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僕がCallaway Golfで学んだこと<DSPD編>

"Demonstrably Superior & Pleasingly Different"
明らかに優れていてその違いを楽しむことができる

この言葉はイリー・キャロウェイ(以後イリー)のビジネス哲学でもあり、キャロウェイゴルフの全ての事柄に関しても、この考えがベースになっています。そしてキャロウェイゴルフではこの文章の4つの単語の頭文字をとってDSPDとし、会社の基本コンセプトを表す言葉として使っています。

DSPDは製品第一主義と捉えられがちですが、市場で生き延び成功するには、このような考え方が必要だ、ということをイリー独特の方法で表現したものです。

最初、この言葉を聞いたのは1989年1月末、初めてキャロウェイゴルフを取材で訪問した時のことです。
初対面の挨拶をしている時、ビジターバッジを見た瞬間、何かイリーにスイッチが入った感じでした。「ゴルフダイジェスト<チョイス>の記者ですか。非常にクオリティの高いゴルフ雑誌と理解しています。さて、キャロウェイゴルフのことを知りたいのですね。ではお話ししましょう」というや否や現在のキャロウェイゴルフやその製品について、そして、キャロウェイゴルフの将来について、熱く、それでいて理路整然と語り始めたのです。こんなに自社のことを熱く語る人は初めてでした。
その熱が自分の将来を決めたのだ、と思うとその熱量ははんぱないものだということが後になってはっきりと分かったのです。

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熱伝導という科学用語がありますが、熱はその温度が高ければ高いほど伝導のスピードは早く、到達距離は長くなります。イリー・キャロウェイという人の熱量は自分の知る限り最高の温度で、それだけに磁力も発生して多くの人をひきつけてきたのだと思います。

取材中、何回か ”Demonstrably Superior & Pleasingly Different”という言葉が出てきたのです。
その時は何て訳したら良いのか分からなかったのですが、何か強く訴える大事な言葉であることは肌で感じていました。
きっと、自身の強い思い、キャロウェイゴルフとしてのやり方であろうと想像できたのですが、記事では少し違う訳で書きました。

この当時のキャロウェイゴルフは業界でも新規参入企業であり、新製品として発表した<S2H2>という名前のゴルフクラブを発売したばかりの小さなクラブメーカーでしたが、このユニークなデザインのクラブに注目した米国住友商事が住友ゴム工業に日本の代理店としてどうかと打診をして、最終的に契約に至った経緯があります。
日本との代理店契約が成立したと同時にGMから400万ドルという無担保の融資を得ることができ、安定した経営ができるようになったことです。そして、温めていた次の画期的な新製品の開発資金もそれによって得ることができたのです。
そのような時に日本のメディアとしては初めて取材訪問したのです。
日本でも「期待されている」と感じてのことと思います。自然と話に力が入るのも分かりますね。

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この2年後、世界的な大ヒットを成し遂げた<Big Bertha>というドライバーを発売し、翌1992年にはニューヨーク証券取引所に置いて上場を果たしたのです。
ここから世界No.1ゴルフクラブメーカーへと一直線に階段を駆け上がっていくのですが、その根幹にあるものは”Demonstrably Superior & Pleasingly Different”というコンセプトを貫き通した結果なのです。

実はこの言葉を日本語に訳すのに適切な言葉が見つからず、いろいろ日本語で適切と思われる言葉を書いては考え、少し違うな、と試行錯誤しながらやっと決めた経緯があるのです。
特に"Pleasingly Different"部分の訳に苦労しました。イリー独特の表現だからです。
最終的には<その違いを楽しむことができる>と訳して、それを採用したのですが僕の中では忘れられないエピソードとなっています。
訳しながら感じたのですが、イリーはDSPDには次の意味を含ませていると思っています。
*明らかに優れていて、その違いを楽しむことができるモノを作る
*明らかに優れていて、その違いを楽しむことができる人がいる
*明らかに優れていて、その違いを楽しむことができるサービスがある
キャロウェイゴルフはこのような会社だ、と社員に理解を求めるために。

良いものを作る、しかも最高のもので、人々を喜ばせるようなものを。
口で言うのは簡単かもしれません。しかし、市場にはなく、誰もやったことのない方法で新たな製品を作り出すことは本当に大きなリスクを背負って出発しなければできませんね。
だから最初の言葉 "Take a Risk" があり、社員に仕事をする上で共通の合言葉としてのDSPDが必要だったのです。

DSPDは今でも僕の心の中にあり、何かをする時に必ずこの言葉を自明のものとしながら進むことにしています。
次回は会社を発展、成功させるための人材発掘の考え方、やり方です。



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