さいさんの地方創生 note【多極分散へ。間違いだらけの政策とこれからを本気で考える⑤「日本における社会起業リスクとは?」】
株式会社刀がジャングリアのオープンをきっかけに沖縄をハワイを超える世界最高のリゾートへというヴィジョンを示しています。10年後、20年後にその夢が実現していき、沖縄が経済面でも日本の最上位に位置するようなポジションになっていった時、この国にはどのような変化が起こるでしょうか?
手取り経済も、幸福度も、子を産み育てる環境としても、日本で最高のエリアになり、国際的にもハワイに比肩する高いバランスを沖縄が獲得するのであれば、そこで暮らし、働きたい!という人口移動が起こるのは疑いない。僕はそう確信しています。
近年の Well-being 研究でも「バランス」というテーマで物心両面のバランスに注目が集まっています。年収が700万~800万を超えてくると幸福度が上がらなくなり、むしろ社会的貢献に代表される「つながり」が幸福度のカギとなること等はその代表格とも言えるでしょう。
総理の愛を正しい方向へ導くためには、こうした正しい数字、エビデンスにのっとった政策議論が欠かせません。地方はいつも不幸という感情的かつ一方的で古い思い込みによる誤ったインプットで政策を進めてしまえば、当然、誤ったアウトプットにならざるをえないわけです。
とした前回の続きです。これまでのエビデンスから、東京にいる若者の手取りが日本全自治体で最低。つまり東京こそ若者貧困の中心地であることや地方でもそれなりに稼げている現状などを見てきました。そのうえで今回は、最近ブームのようになってきた社会起業や社会起業家と呼ばれる人々の存在と今のこの国の環境背景を考えていきたいと思います。
☆意識高い系の巣窟化??
僕自身が東京時代(2013年頃)からETIC.の地域イノベーターアカデミーに参加し、今やインパクト上場を果たした(株)雨風太陽の高橋博之さんらのフロンティア達との関係性をここまで育み、自身も長野県伊那市へと移住して10年を超え、小さい会社ながら7期目を迎えている現在でもあります。
そんなローカルに現場を移してきた自分からは、昨今の「社会起業家」という言葉にどうしても「ブーム」のような空気感を感じてしまうところがあるわけです。
例えば顕著な一例をあげると、大学生から「起業したいんです」という相談や言葉を聞くことが年々増えてきたことですね。この瞬間に危険な香りを感じませんか?
これまでのフロンティア達は「目的」を達成するために「起業」をしてきたわけです。先の高橋さんの「都市と地方をかきまぜる」のコピーとかは出会った頃から不変なわけでして、そこを貫いて、既存の会社ではできないから新しい会社を生み出して、今の状態がある。
しかし、最近のこうした大学生たちは「目的」がまだない。あるいは「言語化」されていないわけです。この「起業家」になれば何かが見つかって、何かが成し遂げられるというマインドセット。これは「手段」が「目的化」した極めて危険な状態なんです。
実際、以前に対応した若い社長さんはその典型的な方でした。会社を起こし資金調達を先にしてしまっていたのですが、踏み出せずに迷って動けないでいる。そんな状況を見かねた友人の方から、自分が連絡を受けて話をしに向かったわけです。
そして、その社長さんがランチミーティングと自分を連れていった場所が都庁の食堂!?でした。稼いでないから調達した資金が減ることにとても怯えていたわけです。そして、そこでの話も何をしたい、何が課題かではなく「人材にこだわりたい」みたいなことばかり繰り返し主張し、自分ではなく誰か救世主のような人材がいれば解決するという世界に逃げ込んでしまっていたのでした。
連絡をくれた方には「時間の無駄。距離をおくべき」と伝え、その社長さんとの二度目はありません。伝え聞くところでは、会社はほどなく消えたそうです。うん(そういえばどこかの国の総理にやりたいことが「人事」とか言ってのけた方がいましたね・)。
☆「キラキラ幻想」より「泥臭いリアル」
そして先日、YELL社のスタートアップを支えてきた篠田さんがこんなポストをされていました。
スタートアップは多産多死を旨としますから、起業を増やそうということは、そこからは倒産(整理)や廃業も多く生まれますよね。レイオフ的なことも。
⚫︎ そういう経営者的 hard things に耐性ある人って、そんなにたくさん存在するんだろうか
⚫︎ 事業が思い描いたように進まず最終的に事業をたたむまでの七転八倒って、もうちょっと軽くできるのか・すべきなのか。
例えば
- 法律面(法的整理、私的整理、それぞれのあり方)
- 標準的な契約(連帯保証をなくしたのは一例。投資契約における上場の努力義務も)
- あと業界や社会の、カルチャー面も。(事業をたたむ経験ストーリーが、成功ストーリーに比べるとほとんど出回ってない)
⚫︎起業するときに、そういうhard things が高い確率で身に降りかかること&対処法を、ちゃんと知っておいたほうが良いのか。
といった指摘をされていました。これは、まさに大きくうなずきながら感じたところです。僕自身も東京時代に池井戸作品のシーンまんまの風景で大手銀行に貸しはがしを受けて、黒字倒産に追い込まれた経験があります。そして、この日本という環境でそこから再挑戦をする為の苦難も幾度となく味わってきました。
そう。起業ってなんであれ hard things(辛く、苦しいこと)なんですよ(どっかの大会社の子会社とか天下りの巣窟とかで、税金対策や補助金の受け入れ先でのほほんと脛かじってるような会社や団体は別だけど)。
何かスキルやマニュアルのようなものを積み重ねて、投資家や補助金を使えば起業家という経営者になれるわけではなくて、本当に七転八倒するような日々の中でもがいて、鍛えられ、磨かれるのが本当の経営者なんですね。
結果として「キラキラ」に見える人の結果を追って、こうしたプロセスのリアルに目を向けていない人が多いのではないか? 日本的な教育に染まり、正解や方法があると思い込んで、机上の学びだけでクリアできるような考え方。現場における hard things 耐性のない若者たちが、なぜかこの「社会起業家」という蜜に惹きつけられ、群がっているように見えたりもするのです。
*続きます