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サッカーのある風景とは


大沼義彦・甲斐健人/編著
『サッカーのある風景〜場と開発、人と移動の社会学〜』
晃洋書房(2019)

サッカー好きの方ならご存知だとは思いますが、Jクラブの中でも地域貢献度が高く、日本の中では最もサッカー文化が根付いている地域に数えられるアルビレックス新潟と新潟県。

そんなアルビレックス新潟のホームスタジアムといえば、『ビッグスワン 』ですね。新潟市南部、鳥屋野潟(とやのがた)の新潟県スポーツ公園内にあり、日本代表などの国際試合も開催される大きなスタジアムです。

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本書では、2002年の日韓W杯の会場としても知られる『ビッグスワン』が建設されるまでの経緯や、その背景にある新潟県が抱えていた問題、アルビレックス新潟が果たした役割など、

スタジアム建設を機に、新潟にサッカーが根付くまでの過程が細かく述べられています。そこには、サッカーを地域に根付かせようとした人たちの信念と、したたかな戦略が見えてきます。


その一つの戦略として、新潟市の東隣の町、聖籠町にある「JAPANサッカーカレッジ」の存在が、この本の内容を大きく支えています。

4月から「JAPANサッカーカレッジ」に進学する自身にとって、偶然にも入学する前にこの本に出会えたことはとても良かったと感じています。


そして本書の後半では、アルビレックス新潟がシンガポールのプロリーグに参入したこと、その役割と成果も述べられています。さらには、シンガポールに「プロサッカー選手」としての活路を見出す日本人プレイヤーの現実が描かれています。

日本よりもプロサッカー選手の社会的地位が圧倒的に低いシンガポールのプロリーグの現状と、そんなシンガポールで「プロサッカー選手」としてプレーすることを選んだ選手たち(あくまで本書で紹介されていた選手たち)の生活は、僕の想像とは全く違うものでした。

この本によると、2014シーズンにシンガポールリーグでプレーした日本人選手の42.9%が、シンガポールに来る直前のカテゴリーは大学リーグです。そこには、シンガポールで「プロサッカー選手」になるハードルが日本よりも低いことを示す一方で、日本ではJ3やJFL、場合によってはJ2ですら「プロサッカー選手」として満足な生活ができないという現実が見え隠れします。

ドイツでは4部の選手も「プロサッカー選手」の収入だけで生活できることを考えると、これから日本サッカー界が解決しなければいけない問題を、本書では暗に提示しています。



この本を読み終えて、
改めて自分の無知を思い知らされる一冊でした。

「サッカーを仕事にしたい」
「サッカー文化を地域に根付かせたい」
「プロサッカー選手として成功する」

この本はこんな想いを持っている人に是非オススメします。

内容は学問的な要素が強く、少し読みづらい部分もありますが、読み応えのある本だと感じました。

(卒論の参考図書としても使わせてもらいました。)

もちろんこの本だけで全てを知ったつもりにならず、引き続き勉強を続けます。




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