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要約「暇と退屈の倫理学」国分功一郎|「暇と退屈」との向き合い方

1冊目は迷いに迷って「暇と退屈の倫理学」を選書。

「暇と退屈との向き合い方」について考えさせてくれる一冊です。


■本書のまとめ

  • 「暇」は客観的事実、「退屈」は解釈

  • しかし現代では「暇=退屈」であり、退屈は苦しみ(”この時間に何かできた”という考えに襲われる。)

  • そして「退屈」という苦しみから逃れるために、別の苦しみを求める

  • 大切なのは「暇」と「気晴らし」を心から楽しむこと


本書の内容を見ていきましょう。


【暇と退屈の定義】本来「暇」とは人々が求めていたもの

冒頭で軽く触れましたが、「暇と退屈の定義」から紹介していきます。

暇とは…

  • 客観的な状態。することのない、する必要のない時間。

  • つまり「余裕のある状態」

中世ヨーロッパでは、ティータイムや芸術鑑賞、高価な装飾品を飾るなど、余裕のある人は憧れの対象で、上層階級の人々は暇を見せびらかせていました。


一方「退屈」とは

  • 主観的状態

  • つまり「暇に苦しんでいる状態」


人は「暇」を手に入れて「退屈」するようになった

人々は「暇」を求めて働き、新しい製品・サービスを開発してきました。

そうした努力が実り、人々は「暇」を手に入れたものの「暇」の扱い方がわからず、「退屈」してしまっているのです。


【浪費と消費】退屈を消費で紛らわさない

人は「退屈」を紛らわせるために「浪費」や「消費」をします。

浪費とは…

  • 必要以上に手に入れること

  • 持てる数に上限があるので、いつかとまる。満足する

例えば、美味しいご飯を食べる、良い家具家電を買う、などが当てはまりますね。


一方、消費とは…

  • 意味を消費すること

  • どれだけやっても満足もしない、とまらない。

例をあげると、友達に自慢するため話題のお店に行く、目的もなくYouTubeを見続ける、などでしょうか。


本の中では「労働すら消費」「余暇すら消費」と指摘されています。
生きがいを消費するために働き、余暇を過ごせていると証明するために余暇を過ごす。

こうした消費は満足を知りません。だからこそ「浪費」を大切にするべきだと説かれています。

【本書の最重要ポイント】退屈には3種類ある

ここが本書の最重要ポイントです。

退屈には3種類あります。


第一形式:何かが自分を「退屈」に引きずりこむ

例えば「電車の待ち時間」
想像してみてください。次の電車は1時間後、スマホは充電切れ、駅周辺には何もない。とにかくすることがない。

この退屈が、第一形式です。


この時に人は、「この時間に何かできたはずだ」と、時間の喪失を恐れます。
本書では「強迫観念に取り憑かれた狂気の状態」と指摘されています。


第二形式:退屈と気晴らしが混ざった状態

第二形式はやや難解ですが、人生は第二形式で満ちています。

例えをあげると

  • テレビやYouTubeを眺める

  • 用もなく買い物に行く

  • 小説を読む

  • 親戚とご飯を食べる

どれも一見「退屈」には思えませんし、楽しそうな情景が目に浮かびます。

でも「そういえばあの時、何してたんだろう?」と思うことはありませんか?楽しかったけど、何か空虚だったような感覚。


これが第二形式です。

本書の結論を先出すると、「この第二形式を受け入れる」ことですが、これが案外難しい。
その理由が、次に紹介する「第三形式」に人は陥りやすいからです。


第三形式:気晴らしが不可能な退屈

第三形式は、最も深い退屈。もはや気晴らしではどうにもならない状態のことを指します。

例えば、
日曜日の午後、大都会の大通りを歩きながら、ふと「なんとなく退屈だ」と感じる瞬間。

この状態になっては、気晴らしをしても「退屈」は残り続けるでしょう。


人は第三形式から逃れるために「決断しようとする」

人は第三形式を最も恐れており、自ら高い目標を掲げたり、仕事を精一杯頑張ったりします。

しかしそれは第一形式の退屈につながるだけなのです。「この時間に何かできたはずだ」と思う機会が増えていきます。


ではどうすればいいのか?本書の結論を紹介していきます。


【本書の結論】退屈とどう向き合えば良いか?

冒頭から伝えているように本書の結論は「第二形式を受け入れる」ことです。

  • 退屈と気晴らしが入り混じった「第二形式」を受け入れる

  • 時間や意味を「消費」するのではなく、受け入れるという意味の「浪費」をする


と言っても難しい…。社会には「決断」させるトラップや、時間を「消費」させるトラップが多い…。

職場では「キャリアプラン」「事業計画」「個人目標」などあらゆる決断を求められる。
SNSに目を配ると、友人の楽しそうな投稿や、いいねに溢れている。
スマホのホーム画面を見ると、思わずYouTubeを開いてしまう。


私の理想像は「自分の”好き”がたくさんある人になる」ことです。

本当に好きなことは「苦手でもいい」「褒められなくていい」ものなんじゃないかと、本書を読みながら思いました。


これからも節目節目に本書を手に取り、生き方を見つめ直していきたいと思います。


ここまでお読みいただいた方も、ぜひ本書を読んでみてください。人生を楽しむヒントをくれると思いますよ。



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