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猫短歌:予感

あの晩はいっぱい撫でさせてくれたよねきみは知ってた最期の夜と/銀猫
あのばんはいっぱいなでさせてくれたよねきみはしってたさいごのよると

 次男猫は大腸腺癌の末期でした。末期ではありましたが、日に日に衰弱していくという状態ではなく、亡くなった前日も、いつもと何ら変わりのない一日でした。人間は、パートナーとわたしはそう思っていました。

 いつもと何ら変わりない、とは言いつつも、一月に「余命二ヵ月」と診断されており、その診断日から二ヵ月と数日が経っていました。だから、アタマでは「いつのその日が来ても不思議ではない」と理解しつつも、失礼にも「あの大学病院の獣医さん、脅かすんだから、もう!」とも思っていました。確かに病猫でしたが、いますぐ逝ってしまう、という状況とも思えなかったのです。

 彼が末期癌を宣告されてから、わたしは犬猫の東洋医学の本で学びながら、次男猫にツボ押しや温灸をしていましたが、彼は、特に温灸があまり好きではありませんでした。

 それなのにこの日、次男猫はずいぶんと長い時間、わたしに温灸されながら、カラダを撫でさせてくれたのです。
 夕食もしっかり食べました。
 そしてその後、入浴していたパートナーを、バスルームの扉の前で出待ちしました。そんなこと、我が家に来てから一度もしたことなかったのに。

 いくらいつも通りに見えていても、彼は別れが迫っていることをわかっていたのだと思います。それに気付いていないわたしたちに、ちゃんとお別れする時間をくれたのかと思うと、健気さと賢さが愛おしくてたまらなくなります。

 ヘッダー画像は、昨日の記事と同じ撮影者様のものです。黄色が似合う次男猫のため、「お祝いの花束」というタグにかかわらず、この記事でも使わせて戴きました。
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