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封印されし「そのキャップめっちゃオシャレっすね」

 あの、こないだ散髪に行きました。

 なじみの美容室があります。なじみってか、まあ、近所で安くて、良い感じに仕上げてくれるので、良く行くだけですが。

 なので、なじみのとか言いつつ、指名とかはしない。指名料がかかるからだ。あと、まあ、皆さん良い感じに切ってくださりますし。

 こないだはネコみたいな女性の美容師さんだった。ゆったり目のパープルのブルゾン、ネコ顔が映えるショートヘアにキリッとした吊り目メイク。わりと明るい装いなのだけど、キャップはシックな黒だった。

 なんか、すげーオシャレだなーと思った。美容師さん皆さんオシャレだけど、決断的センスある黒キャップが決定的にオシャレだなと思った。しかもキャップのデザインが〈にゃー〉だった。たぶん〈にゃー〉というブランドのマークだと思うのですけど、ネコの顔のイラストがついてるの。

 まあそれで、あの、ぼくは髪きってもらってるときは喋らないタイプである。あの、喋りたくないとかじゃなく、人見知りなので。クラス【人見知り】のディフォルトステータス【自分から喋らない】が常時発動してるだけなので。

 なのでまあ、オシャレだなーとか、いろいろ思ったけど、とくに会話はないのである。「関西Walker」に釘付けなんである。話題のラーメン屋情報は実はあんまり興味はないが、【自分から喋らない】により他にやることがないんである。美容師さん手際めっちゃ良い。アシストするスタッフさんとの話方から、ベテランなんだろうなということが察せられる。ベテランなんだろうなといいうことが察せられることによって察せられるのは、おそらくネコみたいな美容師さんはベテランの察し力により「この人はきっと髪きられてる間は話しかけられたくないタイプの人だ」と察したんではないかということだ。なので、どちらからも会話の戦端は切って落とされない。

ぼくはひとを褒めたい

 あの、「いいな」と思ったことを【人見知り】とかなんとかいう胡乱な理由で、相手に伝えないということが、すこしだけさびしいなと思う。

 あの、まあ、要は、「キャップめっちゃオシャレっすね」って思ったけど言わなくてなんかもどかしいって話ですが。

 いや別に、まあその人は、こう、出勤したときとかに同僚に「あっ、めっちゃキャップかわいいじゃないっすかー」とか言われたりしてるに違いない。他のお客さんに「おっ、今日のいでたちクールですね」とか言われて会話に花を咲かせたりしてるに違いないのだが、そういうことではない。

 世の中の話だ。世の中の嬉しい出来事や気持ちのバランスの話をしている。

 あの、自分が「いいな」と思ったものを「まあぼくが言わなくても誰かが言うだろう」と思って言わないということを、皆がおこなったとしたらどうだ。
 その「いいな」と思えるものを、結果、誰も褒めない。
 「いいな」を伝えることで生まれるはずだった「え、そうっすか? えへへ」は、この世に生まれることなく、しぬ。

 はにかんだ笑顔と、花が咲いたようなアトモスフィアがその空間に満たされる世界か――

 それとも、

 ハイライトの無いしんだ目の人と、その足元で大量の瀕死の魚が断続的に、ぴち……ぴち……と尾びれを動かすだけの世界か――

 どちらが良い?

 そんな、まあ、「0」か「1」かじゃないとしても、「いいな」と思ったら、伝えたほうが、世の中に嬉しい気持ちが増える。というか、その場に、相手の中に嬉しい気持ちが生まれる。そしたら、ぼくも嬉しい。ハートがHugっとキャッチされハピネスはチャージされる。

 とても簡単だ。本当は。
 とても簡単に、人は誰しも肉弾魔法少女になれる。
 あんまり話したことの無い人とでも、とても簡単に嬉しい気持ちを共有できる。きっと褒められて嬉しく無い人はあんましいないし。
 そういうの言ってゆきたいなー。

 いや、だから、「キャップめっちゃオシャレっすね」って思ったけど言わなくてもどかしかったってだけの話ですが。

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