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音楽理論とは

§1. この文章とは

 この文章を書くにあたって、とりたてて音楽理論に興味のない人でも「へぇ、そんなものもあるんだなぁ」と思ってもらえるよう、また入門者や初学者であれば「ほぇー」くらいの感想は出るよう努めました。
 音楽理論について半ば勢いだけで書いていこうと思います。

§2. 音楽理論とは

 音楽理論の「理論」とは「あるバラバラの事柄を体系的に説明するために組み立てられたもの」といった意味合いです。

 よく誤解されることとして、物理法則のように確固とした不動の法則性だと思われがちなことです。音楽理論は基本的に音楽の法則性をまとめただけのものにすぎませんから、「音楽文法」とでも言った方が正確です。音楽と言語はよく似ていて、時代・地域ごとに全く違った方法で成り立つ音楽が多数存在します。
 音楽における外国語や方言のようなものだと思うと理解しやすいです。

 例えば(日本の)ポップスとインドネシアの民族音楽であるガムランの関係は、ちょうど母国語と外国語のような関係にあります。
 ガムランにはポップスでよく聞くサビの概念どころか、ポップス、クラシック、更にジャズにも共通の和音といった概念もありません。

 ポップスは何気なく聴いて誰でも理解できるように思われがちですが、サビが必ずあったり、そうでなくてもお決まりの展開といったものは皆さんも感じたりするのではないでしょうか? 実はそういうものは「普遍的」なものではなく、単に知らないうちに学習され、広く共有されたある種の知識としてみなさんの中で「音楽ってこういうものだよね」といった暗黙の了解を作っているのです。
 洋楽にもサビという概念はありません。似たような概念にドロップやコーラスといった用語がありますが、ドロップはそもそも歌が入っていませんし、コーラスもサビとほぼ同義ですが、若干のニュアンスの違いがあります。よく「海外進出が難しい」と言われるのは、実はこれが関係しています。例えば最初にサビを持ってくる手法が小室哲哉さん以降日本では主流ですが、海外には普及していないので、やったとしてもウケが悪かったりします。

 このように、音楽にはそれぞれ特徴があり、それを体系的にまとめたものが音楽理論だと言えます。
 また、音楽理論を音楽文法と表現しましたが、文章と同様に文法的におかしくても成り立つ≈伝わる文章もあれば、文法的に正しくても成り立たない≈伝わらない文章があります。
 したがって、もし音楽理論から音楽を作るのであれば、音楽理論が作り出したりはじきだしたものがどういう音なのか理解し、把握し、それが音楽的に成り立っているのか(それは言葉が成り立っているのか確認する作業ととても感覚的に似ています)を感覚を研ぎ澄まして常に確認していかなければなりません。
 確認作業については、私たちの大半がちょうど音痴な歌を聴き分けられるのと同じくらい明らかなことです。

 ところで、音楽理論を「物理法則のように確固とした不動の法則性だと思われがち」と言いましたが、実のところ物理法則ですら現実に対する一つの解釈・説明、いわゆる仮説でしかないのです。
 例えば同じ運動についてある方程式で表現するにしても、ニュートンの方程式で表現したり、アインシュタインの方程式で表現したり、つまり全く違った方法で表現することが可能です。科学とは現実に対する暫定的な仮説です。
 同様に、音楽理論もまた音楽に対する暫定的な仮説であり、それは無数にあると思って良いでしょう。

§3. コード理論とは

 「ギターのコード」なんて言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。コードとは和音のことですから、コード理論とは和音≈コードの理論のことで、コードをどうやって接続すれば伝わりやすい音楽が書けるかといった内容が、つまりコードに関する文法が書かれた理論です。

 その起源を辿ると案外古く、クラシックの作曲家・音楽理論家;ラモーの「和声論(1722)」にまで遡ることができます(それ以前は全く違った体系で作られていました)。

 音楽をかじった人なら聞いたことのある、「ルート(≈根音)」「転回形」などと呼ばれる和音の状態や部分の概念を最初に導入した人がラモーです。数百年を隔てた現代人にまで影響を与えていてすごいですね。

 ところで、サピア=ウォーフ仮説というものをご存知でしょうか? これは認知心理学の仮説で、広い意味での言語が認知のカテゴリー化を促す、という仮説です。
 例えばコード表記も音楽の言語的な表記だと言えますから、コード理論を学ぶこと、もっと言うとコード表記を学ぶだけでもコードに関する認知のカテゴリー化が促される、言い換えるとより細かくコードについて認識することが可能になる、ということです。
 私たちがコード理論を学習する意義はここにあると思います。より細かく音の移り変わりを認識することは、もちろん間接的に作曲にも役立ちますし、演奏などにも役立ちます。

§4. 最後に;コード理論は作曲に必須か?

 これは実は一概にそうだともそうでもないとも言えない問題なのです。ある人にとって(例えば私のような人にとって)は必須ですし、ある人にとっては全く必要なく、フィーリングだけで何億人の人に好かれる音楽を書く人もいます。こればっかりは一度足を突っ込んでみて、どっちが良いか・早いかを自分の目で見極めるしかありません。 ですが、一つ言えることは、一度学んでみる価値はあるということ、そしてそのとき忘れてはいけないことがふたつ。
どのように作ろうとそれが自分にとって音楽的か自分の耳で確かめること
音楽理論はひとつの仮説であり、絶対的な法則でないこと
 です。

 最後に私が学習してきた中でオススメの楽典や理論書を貼っておきます。

①楽典

②理論書

 ありがとうございました!

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