が好き。夕方のオフィス街など飲み屋が多いエリアは散歩してるだけでも楽しいくらいだ。
 よく行く焼鳥屋があって、店主さんが注文を受けると、串打ちしてある鶏肉によどみない手さばきで塩をふり、小さな炭火の焼き台に乗せてじりじりと焼く。カウンターのみの狭い店内は煙ですこし曇っていて、鶏の脂の匂いが立ちこめている。煙につつまれたお客さんの顔は皆一様にえびす顔。ビールとキャベツで準備万端。そこに焼き上がったささみ串の、まずは親指の先ほどの肉をひと囓りすると、イメージを覆すジューシィさで、店主の焼きの妙味に惚れ直す。

「炭火焼鳥って良い言葉やな」
 と、ぼくが言うと、
「ほんまに」
 と奥さんが返す。

 名前はまだ決まっていない。

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