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理想の体験とのギャップを探る質問

先日、起業して最初のプロダクトの魅力が想定するユーザーに合っているかどうかを判断し、利用継続する状態に高めていくプロセスについて書きました。

継続しない場合の各分岐の図にNPSでいうとどれくらいかを付記していますが、今日はそんなユーザーに質問すると理想とのギャップが見える質問について書こうと思います。

このサービスがなくなったらどう思いますか?

「もし、このサービスを使えなくなったらどう思いますか?」という質問をすることで、理想の体験とのギャップを探ることができます。

選択肢には「非常に困る」「少し困る」「全く困らない」を用意して、現状の体験がどれに当たるかを答えてもらい、その理由を聞くことで、「非常に困る」に達するまでのギャップを探ることができます。

下記の記事ではメール高速化アプリのSuperhumanの事例が書かれています。

SuperhumanのCEOは「非常に残念」「少し残念」「残念ではない」の3つのなかで「非常に残念」と回答するユーザーの比率が毎週40%以上になったら、それは何らかのシグナルである、と解釈しているようです。達成目標を定めているところがとても参考になると思いました。

この手法、この記事を書くときに改めて調べたのですが、The Sean Ellis Testというみたいです。

細かいですが、自分が行う場合の質問の文面はSuperhumanやSean Ellis Testの原型と少し変えて、「非常に困る」「少し困る」「全く困らない」にしています。

「残念」だとコンセプトに共感していたり、応援してくれている人の感情も含まれてしまい、プロダクトが提供する価値が当たっているかを判断する上で、データが濁ると考えるからです。その辺りの質問の微調整は各自で行うのがよさそうです。

(私は応援や共感、興味本位など課題の当事者でないユーザーは、PSF/PMFを測る上でのデータとして省いた方がいいという考えを持っています)

このサービスを家族や親しい友人に勧めたいかどうかを10段階で教えてください

これは「なくなったら困りますか?」とも似てるのですが、親しい人に勧めたいかどうかを考えてもらうことで、その人への体験の満足度を正確に測ることができることに加えて、それ以降の拡大可能性も探ることができる質問として優れていると思います。NPSともいいます。

1を全く勧めたくない、10をぜひ勧めたい、としてどの数字に位置するかを答えてもらいます。

実際の質問の意図は「なくなったら困りますか?」と同じでソリューションフィットを確かめるものだと思いますが、勧めるのはちょっと...という答えがけっこう得られるので、シェアやリファラルをグロースのエンジンにしているサービスの場合はかなり有効な質問だと思います。

数を多くこなし、解釈は柔軟に行う

インタビューのような訂正的な調査は、お世辞をいったり、正しい回答を得られなかったり、そもそも課題の当事者ではないが、当事者のふりをしていたり、難しいところがたくさんあります。

それぞれの回答を真に受けるのではなく、

・この人は課題の当事者で今フォーカスするべき存在なのか

・本心でそれを言っているか、行動と矛盾しているところはないか

などを気をつける必要があります。

そのためにはサンプル数を増やしデータのブレを防ぐのと、たくさん数をこなしてインタビューの経験値(これは一般的なものに加えて、そのサービスでの経験値も含む)を上げていく必要があると思います。

また、インタビュアーの存在を無視して、なるべく率直にネガティブなことを教えてもらうように念を押しましょう。インタビューの途中でも仕草や表情で、気を使っているように感じたら正直な発言を促すのが大事です。

準備はデータを見て行おう

基本的に発言よりも行動の方が信頼できるので、事前にデータを見て質問を設計したり、まだプロトタイプの段階なら発話法によるユーザーテストを行ってから振り返るようにしましょう。

インタビューはデータ分析からだけではない、そのユーザーの深い課題や背景を知るチャンスなので、定量と定性をうまく組み合わせながら行うのが大切です。

ギャップの探り方

たぶん初期のサービスでいきなり満点の回答を得られるということはないので、基本的に回答された選択肢と、満点の回答との間にある理由を探りましょう。

理想は下記の記事にあるように、直接的に「なぜ満点にならなかったのか、どうなったら満点になるのか」と聞くよりも、あらゆる角度からWhy以外の4W1Hを駆使するなどして聞いていくのがいいと思います。

直接的になぜと尋ねることは相手に強制的に論理説明を強いることにもなります。人間の行動の95%は無意識によるものと科学的実証もあるように、実際には全ての行動に明確な意志と理由が伴っているわけではありません。そこでなぜ、という論理説明を求められるとその場で回答をつくりあげる、ということになるおそれがあります。(UXデザインに必要なユーザーインタビューの方法と質問設計

なぜと聞きまくる危険性は上記の引用を読んでください。

どういうサービスになったら満点になるのか?と質問はユーザーに欲しいものを聞いている状態に近いので、微妙かなと思います。

もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。(ヘンリー・フォード)

あくまでも具体的に感じた箇所、感情をファクトベースに近い形で掘り出して、whyは開発者が洞察するようにしましょう。

ギャップを埋めていく

データが得られたら開発に生かしていきましょう。NPSでいう5~8くらいまでの回答が得られているのであれば、コアバリューのブラッシュアップと、利用ハードルを下げる開発を行っていけば9~10に近づいていくと思います。

1サンプルで改善内容を決めるのは微妙なので、必ず複数のサンプルが得られてからにしてください。

インタビュードキュメントは属性がわかるようにする

ドキュメントはそのユーザーの属性がわかるようにしておきましょう。最低「課題の当事者」「そうでない人」とかでもいいと思います。

フォーカスする属性を明確にして、その属性の課題解決の優先順位をあげるため。また、今注力すべきでない人の声をむやみに取り入れないためです。

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