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#00 プロローグ③ 学生時代の回想

大学時代の専攻は、西洋美術史だった。

美大生ように芸術を生み出す才能があるわけではない。

針路を決める時に、美術の知識は、お金を稼ぐための実用性や機能性がないから就活に有利にならないと先生に言われたのを振りはらい、消去法で大学の専攻を決めた。

社会に出て働く時に西洋美術の知識がどれほど役に立つのか。
その時は何も考えず進路を決めた。

就職後、美術の知識は会社の実務には、一切役に立たなかった。

会社では、日々の業務に必要な知識を機械的に頭に詰め込んでいた。

英語、簿記や法務、貿易実務。

企業で必要とされる実用的なビジネススキルだ。
そこに心ときめく好奇心は皆無だった。

美術館の建築の中に広がる、非現実的なアートな世界観、、、。

シーンと静まり返った空間で美術を鑑賞する時の体に染み渡る実体験、、、。

あぁ〜。やっぱり美術館はいい。

学生時代の西洋美術の授業が蘇る。

「美術史を学ぶうえで最も重要なことは、『なぜその作品を、その地域とその時代に描く必要があったかを考えること』だ。」

高校を卒業したばかりの私は、黒板の前で繰り広げられる未知の世界に釘付けだった。

それまで美術館にすら行ったことがなかった私は、美術史の授業に完全に魅了された。
それからというもの、美術関連の本を読みあさり美術の世界にはまっていった。

そして、美術史のゼミ仲間と一緒に美術館に行き、近くのレストランに寄り道をして美味しいご飯を食べながら美術トークに花を咲かせ、興奮冷めならぬ前に帰宅し、家でもその余韻に浸る青春時代だった。

美術館での美術鑑賞は、実体験として私の身体に吸収されていった。

「レオナルド・ダヴィンチの受胎告知が日本に来た企画展の時に食べた、あのお店のタリアテッレ……美味しかったなぁ。」

過去の美術館の思い出の傍らには、必ず美味しかったグルメの記憶も寄り添っている。

美術館に行った後の頭の中が「美」と「知識」と「好奇心」でいっぱいの興奮状態の中で気の知れた仲間と食べるご飯は格段に美味しかった。

「懐かしいなぁ。久々に美術館に行ってみようかな。」

SNSの礼央の投稿にダイレクトメールを送る。

「私も久々に美術館に行きたい。来月、仕事が落ち着くから週末一緒に美術館いかない?」

#01  乃木坂 トキメキを取り戻す 《国立新美術館》 へ続く

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