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#00 プロローグ② 忘れかけてた何か

「っは!!」

次に目が覚めたのは、土曜日の夕方だった。

「あ~何もしないまま土曜日が終わってしまった。まぁいいや。特にすることもないし。沢山寝たから身体のリセットになっただろう。」

レトルトのパスタを口にほうばりながら、無意識にSNSを開く。

特に見たくもないのにSNSを開いてしまうのは、現代病の一種だろう。

親指で軽快にスクロールしながら、人々の生活を覗き見していく。
上辺だけの浅はかな情報だけが次々と連なっている。それを情報と呼んでいいのかさえ怪しい。
スクロールをする指が止まった。

「っあ。礼央だ…。」

大学時代に同じゼミだった礼央の投稿に、目が止まった。

『フェルメールの企画展に行ってきました。
一時間も並んだけど、並んだかいがあった。
本物のフェルメールの作品を見て感動した。
やっぱり、美術は心の浄化。』

そこには、美術館が用意したSNS映えスポットのパネルで撮影された礼央の満面笑みの写真が投稿されていた。

今回の企画の目玉絵画であるフェルメールの絵画の女性の顔の部分がくり貫かれたパネルだ。
くり貫かれた丸に礼央の顔がすっぽりはまっていた。

このハイテクな時代に撮影スポットのパネルだけは、妙に昭和感が残っている。

SNS映えを求めて、写真を撮るために令和を生きる人々は紙で作られたはりぼてのパネルに行列をなしているのだろうと想像をめぐらす。

「美術館かぁ。最近行ってないなぁ。最後に行ったのはいつだっけ。」

#00 プロローグ③ 学生時代の回想 へ続く

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