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『星の王子さま』~大人のための人形劇~


演劇の感想です。

2013年公演(日本)
脚本・演出・美術・人形操演、平常(たいら じょう) 原作、サン= テグジュペリ
星の王子さま 人形

 沙漠に不時着した主人公は、不思議な少年と出会う。「王子さま(少年)」は、小さな星で一輪の花と暮らしていたが、いざこざがあって星を離れたのだった。王子さまと主人公は話をするうちに絆を結んでいく……。

※ネタバレあり

 サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』の人形劇。平常さんが一人ですべての役を演じます。
 まず驚いたのは演じ分けがとてもうまいこと。 平常さんは男性なのですが、「バラ」の声なんて完璧に女性でした。
 星の王子さまの子どもらしい演技もよかったです。
 星の王子さまの 人形は思ったよりも大きくてとても美しかったです。
 それから、地球に来るまでに訪れた星の住人。これは棒の先に頭だけついていて、それを演者さんが動かしているんですが、グッドアイデアだと思いました。
 一人ですべての役を演じ、二時間の舞台をやりきるというのはそれだけですごいことだと思います。
 私が『星の王子さま』の原作を読んだのは小学校のころなので、ほとんど内容も忘れてしまっていました(というより、よくわからなかった)。でも劇を見て、 また原作を読み返したいと思いました 。
 舞台で演じて見せられると、本で読んだときよりいっそう感情移入ができた気がします。

 花とうまくいかなくなって家出した王子さま。
「懐く=絆を結ぶ」「一度懐かせるとは、永久に責任を持つということ」
 胸に突き刺さる言葉です。
 大人になるとうまくいかなくなることはたくさんあります。
 花と王子さまの関係は、童話のようで、実際の人間関係でも簡単に置き換えられて、なんだか切なくなります。
 最後には星に戻った(と主人公は思っている)。
 うまくいかなくなっても時間をおき、また自分が変わることでうまくいくかもしれないという希望的な観測。でも。
 戻れないことが、大人には分かっている。
 だから、大人にとっては現実に直面させられる、残酷な話。
 
 この舞台はR-15指定です。
「大人」になってしまった人にこそ、星の王子さまは必要なのかもしれません。

 これから原作を読み返したいと思います。

(2013年当時に書かれた感想です)

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