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蒸留家エフゲニーマエダ氏、導入したラバンジン・スーパーが違う品種である可能性に気づき、調査を開始。

蒸留収穫の時期が迫り、ラベンダー花壇を草抜き&視察していた時のお話。。。

日本各地ではラバンジン・グロッソ(L. x intermedia 'Grosso')を蒸留用に栽培しているラベンダー園はたくさんある(ファーム富田、多可町ラベンダー園etc)のですが、グロッソ以外の品種を採油用として扱っているところは日清製油のセビリアンブルー畑以外で確認できていません。

それぐらい日本のラベンダー/ラバンジン精油生産市場では品種「グロッソ」がシェアを牛耳っているんですね。

採油用に決定してから集中栽培が始まったLavandin 'Super'花壇

しかし日本国内の園芸市場で入手できるラバンジン品種はグロッソ以外にも20数種あり、とりわけウチではもう一つのフランス産Low Camphor variety(低樟脳品種)であるラバンジン・スーパー/Lavandin 'Super'を採油用品種として採用し栽培しているのですが、、、
花が成熟してきた昨今、それぞれ異なる購入先のハーブ苗屋さんから寄せたスーパー苗がどう見ても明らか品種が異なっていることに気づいたんですよ。

どうも花穂形状が違うことを見抜いたエフゲニーマエダ
こうにゅうしょう購入商品はどちらも同じ「ラバンジン スーパー苗」

購入元は年次により違えど、「ラバンジン・スーパー苗」がそれぞれ違う品種として届いてしまった事態が判明したのです。


・・・まぁ大掛かりに「調査!」とは言っても、香りを嗅ぎ比べて確かめてしまえば白か黒かはハッキリするんですけどね。。。
問題なのはその後で、日本国内ではラバンジン・スーパー苗を入手することの難度がどれぐらい上がるか?といった問題に帰結するワケだったりします。
どちらともスーパーっぽくないねとなった場合が大問題で…

調査①花の見た目

今年咲いて確かめられたもう一方のLavandin 'Super'

23年株が花をつけるまで、旧来21年株の花が正しい品種'Super'だと信じ込んでいました。

が、思い返すとほんの疑問が湧いたのに思い当たる節もあり…
花の蕾がやけにコロコロしていたり色が濃いめだったりと、21年並行して購入・栽培していた品種グロッソにやけに似ているんですよ。

昨年の蒸留記事では、花色こそグロッソ株と比べて薄色なんですが、花付きが悪かったので栄養状態が悪かった説も浮かんでおり、、、
花穂形状はなんともグロッソと大差ないので、昨年度の花色だけを見た比較は信憑性が低いな〜と判断しました。

本当のLavandin 'Super'花穂を確かめるべく、ググってみるが…

結果的に、ラバンジン・スーパーに関する画像ってあんまり出てこないのです。
というのも園芸品種よりかとりわけ採油用品種として扱われているので外国ではそもそもの販売が少ない品種だったりするのです。ゼロってワケではないんですが。

南仏ベルエール蒸留所のサイトより引用1
南仏ベルエール蒸留所のサイトより引用2

頑張ってどうにかラベンダー原産地南仏の蒸留所でグロッソとスーパーを分けて紹介しているありがたいページを発見!しかし植物形態学的な間近で花穂を写した画像はありませんでした。
遠巻きで見るとやはり品種'スーパー'の花色は薄色なようで花色に品種グロッソと明確な違いがあるようです。

ウチの’Super'被疑品種を詳細に観察してみる。

前からいる品種。今年はやけに花色濃い目…?

まずこちらが21年に導入したスーパーとされる品種①。
健康状態がよろしくない(昨年8,9月の高温多湿にやられた)ようで、昨年シーズンより花茎を立ち上げている数が少ないです。

経験的に、やけにグロッソに似ている気がするのがこの子。

「品種スーパー」として届いた新しい顔ぶれの子
別ショップのスーパー苗と別品種であることが明らかとなった

続いて23年に不足分を追加で購入(別のハーブショップ)し、今年展開した花。陽が当たっているけれど疑惑品種①よりは全体的な花色が薄いように感じられる。何より花穂形状が疑惑品種①より尖っていてかなり違う。

経験的には、といっても本当に品種スーパーをみたことないのかもしれませんが、英国の園芸品種グループにも似ているような気がするのです。わずかながらに…まぁ早いこと香りを確かめてしまえばわかるんですけど!

調査②精油の香り

見た目に頼らない、次なる確実な品種'Super'の判別方法として、精油の香りを確かめるがあります。

スーパーは'グロッソ'や'アブリアル'などと比べ、明らかな低樟脳アロマが特徴となっているラバンジン品種で、それゆえに枯れ病の耐病性が低いながらも栽培が根強く続けられている理由でもあります。
樟脳臭が強い▶︎’Super'以外のラバンジン品種
コモンに近いマイルドな香り▶︎品種'Super'として確定

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pbi.14115

L. x intermedia 'Super'遺伝子はコモンラベンダー寄りの性質が強いことを示した中国の論文(2023)

しかしこの方法だと蒸留器を持っている人間花が咲くまでと時間のかかる技術的な方法なんですよね。。。

市販精油2種と昨年蒸留で得たスーパー?精油

まず明確なスーパー/シュペールの香りを把握するために手元に市販精油のスーパー精油とグロッソ精油を用意しています。
この2種により樟脳臭の強さによる嗅ぎ分けが可能となっています。
市販グロッソ精油は眼が覚めるような龍角散飴のような香り(Grosso scent)がしますが、市販スーパー精油はフルーツのようなもったりとした甘い香り(Super scent)がします。

で、前年我が花壇のスーパー/シュペール?とされる株から蒸留抽出した精油の香りを官能します。

〜前年抽出した精油を官能中・・・〜

うん、明らかに樟脳臭がキリッと際立ってるんですよね。
こりゃ市販のグロッソに近いアロマを持ってます。

少なくとも市販スーパー精油と比べて、ウチに前々からいたスーパーとされる品種は、スーパーである可能性がだいぶ低くなりました。
というかこの香りでスーパーとしては栽培する気になれないな。。。


続けて疑惑の品種を蒸留し、そちらも官能してみます。
(7/24-25頃蒸留予定)

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。