Aの私、はじめての違和感
ご挨拶
こんにちは、秒針です。今回はTwitterで要望が多かった「Ace関連」、その中でも私が現在自認しているアロマンティック・アセクシャルという単語に辿り着くきっかけのような形となった思い出を綴っていこうと思います。
(この出来事がきっかけで、私はのちのち私自身のセクシャリティについて考え出すことになります。)
強烈な記憶です。
自分の感情と合わせて書くとなるとどのくらいの長さになるかわかりませんが、よければお付き合いくださいな。
例のイベントが契機
なんのことか?
そう、修学旅行の恋バナタイムです。正確には修学旅行ではないのですが、修学旅行を想像してください。
どんな宿泊行事だったか説明しましょう。
私が選んで入学した高校には、入学式の週末の土日にいきなり1泊2日をするという宿泊行事がありました。毎年行われていたので、おそらく今も続いている文化なのではないかと。
単位制の高校で進学実績も気にしているような風土だったので、履修の仕方や勉強の基本的な方法についてそこでみっちりレクチャーされるわけです。
それから、グループごとにテーマを割り振られて一晩でプレゼンの準備をし、2日目に成果を発表する。そんなほぼ初対面の仲間達と協力プレイをするようなミッションもありました。
もちろんまだ生徒同士の親睦も深まっていませんから、軽いレクリエーションタイムもありました。高校生活のレクチャーのみならず生徒の交流を促すのも目的の一つという合宿だったわけです。
ここで私の通っていた高校の情報を付け足すと、女子の方が人数が多い共学でした。毎年、クラスの6割は女子でしたね。
割り振られた大部屋
皆さん、修学旅行で7〜8人が雑魚寝をする大部屋に案内されたことはありますか?
この合宿はそのパターンでした。女子の人数が確か24人のクラスだったので、3部屋に分けてちょうど8人ずつ。
私の割り振られた部屋には、4月のうちにクラスのリーダー格となるしほちゃん(仮名)がいました。
このしほちゃんの存在がとても大きいわけです。
レクリエーションやセミナーが終わり、お風呂に入り、訪れた消灯時刻。早めの消灯時刻だったので、みんなまだソワソワしていました。
流れる空気が妙に熱くて浮ついている、そう私が感じた覚えがあります。
さらに場を熱するように、しほちゃんは言いました。
「ねえ、全員で恋バナしよ!」
地獄の時間の始まり
部屋の中は8人。しほちゃんの仕切りで、1人ずつがこれまでの恋愛経験を語ることになりました。
みんなすっかり乗り気で、「いいねいいね!」「何それ!いいじゃん!」「きたー!絶対楽しいやつ!」との声が飛び交います。
私が気にしたことは何か?
自分の出番、すなわち語り手の順番です。とにかく焦った私の思考回路はこうでした。
いつ自分の出番が来るのかわからない指名制だったら超困る。恋愛なんてしたことない。誰かと付き合ったことなんてない。でもなにか話さなきゃ。友達をここで作らなきゃ、高校生活が失敗から始まってしまう。どうしよう。
そこで再び、しほちゃんが仕切りました。
「じゃあとりあえず、出席番号順で!」
つまり、私は大トリでした。
大パニック秒針
さあさあ、いよいよここからです。
みんながどんどん中学卒業までで経験した恋愛について話していきます。
サッカー部の超モテてた先輩と付き合った、同じクラスの男子に告白されて付き合ったけど1週間で別れた、中1のときに中3の先輩と付き合って受験期に構ってもらえなくて別れた、彼氏と明け方まで通話した、彼氏がチャラすぎてお母さんに反対された、etc…
なんなんだこれは。なんなんだこれは?
私はなんの時間を味わわされている?そう思いながらみんなの話を聞いていました。と同時に、こんな想いが湧いてきました。
私って、恋愛に憧れたことないな。この人たちの経験談も、羨ましいとか興味深いとか思えないなぁ。
率直な感想がこれでした。小〜中学時代の私がどんな生活を送っていたかは割愛しますが、確実に言えるのは恋愛とは無縁だったということです。
全然楽しくない。なんだこの部屋。早く寝たい。つらい。つまんない。というか何を話せばいい?
そう考えているうちに、どんどん自分の出番が近づいていきます。
夜のハイなテンションも相まって、みんなは大盛り上がりです。この空気を壊したくない。怖いから。なにより友達を作るチャンス。私はそう思いました。
いよいよ私の出番まであとふたつ。胸がドキドキしてきます。嫌な嫌なドキドキです。
私はこう言いました。
パニックの末に
「ごめん、ちょっと調子悪いから私もう寝るね」
逃げました。
しかし、思いのほかあっさりみんなは逃がしてくれました。それまでの私の行動や言動や相槌が良くなかったのか、少なくともこのとき既にみんなは私に興味を抱いていなかったのだと思います。
「いいよー、おやすみ」
目も合わせてくれないしほちゃんのそんな軽いひとことで、私は湧き上がる部屋にてひとり入眠する権利を得たのでした。
しかし、当然眠れません。
まずもってまだ眠くなっていない時刻でしたし、何より横であんなに大騒ぎしている7人組がいたら眠れるはずもありませんでした。私は賑やかなラジオのリスナーになることにしました。
ところで恋バナとは親交の浅い面子でも盛り上がるものなのですね。これが私にとっては驚きだったのです。
ここで再び、私にはある考えが浮かんできました。
恋愛って、友達を作るために必要不可欠な話題なのかもしれない。人との距離をぐっと縮められる武器なのかもしれない。要するに、この場において私にだけは武器がない。
こんな感じだったと思います。
今思えばそんな、武器なんて大層なものではないと分かるのですがね。
ちなみに、私が狸寝入りを決め込んでしばらくしてから枕投げ大会が始まり、私の頭に誰かが投げた強めの一発が直撃するというおまけの地獄が発生しました。あの瞬間だけ、部屋が冷え込みました。
地獄の後日談
この合宿の夜で他の人の話に笑えず、キャーキャー言えず、反応が薄かった私はクラスで浮きまくりました。しほちゃんに目をつけられてしまったのです。
もちろん、クラスの男子で誰がかっこいいとか、そういう話題にもついていけませんでした。周りはその手の話題で盛り上がっていたのに。
どうにか友達を作ろうと努力もしましたが無理でした。高校1年生の間、授業で指されない限り家の外で口を開かないなんて日が連続することはよくありました。
5月、数学の授業で私だけ予習をしてきていたら先生に褒められたのに、後ろの方からしほちゃんの声で「暇すぎでしょ」と聞こえてきたこともありました。
高校生活は恋愛未経験者で興味もない奴には厳しい。高校ってそういう場所なんだ。
そう思いました。
クラス全員分のお菓子を作ってきた子が、私の席だけ避けて配って回っていたバレンタインが懐かしいです。今となってもいい思い出でもなんでもありません。
しかし、進級して2年生になったら仲良しの友達が3人もできて感動しました。急速に学校で喋る時間が長くなったので、のど飴が必携になるほどの劇的な変化でした。
遠足が2年生の、かつ4人組で行くイベントだったのも本当に良かったです。
その中の2年生でできた友達の1人には、こう言われました。
「えっ、秒針ってあのクラスだったの?!あそこ、めちゃくちゃ恋愛に興味ある人ばっかり集まってたイメージなんだけど!」
はい。つまりはそういうことです。
お別れのご挨拶
以上、私が恋愛という概念と自分の間に莫大な距離があることを初めて知ったエピソードでした。
なんてことない話だったかもしれませんが、冒頭に書いた通り私にとっては強烈なトラウマで、しほちゃんも未だにトラウマです。
恋愛経験が全てじゃないと知ることができたのは、2年生でのクラス替えで当たりを引いたからだと思います。趣味の話題で会話を楽しめる仲間ができてほんとに良かったです。
私はこの合宿でのことがきっかけで周囲とのギャップに苦しむようになりました。そして大学に入ってから「恋愛 できない」で検索し、アロマンティックやアセクシャルという単語に出会うことになります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。では今回はこの辺で。
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