見出し画像

【絵本】「おおきな木」 シェル・シルヴァスタイン 村上春樹 訳


「それで木はしあわせでした」


「おおきな木」シェル・シルヴァスタイン 村上春樹 訳


村上春樹さんの訳で出版された絵本
「おおきな木」


とてもシンプル、やさしい言葉で
書かれていて、奥の深いお話です。


読んだときの年齢や、状況によっても
感じ方がそれぞれちがうのではないでしょうか。


村上春樹さんはあとがきでこう語っています。


「あなたはこの木に似ているかもしれません。あなたはこの少年に似ているかもしれません。それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。あなたは木であり、また少年であるかもしれません。

あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。それをあえて言葉にする必要もありません。

そのために物語というものがあるのです。物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。」


あるところに大きなりんごの木が
ありました。少年はその木のことが
大好きでした。


毎日、毎日、木に会いに来て
木に登ってりんごを食べたり、
枝にぶらさがってあそんだり、
かくれんぼうをしたり、くたび
れるとこかげで少年はねむりました。


木も少年のことが大好きでした。


木はしあわせでした


木は何も変わらないで、いつも
その場所で、大好きな少年を
待っていました。


しかし


時間は流れ、少年は
変わっていきます。


しだいに少年は、木に
会いに行かなくなりました。


木はひとりぼっちで、
さびしくおもいました。


ある日、少年は木の下に
やってきます。


「いらっしゃい、ぼうや。
わたしにおのぼりなさい。

えだにぶらさがって、
りんごをおたべなさい。

わたしのこかげであそんで、
しあわせにおなりなさい」


少年は

「もう木のぼりをしてあそぶとしじゃないよ」


少年は、お金が欲しいと言いました。


木は「りんごを持って行って、
まちで売りなさい」と言いました。


少年は、そのとおりにします。


木はしあわせになりました


それから少年は、年を重ねて
ゆくごとに、ときどき木に
会いにきました。


そして、木に言うのです。


「住む家が欲しい」


木は、家を建てるための枝をあたえました。


「船に乗って遠くへ行きたい」


木は、船をつくるための幹をあたえました。


ついに


木は、切りかぶだけになってしまいました。





ずいぶん時は流れて、
少年がやってきました。
(といっても、もうおじいさんです)


木は、言います。

「わたしにはもうなにもないの。
あなたにあげられるものが ━」


おじいさんは、「もうなにも
必要とはしない。腰ををおろして
休める静かな場所がほしい、
ずいぶん疲れてしまった。」
と言いました。


「古い切りかぶなら休むには
ぴったりよ。ぼうや、わたし
におすわりなさい」


少年はそこにこしをおろしました。
それで木はしあわせでした



いろんな感じ方があると思います。


親と子


無償の愛


木と少年に流れる時間と
こころの隔たり


むなしさ


村上春樹さんの言葉のように


あなたは木であり、また少年であるかもしれません。あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。


100人いれば、100人の
さまざまな感じ方があるでしょう。


僕はなぜか、自然と人間に
ついて考えてみました。


昔、自然と人間は寄り添って
いました。自然は人間が大好き
で、いっぱい恩恵をあたえて
くれました。


人間は、自然の恩恵に
甘えてしまいました。


自然や木は、人間の欲望が
理解できなかったんじゃ
ないでしょうか。


つぎからつぎに、大きく
なる人間の欲望というものを。


いつか人は、この少年の
ように感じるときがくる
のかもしれません。


「ぼくはもう、とくになにも
ひつようとはしない こしをを
おろしてやすめる、しずかな
ばしょがあればそれでいいんだ。
ずいぶんつかれてしまった。」



【出典】


「おおきな木」シェル・シルヴァスタイン 村上春樹 訳 あすなろ書房


この記事が参加している募集

読書感想文

いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。