Lee-co@【小説】着飾って美味しい美術館巡り

おしゃれが好きな主人公が美術館に行って美味しいものを食べる小説を配信してます。 「美術…

Lee-co@【小説】着飾って美味しい美術館巡り

おしゃれが好きな主人公が美術館に行って美味しいものを食べる小説を配信してます。 「美術館」、「グルメ」、「ファッション」と自分の好きなものを素直に受け入れることで生き方が変わっていく女性の日常を描くエピソード。 Instagram→ do_museum

最近の記事

#06 西新宿 都会に咲く花《SOMPO美術館》

私は今、トリュフデミグラスハンバーグのために真夏の炎天下の中1人で30分も並んでいる。 CLANEのワイドフラワープリントのシャツにも汗が滲む。 数日前にSNSで気になるお店を発見した。 その名も君のハンバーグを食べたいというお店。 なんともインパクトがある店名に誘われて西新宿まで来てしまった。 土日のお昼限定でしか食べることができない幻のハンバーグということもあり、12時の開店前からSNS世代の若い女性達が列をなしている。 皆、私と同じようにインパクトがある名前につられ

    • #05 吉祥寺 家族が欲しいよ 《武蔵野市立吉祥寺美術館》

       少女の人型モチーフのロゴが大きくあしらわれたmintdesigns(ミントデザインズ)のバッグを持ち、足元は蛍光イエローの靴下を履く。黒いシンプルなロングカットソーワンピースを着て、小物が主役のコーディネートで家を出る。 休日の今日は、カジュアルに平日には身につけられない派手な色をまとい気分を上げて武蔵野方面の中央線に乗りこむ。 車窓から眺める外の街並みが角ばった都会の景色から丸み帯びた優しい街並みに変化していく。 吉祥寺に到着して電車を降りる。 休日昼間の吉祥寺は、

      • #04 六本木 美術館デートの相性 《森美術館》

        『今日は、遅くまでありがとうございました。 もしよければ、現代アートの企画展が森美術館で開催されているので、一緒に行きませんか?』 会社の後輩に誘われて参加した飲み会で出会った、野田さんからのメッセージだ。 かつて一緒に合コンに行ったり、夜遊びをしていた煌びやかな女友達も一人、また一人と卒業していった。 三十歳目前で駆け込むように結婚ゲートに滑り込み、普通の女になっていく後ろ姿を何人見送ってきただろうか。 独身時代は、たくさんお酒を飲んで思いのままに毒を吐きまくり、世

        • #03 表参道 後天的に習得される美的感性 《根津美術館》

          携帯が鳴る。 画面には母親の名前が表示されている。 電話に出ると明るい声が耳に響く。 「今週末、暇ぁ? お母さん、暇だからショッピングとランチでも一緒にいかが?この前テレビで紹介されてた新しい表参道のショッピングスポットに行ってみたいの。」 実家を出てからも定期的にショッピングやご飯を一緒に食べに行き、友達のようにたわいもない話をするほど関係性は良好だ。 「特に予定はないからいいよ。」 表参道なら素敵な美術館があるなぁっと脳裏に浮かぶ。 思い切って母親を美術館に誘

        #06 西新宿 都会に咲く花《SOMPO美術館》

          #02 初台 お仕事帰りに寄り道 美術館 《東京オペラシティアートギャラリー》

          バチ。 フロアの電気が突然消えた。 「五時だ!!」 月に一度定時になると強制的にオフィスの電気が消される。 これが我が社の「働き方革命」。 最近の企業トレンドのキーワードは、 「働き方革命」 月に一度は定時で仕事を終えて帰りましょう。 という新しい取り組みが会社全体で行なわれている。 企業の目論見は残業代を強制的にカットして経営のスリムアップが狙いだ。 上司の顔色を伺うことなく堂々と定時に帰れると喜ぶ若手社員や、小さい子供を抱える働き盛りの四十代社員は、残

          #02 初台 お仕事帰りに寄り道 美術館 《東京オペラシティアートギャラリー》

          #01 乃木坂 トキメキを取り戻す 《国立新美術館》

          スマホのアラームの音がなる。  いつもの週末なら、時間が許す限り寝るのが至福の幸せであるが、今日は平日と同じ時間に目を覚ました。  六月の新緑の季節。カーテンの隙間からの日差しが爽やかだ。  お気に入りのイッセイミヤケのワンピースに身を包む。 この服を着ると、何故か自分に自信が持てる一着なのだ。 今日行く美術館の空間を想像しながら、その空間とアートと自分がコラボレーションできるような一着を選ぶ。 図書館だったら毎日でも普段着のままで気軽に行けるが、私にとっての美術

          #01 乃木坂 トキメキを取り戻す 《国立新美術館》

          #00 プロローグ③ 学生時代の回想

          大学時代の専攻は、西洋美術史だった。 美大生ように芸術を生み出す才能があるわけではない。 針路を決める時に、美術の知識は、お金を稼ぐための実用性や機能性がないから就活に有利にならないと先生に言われたのを振りはらい、消去法で大学の専攻を決めた。 社会に出て働く時に西洋美術の知識がどれほど役に立つのか。 その時は何も考えず進路を決めた。 就職後、美術の知識は会社の実務には、一切役に立たなかった。 会社では、日々の業務に必要な知識を機械的に頭に詰め込んでいた。 英語、簿

          #00 プロローグ③ 学生時代の回想

          #00 プロローグ② 忘れかけてた何か

          「っは!!」 次に目が覚めたのは、土曜日の夕方だった。 「あ~何もしないまま土曜日が終わってしまった。まぁいいや。特にすることもないし。沢山寝たから身体のリセットになっただろう。」 レトルトのパスタを口にほうばりながら、無意識にSNSを開く。 特に見たくもないのにSNSを開いてしまうのは、現代病の一種だろう。 親指で軽快にスクロールしながら、人々の生活を覗き見していく。 上辺だけの浅はかな情報だけが次々と連なっている。それを情報と呼んでいいのかさえ怪しい。 スクロー

          #00 プロローグ② 忘れかけてた何か

          #00 プロローグ① 日常生活

           同じようなスーツ姿の学生がベルトコンベアに乗せられて、私の眼の前を次々と通り過ぎていく。 「この会社に入ったら、いくら給料がもらえるんだろう。」 「どこでもいいから早く内定が欲しい。」 「この会社に入社したら女にモテそうだな。」 「就職活動という名目の婚活。この会社なら、年収のいい男が沢山働いてそう。早く専業主婦になりたい。」 「他人と違うことってリスクになるんでしょ。みんなやってるからとりあえず。」 「全くイカれた就職システムでくだらない。古い物差しではかられ

          はじめまして

          はじめまして。Lee-coと申します。 学生時代に美術史の面白さを知り美術館を巡りを始め、現在はファッション業界で働く、食べることが大好きな者です。 今回、自分の好きな物を詰め込んだお話を書いてみました。 このお話を通じて、みなさんの「何かを好き」という気持ちに寄り添えたら嬉しいです。 もしかしたら、自分が何を好きなのかが分からず悩む人もいるかもしれません。 もしくは 自分の好きなものに自信が持てず、好きと主張することに後ろめたさを感じている人もいるでしょう。