【イベントレポ】レシピには、セオリーを【noteクリエイターフェス】
ロジックを分解して、組み合わせることで、新しいものを生み出す。
こんばんは!
今日は、わたしの大好きな南インド料理店・エリックサウスの総料理長・稲田俊輔さんのお話を聞きたくて。noteクリエイターフェスティバルのオンラインイベントに参加しました。
「「エリックサウス」稲田俊輔さんのレシピのつくりかた」イベントレポ(自主制作)
現在、最愛の外食カレー(個人的前置き)
エリックサウスに出会って、カレーの概念が変わった、といっても過言ではありません。エリックサウスができるまで、日本にはあまりなかった、南インドの「ミールス」と呼ばれるカレーのスタイル。
見た目の真新しさと、程よく効いたスパイス。ギー(バター)たっぷりで胃もたれしがちなインド・ネパールカレーより、あっさり。そして、ナンではなく、ごはんで食べるスタイルに、すっかりハマりました。
ひとりで、はたまた、友だちや仲間といっしょに、本場のおいしいカレーをよくいただいています。
自分でも「好きすぎてやばい」って思ったのは、このとき。
↓ ↓ ↓
一日2回食べてる。
昼は、岐阜市役所内にある、「市役所大食堂」で。こちらは、エリックサウスと同じ会社が運営している食堂です。
エリックサウスとほぼ同じカレーが、リーズナブルにいただけます。穴場。
ライブ終わりの夜は、お友だちと。JR岐阜駅直結のエリックサウスへ直行。
お昼にカレーを食べているわたしを見て、いっしょにいた友だちが「食べてみたい!」と、それはもうノリノリで。勢いのままラストオーダー間際にお店へ突入したのを、よく覚えています。
一日2回食べても(ライブで消費したから、かもだけど)胃もたれせずにおいしくいただける。最高。
大好きなカレーは、どんなふうに作られているんだろう。noteクリエイターフェスの案内を見て、イベントを即、予約していました。
話題になった、セブンイレブンのビリヤニ
2023年7月〜8月に、コンビニエンスストア・セブンイレブンで開催されていた「ニッポンの熱い夏!カレーの祭典」。
この催事で、エリックサウス監修のビリヤニが販売されていました。
例に漏れず(?)わたしも購入しておりました。
これ以前にも、同監修のビリヤニが発売され、話題になりました。が、今夏のそれとは異なるものでした。
「最初はトレーサビリティ(流通)の問題で、お店と同じバスマティライスを使用することができなかった」と語る、稲田さん。地域を絞り、試験販売を繰り返しながら、今夏のビリヤニに至ったのです。
このビリヤニの発売当初、X(旧Twitter)にはさまざまな反響がありました。これらの反響を大きく分けると、二つの層に分けることができます。
ビリヤニを初めて口にした「初心者寄り」の感想
ビリヤニを食べ慣れている「マニア寄り」の感想
販売にあたり、初心者寄りの味で作るのか。それとも、マニア寄りの味で作るのか。「店で求められるニーズは経験でわかっても、コンビニの市場や、家庭用のレシピはそれぞれの落としどころ、求められる味は異なる」と語る稲田さん。このニーズを想像しながら、自分が作りたいものをすり合わせていくことで、あのビリヤニが生まれたのです。
すごいのは、セブンイレブンの考えている「落としどころ」。どのようなものなのか、具体的なものは語られませんでした。
が、初心者層に対しても、マニア層に対しても受け入れられる「真ん中の落としどころ」があったから、これらのバリエーション豊かな感想が生まれた。そう考えると、セブンイレブンのマーケティング戦略が気になります……。
日本人の好みに合わせてはいけない
エリックサウスのレシピの大前提。それは
現地の味を持ってくること。そして、日本人の好みに合わせてはいけない、ということ。
現地料理は、どれもおいしい。でも、ランダムに持ち込んでも、日本人がすべて「おいしい」と言うとは限らない。現地料理のさまざまなバリエーションの中から、日本人の味に合うものを徹底的に探し、合うものがなければ、採用しない。
この徹底した姿勢が、エリックサウスのおいしさの秘密なのだと痛感しました。たとえるなら、現地の料理をアレンジする編曲家ではなく「合う料理をセレクトするDJのイメージ」。
レシピはセオリーの組み合わせ
稲田さんはレシピの作成について、こう語られました。
「現地のレシピをコピーするというより、組み合わせてコピーしている」
たとえば、スパイスの黄金比があり、そこにセオリーAとセオリーBを組み合わせると、チキンカレーになる。その黄金比にセオリーAとセオリーCを組み合わせたら、マトンカレーに。黄金比×セオリーCとセオリーDなら、フィッシュカレーに、といった感じです。
こちらの本を持っているのですが
確かに、スパイスの黄金比、それに、玉ねぎやトマトの量が決められていました。この基本に、さまざまな具材やスパイスを追加することで、バリエーションが豊かに拡がります。
それぞれのセオリー、もっというなら、ブロックやパーツを理解しているから組み合わせることもできるし、組み合わせてはいけないものもわかる。
料理共通のロジック×バリエーションで、レシピが構成されていました。
レシピ本のからくり
先に述べた黄金比は、あくまで裏設定という話が、興味深いものでした。
基本のセオリーどおりのレシピ
セオリーどおりのレシピから派生したレシピ
セオリーに収まらない、例外的なレシピ
本の最後に「基本のセオリー」という裏設定をネタばらし
つまり、基本のセオリーさえ押さえておけば、バリエーションを拡げられるということを、最後に持っていく。構成が、上手い。
「手を動かしてさまざまなものを作ったうえで、自分がやっていた料理は理論化できる」という結論に持っていくのが、鮮やかです。
バリエーションをつける意味
「基本のセオリーは好き嫌いが分かれる」と、稲田さんは『ミニマル料理』を例に挙げていました。
自分からおいしさを探しに行く人であれば、どんな味でも抵抗が少ないけれど、基本のセオリーで作った料理は、食に関心の薄い人にとっては、いまいちかもしれない。基本の「なすの醤油煮」から派生した「なすのめんつゆ煮」の方が「間違いない味」でわかりやすく、安心して食べることができる。
稲田さんはそこまで考えてレシピを作っているのか……と、感心しきりでした。
終わりに
視聴者からの質疑応答で、こんな質問がありました。
「ひとり暮らしでも、簡単に作ることのできるレシピはありますか?」
稲田さんの答えは、こう。
「得意パターンをひとつマスターしておくのが良い」
稲田さんが仕事で疲れ果てて帰宅したとき。何はなくとも、パスタ用の湯を沸かすところから、料理を始めていたんだそうです。
どんなに疲れて帰って来ても、これならできる。そのパターンを作っておけば、その派生で料理を作ることができる、と。
わたしは料理を作ること自体は好きだけど、さまざまなレシピのお世話になっています。ありがたいことに、家族からは「おいしい」と褒めてもらっているけれど、その「おいしい」の理論は、まだまだわからない。
得意パターンを何かひとつ覚えて、そこから作ることのできるメニューを、増やしていけたら。毎日の食卓を、バリエーション豊かなものにできそうな気がします。
まだまだレシピのお世話になります。「理論がわかると、料理がより楽しくなる」を実感できた時間、でした。
今日も読んでいただき、ありがとうございます!
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