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フードエッセイ『アイスクリームが溶けぬ前に』 #14 さくらんぼ(浜松)


ナポリタン、オムライス、サンドイッチ、ホットケーキ。

純喫茶で食べるこれら四種の料理は、懐かしさと安心感がある。


浜松の中心部にある喫茶「さくらんぼ」は、外観がザ・純喫茶
扉の額に可愛らしいさくらんぼの絵が描いてあるのが特徴で、外にメニューが書いてあるのもお客さんファーストだ。


カウンター席5席、テーブル席2つ。
少し狭目の店内からは、いろんな世代の会話が飛び交う。

結婚式に参加してきたのだろう女性2人組は、お店に掲示されているメニュー表が見えずらいのか(メニューの)写真を撮って注文を決め、今朝何時に起きて髪をセットしたか話し合っているし、入り口側に座っていた4人組は世間話に花を咲かせている。話し相手のいない自分は、店主のおばあさんがおしゃべり相手だ。


「オムライスが食べれる喫茶店を教えてほしい」という要望に応えてくれた友人からの紹介でさくらんぼにたどり着いたこともあり、オムライスとアイスコーヒーを注文。



ふと後ろを見ると、今どき珍しいコーヒーチケット
よく見ると、静岡人では知らない人がいないローカルタレント・久保 ひとみさんのチケットも。テレビの人という印象が強かったけど、「テレビに出始める前はよく来てたんだよ」とおばあさん。いろんな人に愛されてるんだなと思うと、こういう店こそなくなってほしくないという気持ちが高まる。

コーヒーチケットの行列。

この少し厚紙のコーヒーチケットが仕入れ先から入手できなくなったため、
コーヒーチケットを購入することはもう出来ないのだそう(おばあさん談)


おばあさん直筆のポップも可愛らしい。
風邪予防のレモネードに、コーヒーの友。クラッカーが微妙に違っているのも気になっちゃう。

コーヒーの友のバリエーションが豊富


UCCのビッグプレゼント缶も、さくらんぼが3つになっているのも味があって、料理を待っている間、いろんなところに目が行って、まるでプチ探検だ。

レモネードは「生」っていうのがミソなのかな。


さて、お待ちかねのオムライスさんの入場。


可愛らしいニコちゃんマークに、右上の紅生姜、真上のきゅうりにマヨネーズ、どこか顔を彷彿とさせる楽しいオムライスだ。

和風のお皿に洋食のオムライスっていうのも、ありだ。


食べる前から楽しいオムライス、しっかり焼いたタイプの卵に、
炒めている最中に白鶴のまる(料理酒)を入れているのは確認できたケチャップライス。食べていくと、胡椒を感じつつ、ケチャップだけだとこんなに染み込まないぞってくらいケチャップライスが水っぽくなく、しっかり味がついていてとっても美味しかった。このオムライス、お腹がいっぱいのデザート別腹みたいな感じでも食べれちゃう。


食べ進めていると、おばあさんからの嬉しいお裾分けが。

オレンジがやってきた。
オムライスの色といいマッチだわ。


美味しすぎてあっという間に完食してしまったから、
その分、アイスコーヒーをすこーしずついただく。

あったかい部屋でアイスを食べるように、暖房が効いた店内だからこそ喉を潤したい。そんな人が多いみたいで、アイス系の飲み物を頼む人は多いんだそう。

きれいなコントラストのアイスコーヒー。


純喫茶好きなんですと話しかけると、店主のおばあさんは「きれい目なお店が好きなんじゃないの?」と答えてきた。


もちろん、きれい目でリノベーションが施された喫茶店もそこの良さがあると思う。でも、長く地域の中で愛されたお店は、そこでしか味えないものがある。自分たちが生きているうちに出会うことのできない、昔から受け継がれてきた文化のようなもの。サイホンコーヒーも、純喫茶で食べるナポリタンやオムライスも、手書きでちょっと抜けのあるポップも、花瓶に生けてあるお花も、おばあさんがこれまで作られてきた『さくらんぼ』というお店の文化を味わい、共有させてもらっているのだ。

サイホンコーヒーと可愛らしい人形が並んでいる姿は、
歌劇団のショーがはじまるかのような雰囲気さえ漂う。

絵も人形もイラスト、そしてお花。
暖色系の照明に照らされたそれぞれから、目が離せなかった。


純喫茶のオムライスが食べたいという思いで今回はお邪魔したけれど、
次は、喫茶「さくらんぼ」に行きたいと言うだろう。また、さくらんぼに行かないと味わえない文化と、味と、おばあさんに会いに。


ごちそうさまでした。


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