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#02 初台 お仕事帰りに寄り道 美術館 《東京オペラシティアートギャラリー》

バチ。

フロアの電気が突然消えた。

「五時だ!!」

月に一度定時になると強制的にオフィスの電気が消される。

これが我が社の「働き方革命」。

最近の企業トレンドのキーワードは、

「働き方革命」

月に一度は定時で仕事を終えて帰りましょう。

という新しい取り組みが会社全体で行なわれている。

企業の目論見は残業代を強制的にカットして経営のスリムアップが狙いだ。

上司の顔色を伺うことなく堂々と定時に帰れると喜ぶ若手社員や、小さい子供を抱える働き盛りの四十代社員は、残業代が減り収入が減ることを危惧して定時に仕事を切り上げて、Uber eatsを三件こなしてから家に帰ることという新しいノルマが増えた人もいる。

早く家に帰っても居場所がない五十代の社員は、早々に仕事を切り上げて明るいうちから飲みに行けると大喜びしている。

働き方革命に対するリアクションは、人によってまちまちだ。

フロアの電気が消される。

帰れの合図だ。

「明るい時間に帰れるなんて、いつぶりだろう。このまま家に帰るのも勿体ないな。」

せっかくだから、寄り道して帰ろうかな。
家とは反対の方向の電車に飛び乗った。

初台駅に到着。

今日のお目当は、五十四階建ての劇場都市『東京オペラシティ』の三階から四階にある東京オペラシティアートギャラリー。 
近代美術や現代美術を中心に展示している。

新宿駅から都営新宿線で一駅の初台駅直結という好立地でアクセスしやすく、会社や学校帰りにも立ち寄りやすい美術館だ。

本日の企画展がファッション関連の展示のため、展示会場はファッションショーのように華やかな装いの人が多いような気がする。

学校でファッションを学んでいるような奇抜なファッションの学生の姿も見られる。

本日の私のファッションはmame kurogouchiの黒いワンピース。



絵画だけでなくファッションや文化に焦点を当てた企画展も面白い。

ファッションは時代を映し出す鏡とも言われるくらい、美術品と同様にその時代の文化を紐解くコンテンツとなり立派な芸術作品だ。

ファッションのスタイリングや素材などのディテールを鑑賞するのもよし、文化現象の一部としてのファッションを考察するもよし。

楽しみ方は人それぞれで良いのだ。

見終わった後は、明日からもオシャレを楽しみたいという気持ちになり美意識が磨かれたような気持ちになった。

「わぁ~。心うるおったぁ。」

外はすっかり日が暮れて暗くなっていた。

甲州街道は、ひっきりなしに行き交う車で忙しい。

大手企業のオフィスが立ち並び、帰宅の途につくためにビジネスマンが一斉に駅に向かう。

そろそろ夕飯の時間だな。

ビジネスマンの波に逆流して、駅とは反対の方向へ進む。

一本小道に入ると、生活感が漂う住宅街が広がっている。
ファミリー向けのコンパクトな戸建て学生や単身者向けの低層階マンションの部屋に明かりが灯る。
お風呂から漂う石鹸の匂いや夕飯の美味しそうな匂いが空中に浮遊している。なんだかホッコリと暖かい気持ちになる。

スマートフォンのメモアプリを開く。

行きたい美術館がある周辺エリアを基準に気になる飲食店の情報をメモアプリにストックしている。

「初台、幡ケ谷周辺で気になるお店はぁ〜。」

メモを親指でスクロールする。

『幡ケ谷 您好 中華 餃子』

「これだ!!今夜のご馳走は、餃子だ!」

静かな商店街のビルの2階に上がる。
満席のようでドアの前に何組かお客さんが並んでいる。

通りすがりにふらりと入るというよりは、このお店をめがけて来ているお客さんが多いようだ。

少し並んでようやく店内に入る。

店内は、賑やかで活気にあふれている。

店員さんに誘導されるがまま、厨房の様子が見えるカウンター席に座る。
横並びのカウンター席を見ると私と同じようなお一人様が並んでいる。

カウンターの他にも円卓があり、仲間や家族と一緒に来ているお客さんは賑やかにディナーを楽しんでいる。どの円卓のお客さんも笑顔で顔がキラキラしている。

周りを見渡して、他のお客さんが何を注文しているのか観察する。
どのテーブルにも餃子がある。

私も餃子を頼もう。

水・焼・揚の三種類の餃子がある。
全種類食べたいけれど、お腹のキャパシティを考慮すると二種類が限度かもしれない。どれを諦めるか。せっかくだから餃子以外のものも食べてみたいし。

メニューと睨めっこすること数分。

「すみません。」と声をはりあげ店員さんを呼ぶ。

活気ある店内の雰囲気の中、店員さんの気をとめる。

「焼き餃子と水餃子と腸詰チャーハンをお願いします。」

カウンター越しに見える厨房では、一人が生地を練って皮を作り、隣の相方が一つ一つ手作業でリズムカルに餃子の餡を皮に包んでいる。コロンと大ぶりな丸みのある餃子のシルエットが
このお店の特徴のようだ。

「お待たせしました。焼き餃子と水餃子です。」

お目当の餃子が運ばれてきた。
いつものようにカバンからスマートフォンを取り出し、餃子の写真を撮る。

#着飾って美味しい美術館巡り

いつものハッシュタグをつけてSNSに投稿した。

「まずは、焼き餃子からいただきます。」

餡は、豚肉の肩ロース肉、白菜、キャベツ、ニラ。カリッとした焼きの食感の後に、口の中に広がる。

肉感と野菜のザクザク感を豪快に感じる。一つ一つが食べ応えがある重みのある餃子だ。

次は、水餃子。同じシルエットの餃子ではあるが、水餃子はツルンとしていて見た目が可愛らしい。熱々の水餃子を口に含むと「モチッ。ジュワ。」焼き餃子とは対極の食感と味。モチモチの食感に優しさを感じる。

「はぁ〜。癒される。」

美味しいものを食べると何でこんなに幸せな気持ちになるんだろう。

「腸詰チャーハンとセットのスープになります。」

お皿にモリモリに盛られたチャーハンからは腸詰の良い匂いが香り、食欲がかき立てられる。

餃子でお腹が満たされているはずなのに、これは別腹でいけそうだ。

スプーンでチャーハンを口に運んだ瞬間に鼻に抜ける腸詰の香りが何とも言えなく幸福度が急上昇する。

「幸せ〜。」

こんなに幸せな気持ちになれる中華料理が存在するとは。

会社帰りの寄り道美術館からの美味しい夕飯。平日とは思えないくらい充実した時間となった。

「働き方革命 最高!」

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✴︎本日の美術館✴︎
東京オペラシティアートギャラリー
https://www.operacity.jp/m/ag/
✴︎本日のファッションワンポイント✴︎
mame kurogouchi
https://www.mamekurogouchi.com
デザイナーは、長野生まれの黒河内真衣子。2006年に株式会社三宅デザイン事務所に入社後、2010年に自身のブランドを立ち上げる。
2020年、長野県信濃美術館 本館と東山魁夷館(2021年春に開館)のスタッフユニファームのデザイナーに就任。
✴︎本日のグルメ✴︎
您好
東京都渋谷区西原2-27-4 升本酒店 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131807/13001812/