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決算説明プレゼンの仕方で株価は変わるのか?

上場企業にとって、決算説明会は極めて重要なイベントです。しかし、プレゼンテーションの巧拙によってどれほど株価に影響が出るのかは、なかなかイメージしにくいのも事実です。

今回は、求人情報サイト「バイトル」を運営するディップ株式会社を題材に、決算説明の仕方が株価にどのような影響を与えうるのかを考察します。

競合サービス「an」の事業終了

「バイトル」の競合であり、バイト情報誌の先駆けだった「an」は、デジタル対応で競合他社に出遅れたことなどから売上高が低迷していました。これを受け、2019年8月には年内のサービス終了が発表されました。

パーソルホールディングス(HD)は1日、アルバイト求人情報のネットサービス「an」を11月25日に終了すると発表した。デジタル対応で競合他社に出遅れ、求人広告の収益力が落ちていた。

競合サービスの終了は「バイトル」にとって追い風になるはずでした。サービス終了発表の直前において、「an」が掲載していた求人情報は約30万件を超えていました。これは、「バイトル」の約20万件を上回る件数でした。ところが…

ディップの売上高・営業利益の成長率は鈍化?

上記は、ディップの四半期別売上高・営業利益の成長率を示したものです。

2019年8月1日に「an」の事業終了が発表されたことから、売上高・営業利益の成長率は増加するものと考えられていました。ところが、上記のグラフを見ると競合のサービス終了という追い風にも関わらず、成長率が鈍化していることが分かります。

株式市場の期待とは裏腹に、事業の成長が停滞しているかのように見えたのです。

ディップの決算説明資料に見られる工夫

上記は、ディップの決算説明資料の一部を抜粋したものです。

ディップは、売上高の内訳を「代理店経由の売上高」と「直販の売上高」に切り分けて説明を行いました。これを見ると「an」のサービス終了発表を受け、代理店経由の売上高は大きく伸長していることが分かります。

売上高全体の約2割を占める代理店経由の売上高が順調に伸びていることを示すことにより、成長率鈍化の懸念を払拭することを狙ったものと推測されます。

株式市場の反応は?

ディップの決算説明に対し、株式市場は好意的に反応しました。同社の株価は、2020年1月10日の決算説明の翌日に5.1%値上がりしたのです。

実際に、投資家からは「短信を見て成長率の鈍化を懸念したが、説明資料を見ると何が起きているのが分かった」、「実績値はパッとしなかったが、説明の仕方が上手だったので納得」といったフィードバックが寄せられたそうです。

ディップの事例から分かることは二つあります。一つは、決算説明の巧拙が株価に影響を与えるということです。ポジティブ・ネガティブどちらの方向にも影響する可能性があります。

もう一つは、決算短信には限界があるということです。短信では伝えきれないことを、決算説明資料を使って説明することができれば、投資家の不安を和らげたり、適切な事業理解を促すことが可能になるわけです。

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