Casper/マーケティングの天才@D2C
この記事ではD2Cユニコーンとしてとしてアメリカで初上場した「Casper」というマットレス/ベッドのD2Cをマーケ観点で分析します。ミレニアル向けのマーケティングとしてはかなり好事例なので、ぜひ読んでみてください。
Casperの何がすごいか?
2014年創業、初年度20億、5年間で378億売上(2019年は450億見込み)
米国のベッド&マットレス業界の市場規模は約14.5億ドル(約1.7兆円)なので市場シェアとしては、2.6%。日本のインテリア業界でいうと、インテリア市場が1.7兆円、大塚家具が580億円、3.2%なので、存在感としては日本の大塚家具の8割位?市場に対して大きなインパクトを持っていることがわかります。
なぜここまで成長したか?
1.市場選択
2.商品
3.マーケティング
この3つが合わさり、ここまでの成長が実現できたと考えています。それぞれについて説明します。
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1.市場選択
ここは端的に言ってしまえば、レガシー&市場規模大きいところを狙えってことですね。レガシーな企業が同じような商品をいろんな店舗で売っており、差別化要素は従来なかった、でも市場規模は大きかったということです。
10年ほど前、マッキンゼーの戦略研究グループで世界規模のスタディが行われた。対象は世界の主要企業3000社以上。テーマは「事業の成長を決める本当の要因は何か」という話であった。選ばれた要素は4つ、戦略、実行力、リーダー、そして市場だった。 この検討の結果は驚くべきものであった。「事業成長の7割以上が単一のファクター、市場によって説明できる」
引用元:シン・ニホン
2.商品
じゃあ、その業界に対してどういう顧客の課題解決をするのか?というところですがCasperは私が見るに「配送」/「寝心地」というところがあります。配送については下記の動画を見てもらうのがわかりやすいかと。
従来の商品
これは「マットレスを買う」というのは、まじでめんどくさいですよね?20階とかに住んでたら地獄・・・w
Casperのマットレス
もちろん、商品で「配送」だけでなく、「寝心地」についてもこだわって商品開発しているのですが、これは口コミ/100日間返金保証サービスによって補間されているところが大きく(結論寝てみないと伝わらない)ので、初年度20億というクイックな立ち上がりについては「配送」という確固たるメリットが大きかったのではないか、と推測します。
(=それだけ、アメリカにおけるマットレスの配送上の手間、という「ペイン」が大きかったということを意味しています。)
3.マーケティング
a.結果
ブランドへの投資額/結果がすごいです。S-1によると以下のようにあります。2016年1月1日から2019年9月30日までに445億円がマーケティングに投資され、データドリブンなマーケティング戦略を通じてブランドを高めました。
・31%のブランド認知度
・約80%の肯定的なブランド感情
・60のNPS。
5年間で約1億人に認知させ、NPS60というのは、認知率/質ともに非常に高いと言えるでしょう。
※参考日本のNPSランキング →NPS60がいかにすごいか。。
b.マーケティング戦略
消費者はオンラインで調査し、店舗で製品をテストし、友人に相談し、顧客サービスチームと話をします。なので、その全てに貼る、というのが彼らの戦略のベースにあります。
なかでも貢献しているのは?
Casperの集客(by similarweb)
→ECサイトへの集客はSEOが半分くらい締めていることがわかります。
b.-2 貢献度の高いSEOマーケティングについて
Casperが優れているのは、自社の見込み顧客を「快適な生活を送りたい人々」と広く定義し、そこからニーズを段階に分け、それに応じたメディア/コンテンツを作成したことです。各メディアには200程度の記事がありますが、8割のアクセスは上位20の記事から、ということです。一度そのポジションをとれば美味しい、ということでしょう。また、検索上位にするため、edu.comからのリンク(=大学からのリンク)をとるため、産学連携で研究したり、学割を用意したり、ということまでやっているようです。
c.卓越したクリエイティブ
彼らのマーケティングを考える上で、ロジカルな戦略はもちろん、クリエイティブも本当に天才的です。下記はCasper Puzzleという一連の電車広告ですが、全く広告とは思えないですよね。広告が嫌いなミレニアル向けに「広告らしくない」クリエイティブを使い、「一度サイトに来させる」という観点で大きく貢献しています。
Casper Puzzle
Mbile napと呼ばれる体験型の車も出してたり。これもクリエイティブが面白いです。
車広告(MOBILE NAP)
d.マーケティングチャネル
彼らは、ミレニアル層にターゲットを絞っており、広告投下もデジタルと公共交通機関がメイン、だそうです。日本で、ミレニアルにマーケするなら公共交通機関、という認知はあんまない気がするので、狙い目かもしれません。。
e.オムニチャネルにも成功
S-1によると
小売店をオープンした都市での消費者へのECは、キャスパー小売店のない都市よりも平均で100%以上速く成長しました。2017年から2019年9月30日まで、eコマースチャネルを拡大しながら、「最初の購入で収益性の高い」eコマース経済を維持しました。
ということで、実店舗とECが食い合いではなく、
消費者はオンラインで調査し、店舗で製品をテストし、友人に相談し、顧客サービスチームと話をする
というカスタマージャーに通りの行動をしていることの裏付けになっている点が素晴らしいですね。彼らのカスタマージャーニー上、カスタマーサポートも非常に重要しされており、相談すると普通のテンプレ回答ではなく、親身になって回答してくれる、それ自体営業部隊のようなカスタマーサポートであり、平日9-21時、土日10-19時営業ということからも彼らの考える顧客のカスタマージャーニーに沿ってきちんと投資していることがわかります。
f.ECサイトエクセレンス
CasperのECサイトはCasperらしいデザイン、色使い、イラスト、文字(多すぎない、カジュアルなトンマナ)が盛り込まれていて、世界観の伝達、CVRともに素晴らしいサイトです。
個人的にはカートから購入doneにいたるまでのステップに感動した!
1ページ目:メアドのみ
2ページ目:氏名→アドレス入れるとレコメンドで90%入る、電話番号
3ページ目:ペイパル(or 月額購入)
でほぼ入力項目なく、購入できることに非常に驚きました。(ECの買い物ってこんなに楽だっけ・・・?って思うくらい)
・・・さらに1ページ目をメアドのみにすることで、会員登録が終わっていないユーザにもカゴ落ちを送れる、というメリットがあるんですよねー
ぬかりなく、来ました。
カゴ落ちも普通のかご落ちではなく、イケてますね。カゴ落ちでもブランディングしているのは新しい。。。。
以上、Casperはマーケティング企業としては一貫した戦略/かつ全顧客接点を顧客のカスタマージャーニーに則ってきちんと運営しており、素晴らしいマーケティング企業と言えるでしょう。
資本市場からの評価とその理由
彼らは上場前、11億ドルをつけていましたがIPO後、5.75億ドルに落としてしまいました、理由としては市場環境がレッドオーシャン化※すでに存在していたレガシー企業のTempur、Simmons、SleepNumberなどに加え、Purpleなどの後追いベンチャー、Amazon&Walmartによるプライベートブランドのマットレス販売により想定より市場環境が悪くなったこと、売上も120%と、140-150%伸びていたときからすると鈍化していること、が挙げれるでしょう。
自分がCMOなら
Casper自身、今チャレンジしている領域ですが、クロスセル/サービス化をいかに進めるか?ということをやっていくしかないでしょう。彼ら自身の2回以上購入率は16%ということで、まだまだ伸びしろは大きそうですね。値段で競争すると利益率下がるので、自社にデータ*AIを利用して、、、というお決まりの流れになるでしょう。その領域は、
「いい睡眠」を五感で考えると
・触覚:シーツ/ブランケット/枕(やってる)
・視覚:ライト(最近出た)/アイマスク(まだ)
・聴覚:スマートスピーカー(ありがち)/いびきグッズ(まだ)
・嗅覚:アロマオイルとか?
・味覚:牛乳のむといい説ありましたね 笑
個人的には嗅覚あたりは、どういう成分をどれくらいの量がいいのか?またそれを分泌する機械は何が良いのか?という観点で見ると、まだまだ未開拓なので面白いのでは?と思いました。