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【企業解体新書】フード&ドラッグの先駆者「コスモス薬品」

ドラッグストア業界は、企業ごとに経営戦略が大きく異なっており、各社の特徴を比較すると非常に面白いです。その中でも今回は、売上高業界3位のコスモス薬品を取り上げます。同社の特徴を3つのポイントで紹介します。

特徴① フード&ドラッグの代表格

ドラッグストアの食品比率

コスモス薬品は「フード&ドラッグ」の代表的な企業です。ドラッグストアでありながら、売上構成比の約6割を食品が占めています。食品比率の業界平均は約3割ですから、同社のフードの強さは際立っています。

上記のグラフは比率の比較なので、次に金額ベースでチェックします。

ドラッグストアの食品売上高

コスモス薬品の食品売上はドラッグストア業界では断トツです。売上規模こそツルハHD、ウエルシアHDに次ぐ業界3位ですが、食品の売上に限れば2位以下にほぼダブルスコアの圧倒的な地位を確立しています。

食品の特徴として、医薬品や化粧品に比べ購買頻度が高いことが挙げられます。コスモス薬品は食品をテコに消費者の来店頻度を高めることで、人口1万人以下の小さな商圏でも成立する「小商圏型メガドラッグストア」というユニークなビジネスモデルを構築しています。

小商圏をターゲットにしながらも、大型の店舗を出店することによって、消費者の利便性を高めています。いわゆるワンストップショッピング(1つの店舗で全ての買い物を済ませる)のニーズを取り込もうというわけです。

当社のメガドラッグストアは医薬品・化粧品のみならず日用雑貨、生鮮三品以外の食品等の日常の暮らしに必要な消耗品を満載した、 非常に便利が良い店舗となっています。現代人にとって最も重要なものは時間であり、時間の節約こそが消費者最大のニーズ。それを満たす新しいビジネスモデルが、『小商圏型メガドラッグストア』なのです。

コロナ禍の現在では、こうしたワンストップショッピングのニーズは高まっているようです。コスモス薬品の経営戦略には追い風が吹いています。

実際に、セブン&アイHDの井阪社長は日本経済新聞のインタビューで「コロナで買い物の仕方はがらっと変わり、どの小売業態でも1カ所で済ませたい傾向が見える。」と語っています。

特徴② 徹底的なローコストオペレーション

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二つ目の特徴は、徹底的なローコストオペレーションです。

マージンの小さい食品比率が高いコスモス薬品は、その分売上総利益率が低く20%弱となっています。マツキヨHDとは10%近くの差があり、各社の特徴が色濃く反映されています。

低い粗利率にポジションを取っているコスモス薬品は、その分ローコストオペレーションを徹底しています。「毎日安い(Everyday Low Price)」を価格戦略の基本とし、店舗作業や物流を平準化することで、サプライチェーン全体のコストを低く抑えています。同社のwebサイトには次のような記載があります。

あらゆるコストを可能な限り抑制し、良い商品を1円でも安くお客様に提供することで、地域のお客様に豊かな生活を提供してまいります。(コスモス薬品のwebサイトより)

徹底的なローコストオペレーション体制が確立しているからこそ、低い粗利率でも5%近くの営業利益率を確保することができています。

特徴③ M&Aに頼らない成長

3つ目の特徴は、自前主義による成長です。

コスモス薬品はM&Aに頼らず地力出店で成長を続けてきました。現在業界上位のツルハHDやウエルシアHDがM&Aを繰り返すことで業績を拡大してきた中で、コスモス薬品は異色の存在です。

背景にあるのは、店舗年齢が若いことが長期的に見ると競争力につながる、という考え方です。M&Aで一気に店舗数を増やすと、売上規模は拡大するものの老朽化した店舗が多くなってしまいます。

だからこそコスモス薬品は、M&Aに頼らない自前主義を貫いているわけです。同社の横山社長は「店舗年齢が若いこと=競争力」という考え方を明かしています。

「当社は店舗年齢が低いこと=競争力という考え方を持っている。新規出店すると3年間は赤字を覚悟する必要があるのだが、先の成長性は明るい。一方、買収した古い店舗の将来性には疑問を持つ。その店舗と当社の大型店舗を競わせたときはどうなのか? 当社には、勝つ自信がある。だからM&Aには食指が動かない。」

まとめ

コスモス薬品は、食品を強化することで消費者の来店頻度を高め、小さな商圏でも成立する「小商圏型のメガドラッグストア」というユニークなポジションを確立しています。

食品比率が高い結果として粗利率はどうしても低くなってしまいます。そこをコスモス薬品は徹底したローコストオペレーションによりカバーしているわけです。

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