本日は、お日柄もよく 読了

原田マハ 著
『本日は、お日柄もよく』を読み終えた。

スピーチライターという職業と出会った
主人公の成長物語である。

序盤は結婚式のスピーチシーンや平凡な
OLの日常にフォーカスされており
想像や共感しやすい内容が続いた。

ところが中盤以降、選挙運動に活動場所が
うつるため、政治関連の話が容量を占めてくる。
私は、全く政治に興味が無く、もしかしたら
フェードアウトしてしまうかもしれない。
一抹の不安を覚えながらもページをめくる手は
止まらなかった。
止まるどころか、スピードを増していった。

「言葉の力」
本書のキーワードであり、伝えたいことだろう。

私自身、「ことば」をテーマに生きている節がある。
私が読書をする目的は、新たな「ことば」に出会うためだ。
私は、自分の気持ちや考えを表す最もふさわしい言葉を
いつも探している。
なるべく簡潔に、しかし的確に表現したいという欲求が
常にある。
それゆえ言葉足らずになることもしばしばなのだが。

そのためには語彙を増やす必要がある。
小説には無数の言葉がちりばめられていて
自分が気に入った言葉や表現を見つけたら
すぐに日常に卸していく。
知らない言葉や読めない漢字があったら
すぐに調べる。
これは、小説の内容を理解するためにも
必要不可欠である。

読み終えてみて、
政治がこれほど「言葉の力」で動くもの
また構成されているものなのかを
知れたことは私にとって大きな財産になった。
「ことば」が好きな私にとって、敬遠していた
政治が急に身近に感じた。

街中で通り過ぎていた
のっぺらぼうと大差なっかった
選挙ポスターの人たちの輪郭が、目の力強さが
急にくっきりと見えるようになった。

この人たちにも家族や応援してくれる人がいて
守りたい人がいて、日本をいい方へ変えようと奮起しているのだろうか。
マニフェストをのぞいてみようか。
それで、応援したくなったら投票すればいい。
そんな気持ちになって駅前を歩いたのは
この本に出会ったから。

若者の政治に対する無関心が叫ばれつづけて
何年たっただろうか。
「選挙に行こう」
と画面を通してせっつかれる。
インフルエンサーや女優の
「選挙に行きました」という報告。

でも各党のマニフェストも知らずに
投票場に行って、なんとなーく
あ、名前知ってる。
駅前で見かけた。
そんな理由で投票している人が多いのではないだろうか。
私もその一人だ。
もちろん候補者の狙い通りの効果でもあるのだろうが、
投票する側の人間としては
もっと投票に意味を持たせたい、と私は思う。

「選挙に行こう」という呼びかけでは
投票場に行って投票箱に紙を入れる
それでミッションクリアと勘違いしてしまう。
”選挙に行く”その行動の背景に
自分が理想とする国を描いて、それに近い
マニフェストを掲げる党に投票する
という意識をひもづけるPRが必要なのではないか
私はそう思う。


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