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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
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2022年9月の記事一覧

炎の魔神みぎてくん健康診断 3.「人間界の食い物ってたいていうまいんだけど」

3.「人間界の食い物ってたいていうまいんだけど」  さて、血圧測定、体重測定という順で、健康診断は意外なほどサクサクと進行する。実はコージたちのような二十代の場合、成人病の健康診断は含まれていない。そういうわけで、一部の検診(心電図とか)は省略となっている。ちなみにみぎての年齢は単純に数えると一二〇歳となるので、成人病検診が必要になるのだが、どうやら「魔神としておっさんかどうか」が重要らしくやっぱり省略である。 「みぎて、魔神の平均寿命ってお医者さん知ってるのか?」 「う

炎の魔神みぎてくん健康診断 2.「この年で高血圧はいやですよね」 

2.「この年で高血圧はいやですよね」  健康診断の当日の朝は、幸い薄曇りで暑くもなく寒くもないという、とても過ごしやすい陽気だった。まあもう少し夏に近づくと、会場までの往復が暑くて、それだけで行く気が萎えてしまうことになりかねない。かといって真冬の検診だと、どうしても厚着をして行くことになるので、会場で服を脱ぐのが大変である。そういう意味でもこのシーズンが健康診断には一番向いているといって間違いない。  とはいえ傍らを歩くみぎてはといえば、もうこれは見ている方が笑いたくな

炎の魔神みぎてくん 健康診断 1.「嘘だろっ!勘弁してくれよっ!」

1.「嘘だろっ!勘弁してくれよっ!」  大学の研究室で文献調べをするというのは、とても面倒なものである。特に外国語文献…コージたちの日常語である西方語で書かれていない論文などを相手にするはめになろうものなら、文献探しも一騒動な上に、翻訳するのもさあ大変である。まあ幸い最近はネットのおかげで、文献の検索はずっと楽になっているのだが、それでもやっぱりめんどくさいという事実は変わらない。  今日のコージは朝からネットで見つけた精霊語の論文を、辞書を片手にうんざりした表情で読んで

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 8.「奥さんのためだし、許してあげるわ」

8.「奥さんのためだし、許してあげるわ」 「よっし、ここは一発いくぜっ!」  みぎては意気揚々とベンチを立つと、アプローチに向かった。幹事と言うことでいろいろあって、みぎてたちのレーンはようやく今から第八フレームである。とにかくここでストライクを出さないと、蒼雷(ぴちぴちスーツ付き)が怒濤の男性陣優勝と決まってしまう。 「いくぜっ!いちっ、にのっ、さんっ!」 「やったっ!」  さすがに気合いの入ったみぎての投球である。ボールはレーンを猛烈なスピードで走り、ピンを一掃す

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 7「ボウリングの歴史終焉がちらついてきた…」②

 さて、蒼雷がポリーニの発明品「スウィートフックメーカー」に着替える間に、コージ達は自分達のゲームと、あとは得点の中間集計を大急ぎで行わなければならない。というか、実際コージ達はろくにゲームらしいゲームなどできないのが現実である。各レーンの一ゲーム目の得点を集計し、ハンディを加えて途中経過の発表をするのだから、大変なのは当然である。幸いディレルが表計算ソフトの入ったノートパソコンを持ってきているので、得点さえ集めれば順位はすぐに計算できそうである。 「今のところやっぱりトッ

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 7「ボウリングの歴史終焉がちらついてきた…」①

7「ボウリングの歴史終焉がちらついてきた…」  みぎて達の見ている前で、いよいよ注目のプロ、エラ夫人の第一投が始まった。と、どういうわけか場内には実況解説の声が流れる。 「こんにちは。バビロン大学落語研究会の林家ランプアイです。解説はバビロンスターレーン付属プロショップ店主、インストラクターのアデノシンさんです」 「こんにちわ、アデノシンです…」 「誰だよ、勝手に解説者呼んだのは…」 「プロショップの店長さんですねぇ…」  おそらく今日のにぎにぎしいイベント(プロも参加

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 6「あのころヒットした歌謡曲は」

6「あのころヒットした歌謡曲は」  十一月になると、バビロンの街路樹の木々もすっかり色づき始め、朝晩の空気もすっかり肌寒くなる。特に今年は夏は暑かったせいか、秋がやたら短いような気がする。台風シーズンも終わったので、天気もすっかり落ち着いて雲一つない青い空がここ数日続いている。まさしく「スポーツの秋」という言葉がぴったりの最高の陽気である。  残念なことにボウリングというスポーツは完全に室内ものなので、少々天気が悪かろうが関係がない。なんとなくこんなに晴れている日に室内競技

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 5「…どうやってこれ倒すんだよ」②

 さて、マイボウルができあがったコージ達は、早速レーンに出て試し投げということになる。 「とりあえず試しだから二ゲームくらいですね。時間もあまりないし…」 「終バスには乗らないとなぁ…」 「あたしは、最悪パパに迎えに着てもらうからいいけど…」  学校帰りにボウリング場に急行して、ボールを作っている間に晩御飯を食べてそれから、であるから正直あまりたっぷり時間はない。せいぜい二ゲームが関の山というところであろう。前回みたいに終バス乗り遅れのタクシー帰りはちょっとまずい話である

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 5「…どうやってこれ倒すんだよ」①

5「…どうやってこれ倒すんだよ」  さて、それから二ヶ月の間でコージたちはボウリング大会の準備と、それから(本来はこちらが主目的なのだが)毎週一回ボウリングの練習をするということになった。もちろん大学では研究とか論文作成とかいろいろあるので、ボウリングばかりにかまけているわけにはいかないのは当然である。が、今回は(変人として有名とはいえ)教員であるシュリのお供だという口実があって、普通のレジャーよりずっと参加しやすい。 「ところで貧乏魔神君たち、マイボールとかはどうする予

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 4「あ、説明するの忘れておりましたわ」②

 さて、その週の土曜日午前中に、コージたちは早速初めてのボウリング練習会を開催することになった。場所は当然先日の「バビロン・スターレーン」である。今回はシュリ夫妻の相手をするということもあるし、それからマイボールをどうするか、という問題もあったからである。 「でもポリーニ、なんでおまえまで練習会にくるんだよ」 「そんなの当たり前でしょ?あたしだって『ショッピングゾーン』興味があるのは同じなんだから。ショッピングモールって女の子のためにあるっていうのは、社会常識じゃないの」

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 4「あ、説明するの忘れておりましたわ」①

4「あ、説明するの忘れておりましたわ」  ということで、コージたちは翌日から講座生活の傍ら、ボウリング大会の準備を始めることになってしまった。日程調整とか会場の手配、声をかけるメンバーへの連絡とかはもちろんのこと、彼ら自身の練習も必要である。そもそも今回は大会はおまけであって、「シュリと一緒に健康維持ボウリングトレーニング」がメインである。コージたちは大会準備だけをすればいいというわけにはいかない。  それに多少はボウリングの経験があるコージやディレルと違って、みぎてはほと

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 3「話どんどん進んでますよ…」

3「話どんどん進んでますよ…」  アミューズメントゾーンは面積としてはショッピングゾーンより多少小さいらしい…が、コージ達が今まで見たことのあるこの手の施設とは比較にならないほどのでかさである。最近流行のシネコン、ゲームセンター、カラオケボックス、ボウリング場、それからダーツバーやビリヤード場まである。一つ一つはコージ達もよく見かけるものだが、全部の設備が一つのビルに収まっているというのは初めてである。それに加えてそれぞれのスペースがでかい…最初に入ったゲームセンターでいき

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 2「あの店、みぎてくんサイズまでよく」

2「あの店、みぎてくんサイズまでよく」  午後も適当に過ごした(といってもいろいろ面倒な用事はあったのだが)コージたちは、五時になっていそいそと帰り支度を始める。こういう理系の講座であるから、普段ならどんなに早くても七時、下手をすると夜中まで研究とかをやっていることもあることを考えると、今日は破格に早い引き上げになる。 当然ながらさっき相談したとおり、みんなで「プレミアムショッピングゾーン・バビロンタウン」へゆくつもりなのである。  いくら夜九時まであいているといっても、大

炎の魔神みぎてくん すたあぼうりんぐ 1「映画館なんて明け方の三時まで」②

 さて、翌朝二人はいつもの通り下宿を出て大学へと向かう。さっきも言ったとおりコージはバビロン大学魔法工学部の大学院生だし、みぎてはといえばやはりコージの講座に所属している聴講生である。平日は二人とも研究室でいろんな実験をしたり、論文を読んだり書いたり(書くのはコージだけだが)、そういう研究をするのが日課である。特にみぎての場合は、その魔神としての強力な精霊力でさまざまな魔法実験に協力するというアルバイトをしているので(というか、学費+α分のバイト代をもらえる実験助手という身分