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サインコサインのCCC vol.1|LION Scope 共創の裏側 【#イベントレポート】

こんにちは。株式会社サインコサイン ディレクターの九冨(くとみ)です。

株式会社サインコサインは「自分の言葉で語るとき、人はいい声で話す。」という理念のもとで、当事者主導のブランディング活動に貢献するべくブランドアイデンティティの共創やインナーブランディングを支援しています。

2023年11月29日(水)にサインコサインのアトリエにて、Case of Co-Creation with SIGNCOSIGN(以下、サインコサインのCCC) vol.1を開催いたしました。サインコサインのCCCはファシリテーション型の共創プロセスの裏側をシェアするイベントシリーズです。

第一回のテーマは「 LION Scopeのアイデンティティは、どう生まれて、どう生きているのか? 」ライオン株式会社がパーパスにも掲げる「習慣」の可能性にふれるメディア「LION Scope」のネーミングやコンセプト設計、またコンテンツの編集方針などの策定について、サインコサイン加来ならびにボランチ松重氏にて支援しました。ライオン株式会社にて、プロジェクトを推進している久楽氏(2023年11月時点)もお招きし、LION Scopeのアイデンティティが生まれるまでのプロセスを振り返り、またそのアイデンティティがどのように現在のコンテンツの中に宿っているのかを検証しました。



登壇者プロフィール


久楽 英範(くらく ふさのり)氏
ライオン株式会社
ビジネス開発センター CXプランニング
ソーシャルコミュニケーションリーダー

松重 宏和(まつしげ ひろかず)氏
株式会社ボランチ
代表取締役


加来 幸樹(かく こうき)
株式会社サインコサイン
代表取締役

トークセッションのテーマ


LION Scope立ち上げ経緯とチーム編成の意図は?


久楽)
会社として定めている方針を共有します。LION Scopeは、ライオン株式会社が「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」ことを目指して作られたコンテンツです。習慣とは、読書や勉強などの習慣を作ることが一般的ですが、ライオンが提案している習慣は、普段意識していない手洗いや歯磨きなどの習慣です。LION Scopeでは、そんな習慣が「自分にとって何なのか」と考えることを皆さんと共に進めていくメディアになります。

加来)記事は、コピーライターの糸井重里さんや『伝え方が9割』の著者である佐々木圭一さんなどへのインタビュー記事や、noteにも習慣に関するストーリーが公開されていますね。最初はLION Scopeという名前もなく、コンセプトも固まっていない状態で声をかけられました。このようなチームでやろうという意図は何だったのでしょうか?

久楽)こちらは個人として考えていたことをお伝えします。メディアを立ち上げられる、コンテンツを作れるということでいうと、僕自身は前職で制作とかプロデュースをやっていた関係で、問題なく作れるということはわかっていました。ただ、コンセプトを作るということを、社内でやり切ろうと思うと難しい側面もありました。多種多様な意見を取り入れて、基礎を作るのが大事かなと思った時に、社内チームが僕だけに引っ張られる形ではなく、社外の一緒に作れる方とやっていくべきだと。

外からの意見も取り入れながら、基礎の基礎を、コンパクトに、スピーディに進められるチーム編成を目指しました。同時に、誰とやるかも大事だと思っていました。そこで、プロデューサーでありながらクリエイティブをしっかりやっていらっしゃる松重さんと、言葉づくりのプロである加来さんの布陣でやるのがいいのではないかと考えていました。

加来)ありがとうございます。このお話ははじめてお聞きしたのですが、共創の意義そのものだなと思います。僕も、社内でもやりそうなことを相談してもらっていると思いつつ、それでも、社内だけで進めてしまうと、推進できる人に引っ張られちゃう中で取りこぼしちゃうものとか、アイデンティティに入れなきゃいけない部分が抜けちゃうことがあります。社内外から生まれる双方向の作用で作っていくことで共創されていくものだと考えているので、そういった意図で声をかけてもらったのは嬉しいですね。


共創のプロセスや役割分担をどのように描いたか?


加来)
また、松重さんとの役割分担やプロセスをどうしていくとより価値を発揮できるかということも相談しながら進めていきました。

ネーミングやタグラインを僕が担当するにあたり、松重さんにはまず、彼が課題解決にあたりよく用いているアプローチでアイデンティティのタネとなる要素を探っていただく。そういった役割分担でした、よね?(笑)

松重)いきなり、丸投げですね(笑)僕も加来さんもクライアントさんと向き合ったり、中に入って一緒に考えることができるタイプです。

久楽さん以外のライオン内の担当者の方にもご参加いただき、まずはフレームワークを用いて、それぞれの意見やアイディア、大切にしたい想いなどを抽出するワークショップを開催させていただきました。

コンテンツアイデンティティ定義のために何をやったのか?


松重)
まずは「ライオンという会社を人に例えるとどういう人なのか」ということを可視化しました。

例えば、サインコサインのように小規模な会社だとイコール加来くんみたいなイメージにどうしてもなってしまうと思いますが、大きい会社になると年次や部署によってもそれぞれのイメージが違ったりするので「みんなが思ってるライオンってどんな会社なんだっけ?」というところから探っていきました。

みんなのイメージを集約していくとコンテンツアイデンティティの方向性がパーパス(前述)にかなり近いものになっていったので、今回ご参加いただいた社内のメンバーの方にはパーパスがしっかりと浸透されている印象でした。

そして、このプロセスの中で、社内のメンバーの方から「寄り添う」というワードが多く出てきたことから、ただ記事を出すだけではない、読者に寄り添うようなメディアが作れるのではないかと思っていました。

その後、ゴールデンサークルを活用して、このメディアが何のために存在するのかということを深掘りしていきました。

ゴールデンサークル理論とは、マーケティングコンサルタントであるサイモン・シネック氏が、 2009年に『TED Talks』でプレゼンテーションした『優れたリーダーはどうやって行動を促すのか』の中で提唱した理論で、要は何をするかより、なぜやるかが大事ということ、Why中心であるべきということです。

https://www.unprinted.design/articles/golden-circle/

「WHY(=Brand Purpose ミッション・ビジョン)」「HOW(=Unique Benefit or Proposition 問題解決シナリオ)」「WHAT(=Job Function 事業内容)」に「WHO(=Relation Target ターゲット)」を加えた、新・ゴールデンサークル理論に法って、コンテンツアイデンティティを定義していきました。

ライオンというブランドの場合はパーパスもしっかり言語化されているので、そこからも情報を抽出しながら、それを今回のオウンドメディアにはどう活かしていくのか、というところに落とし込んでいきました。

これらを踏まえて、ネーミングだったり、編集方針を考えていくわけですね。


ネーミングやタグラインなどをどのようにかたちに?


加来)
この図は、僕が言葉をアウトプットしていく時に大事にしている考え方です。

言葉には「葉っぱ」という字が入っているのですが、やはりそれは何もないところからは生まれず、その手前には必ずブレない象徴ともいえる木の「幹」があるはずなんです。つまり言葉の場合にも、その根幹となる表現すべき本質、いうなれば「言幹」を見つける必要があります。それを一緒に発見することで覚悟を持ってネーミングを掲げられると思っています。まさに松重さんに今、話していただいたことが、今回のプロジェクトにおける言幹となるものでした。

こうして、いくつかのネーミング案を言葉にしてミーティングに臨んだのですが、ライオンさん側の確認のステップでもうひと頑張りしようと背中を押していただいたので、もう一度リトライしようということになりました。

ただこれも覚悟を持てるアイデンティティをつくるための共創に欠かせないプロセスの一部なので、プロとしてはちょっと言いにくい部分に思われるかもしれませんが正直にシェアさせていただきました。

しかし、見出した方向が全然違うという訳ではなく、これをベースに、もう少し潜るということなのかなとチームでは考えていたので、アプローチを変えていきました。
概念としては、これまでが上段から整理するようなアプローチだったことに対して、今度は逆に一番下から上がっていくようなアプローチに変えてみたんですよね。

最終的にこんな記事が生まれることが理想というところから逆算しながら、ライオンで扱えるカテゴリのラインナップとも紐づけながら整理していきました。

松重)ライオンが所有しているリソースから具体的な記事の方向性は見えていましたからね。

久楽)ライオンとしては、こういうものを作りたいみたいなのはおぼろげにあるのですが、実際自分たちが作ったことも見たこともないことなので、私個人としては結構心配していました。

多分テーマは3つくらいに分かれるのではないかという話が出てきたので、このテーマとこのカテゴリーを掛け合わせていくと、何となくこういう記事ができそうだよねという、アウトプットのイメージが見えてきて、それに合うコンセプトって何だっけっていうのを、考えようっていうふうに進めていきました。

加来)こういう記事が出てきそうっていうところから逆算することで浮かび上がるコンセプトは何か?より深く思考を巡らせながら新しい言葉を考案していきました。

人生でこんなに「習慣」について考えることもなかなかないと思いますが、実はあらゆる世代や人種や場所を超えて多様性を受け入れて語ることできるものなんだよなという想いが強まっていきました。自分の日常は当たり前だけど、他人の日常は見ることができなかったりするから、実は他人のそれを知りたいみたいな、欲求は誰しもあるんじゃないかなと思います。

久楽)紆余曲折もあったり、フィードバックをもらってきたりしてきた積み重ねは、冒頭に僕が話した「(習慣は)目に見えない」みたいな話が多分ここで言語化されて、それを使うようになったのかもしれませんね。

加来)そうなんです。まさに「目には見えない」「けど見たい」という気づきがコンセプトを着想し、このようなタグライン&ステートメントに着地していくきっかけになりました。

ちなみに、我々がよくカラオケで歌うBUMP OF CHICKENの天体観測っていう曲の中に「見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ」っていう歌詞があるんですけど。このタグラインのもととなるコンセプトを着想したときに、ふと頭の中に思い出しまして。やっぱり見えないものは見ようとして「覗き込む」んだよなあと。

覗き込むという言葉からは「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」というニーチェの書いた有名な一節も思い出されると思いますが、この深淵という言葉には、底知れぬほど奥深いことという意味があり、まさに習慣みたいだなということで、このメディアにおいても、まだ見ぬ可能性があるものに触れる、と同時に、その習慣に自分も触れられる場をともにつくっていけると当初の理想にも沿っているよねということで、合意形成においては役立ちました。

松重)「望遠鏡」や「覗き込む」というワードもチームの中で共通言語としてやり取りされたこともあり、『LION Scope』というネーミングについては、もうこれしかないという感じでしたね。

このあたりのプロセスは、プロジェクトリーダーの久楽さんとしてはどのように感じていましたか?


上記のプロセスを当事者としてどのように感じていたか?


久楽)
そうですね。途中で口を挟んだところと被るんですけど、私が感じていたことをお話します。

日常にある習慣は、意識してない、気づいてないことに溢れていますよね。自分はもっとよくなるかもしれない可能性を秘めていることについて、改めて考えることができたので、このプロセスを経て、地盤を固めて、これから作るコンテンツについてどう対話していくか、想定する読者像や価値提案のあたりも含めて、十分にディスカッション出来たのではないかなと感じています。

松重)一応もう既に「何か見つめる」みたいな話は出てきていて、そうそう習慣って目に見えないですよね、みたいなのは出てたんだけど、それをより表に出したというか、強く打ち出した。結果として、より深い言葉になったと感じますね。


LION Scopeの編集方針とここまでのコンテンツは?


加来)そこから、コンテンツ編集方針について松重さん中心に進めていただきましたね。

松重)編集チームをどうするかというところも僕の方から提案させていただき、クリエイティブ性の強い記事制作が得意な知り合いの編集プロダクションに入っていただくことになりました。彼らとも一緒に、どういう方針にしていくかディスカッションして、決めていったっていう感じです。

結局、タグラインが記事作成の大方針になっていて、どういう記事であれば、見えない習慣を見つめることができて、かつ、読者が自分も読むだけでなく、自分の日常生活に置き換えて深く考えるとか、誰かに記事の内容を伝えたくなるとか、そういうポイントをどうやったら作れるかっていうところを意識してフレームを作っていきました。

LION Scopeでは、ライオンさんの社内メンバーの方が自分で書くというケースも想定されています。そうなったときに、結局いろんな部署の人たちから「このネタを出してほしいです」みたいな依頼が殺到して、記事の品質が担保できなくなることだけは避けたいと考えました。そこで、テーマや取り扱う商品がそういった流れで決まっちゃったとしても、どうやったらつくるべき読了感を生めるかを、きちんと企画として考えましょうねというテンプレートを用意しました。

最初はこのテンプレートに合わせて、編集プロダクションと我々で、いくつか企画アイディアを出して、そのうち何本かを実際に記事にしていくという一連の流れをお手伝いさせていただきました。

加来 )LION Scopeの運営も2年目に突入していますが、現在はどのような方針で、どのようなコンテンツができてきてるんですかっていうのと、その中で今はメディアとして自走している段階だと思いますが、一緒に共創させてもらったアイデンティティがどのように活きてると感じていますか?


現在、共創したアイデンティティはどのように活きている?


久楽)
大きなところは変わらずですが、今のチームの状況(2023年11月時点)をお伝えしますね。

松重さんにお話いただいたフォーマットのエッセンスを抽出してうまく使っています。
そのまま使わないケースもありますけれども、どういう読後感にしますかとか、読者層は割と固定しつつあったりとか、習慣へのアプローチみたいなところも大事だと思っているので、改良を加えながら活用させてもらってます。

良い意味で、慣れてきているというか、自走し始めているっていうところがあります。そういう意味でも当初の編集方針は、欠かせない要素としてチームに宿っていると思います。

取り組みの意義はバズではなく情報資産として蓄積することにあると思っていますし、パーパスにある『習慣』の奥深さを伝えるための手段のひとつとしてメディアを磨きながら、様々な手法で『習慣』が持つ可能性を伝えていき、ステークホルダーに対しポジティブな態度変容を作っていくことを意識しています。


このプロジェクトを通じての感想や学びは?


加来)ちゃんとコンテンツの魂として生きてるんだなということに、触れられて嬉しかったですね。最後にこのプロジェクトを通じて、何か感想とか学びとか、ありますか。

松重)結構、僕も、加来さんもそう、基本的に、クライアントさんの仕事をするっていうことを、僕らはよくやっていいて、当然クライアントさんごとに歴史も違うし、思いも違うんですけど、ライオンさんって面白い会社だなって思いました。

今回のプロジェクトチームにも、新卒6〜7年目ぐらいですかね、若いメンバーも中心で動かれていたりとか、久楽さんのように転職組の中堅の方もいらっしゃったり、ライオン一筋で長く勤められている方も、結構いろんな立場の方からお話を聞いたんですけど、なんかもう、そもそも会社として面白いというか。創業者に始まりそれぞれの世代の人たちがそれぞれ面白いことをやって、そもそも歯みがきの習慣そのものをつくったのもライオンなのですが。まさに今回のアイデンティティでもある当たり前をより面白く捉え直し習慣化していくという精神が根付いている会社だなというのを感じました。

同時に、それが広まっていないことをもったいないとも感じました。だからこそ、このメディアを通じて、この面白さが伝わるといいですね。結果的に奥深さのあるアイデアを提案できたことで、それに貢献できたことは、個人的にも嬉しかったですし、基本的な要素をしっかり作り上げることができたことはとてもありがたかったです。そして、それが非常に重要だと再認識できました。

加来)改めてお二人にお付き合いいただきながら、振り返らせてもらって、共創のプロセスを探るというようなテーマでしたが、こういう言い方も変ですけど、本当に共創してたんだなって思います。

もちろんですが、妥協しなかったということは、このプロセスの中では何度もリセットを繰り返したり、お互いに妥協せずに難題を提示してくれたからこそ、アイデンティティがしっかりと息づいている状態を作り出せたのだと考えています。

僕としてはそういったことに改めて気づかせてもらったと感じながら、会場にお越しの方の中でも質疑してみたい方がいらっしゃれば聞いてみたいなと思いますがいかがでしょうか?

Q&Aコーナー

Q.
私も会社でコンテンツマーケティングやブランド関連の仕事をしています。メディアプロジェクトを進めようとしても、上層部からビジネス的な意味や利益について詰問され、なかなか進まないことが多いのですが、どのような経緯でプロジェクトを始めましたか?

A.
久楽)
会社としての課題感としては、企業ブランディングの必要性が出発点でした。そこから実際に形にしていく中で様々な説明や合意形成が必要になると思いますが、共通の目的に合意がないと、売上に直結しないと決裁者に否定されがちです。

共通の課題解決に焦点を当て、必要な役割を明らかにすることが大切だと私は考えています。社内の合意形成や情報共有は重要で、「何のためにやるのか」という疑問や確認なども受けましたが、私のミッションはプロジェクト推進であり、必要なサポートを得ることに集中しました。プロジェクトが進むにつれ、情報を提供してくれる人も現れ始めてくるものかなと思いますね。

Q.
久楽さんにお聞きしたいのですが、1人でもプロジェクトを進められたかもしれませんが、共創の結果として得たものはありますか?

A.
久楽)
自分の中で実感していることとして大きく2つの点があります。1つ目はリソースです。1人で専任できたとしても、他の仕事もある中で、プロジェクトを進めるには共通言語や質の高いアウトプットが必要でした。2つ目は、自分のバイアスを理解し、他者と共同することの重要性を感じました。プロジェクトに前向きな人と共に、困難な状況でも進めることができるかを話し合いました。短期間で効率的に進めるため、しっかりと確認しました。迷惑をかけすぎないように注意しました。

加来)ご質問ありがとうございます。今回お付き合いいただいた皆さんに何かしらのヒントとか気付きとかあったら嬉しいなと思います。協力してくれたお2人も含め、ありがとうございました!


次回開催について

次回は、株式会社クオカードの全社員の個人パーパスを言語化し、企業のパーパスとのつながりも探るプロジェクトに数ヶ月かけて取り組んだ背景や裏側をシェアしながら、理想のインターブランディングについて語り合うイベントを3月6日(水)に同じくサインコサインのアトリエで開催します。

インナーブランディングへの関心がある方は、ぜひ遊びにきてください!


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