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ZORNを聴いて思うこと/2020.12


12月は、慌ただしさのなかで日々がいつのまにか過ぎていき、気が付いたらなんとも言えない余韻を残して、無理やり年が終わっていく。毎年そんな感じがする。

発せられることのない声

転職して2ヶ月程経った。
この辺になってくると、同僚たちの個性とその裏側のストーリーも少しずつみえてくる。
僕たち設計者の仕事は地味だ。あくまで建物を設計するものとして存在しているので、スター建築家でもなければ、僕らの個性というものはほとんど表に出ることはない。だけど本当は、働いているとそれぞれに思うことがあって、それぞれにストーリーがあるのだ。
自分自身、仕事をしているなかで色々と感じることがあるけれど、なにかを感じたとこで、その感情はどこにも行く先がないなと思うことがよくある。だから、僕はこうやって文章を書いているのだろうけれど。
それぞれ言いたいことがあるなかで、日々の生活に追われ、その声を発する機会は与えられない。そんなことを思うのは、僕だけではないだろうし、誰しもが思うことかもしれない。

生活の声

仕事に向かうとき、音楽を聴く。
普段は洋楽を聴くことが多くて、歌詞の内容を味わうというよりは、音の響きを愉しむことが多いのだけれど、言葉を摂取したい気分のときは、日本語のhip hopを聴く。

全ての働く人間の人生に 僭越ながら俺がいいねを押してぇ
それは素通りされるストーリー 生活の声よ 柵を越えろ

これは、ZORNというラッパーのリリックだ。
※ZORN/Life Story feat.ILL-BOSSTINO より

生活の声を代弁するようなZORNのリリックは、彼がラッパーをしながら建築現場で職人をしているということも相まって、さらに芯に響く。

名のない人たちの何気ない日常。「くらしてん」では、そのひとつひとつを慈しむべきものとし扱っている。表現方法は全く違うけれど、「くらしてん」の根底にあるそういった想いに、ZORNのリリックがとても近い感じがする。そんなことを会社へ向かう車の中で思った。

通勤

当たり前であること

話は戻るけれど、
今月は、施主との打合せにも参加することが多くなってきた。
これまでの仕事では法人を相手にしていたので、ギャップを感じるところが多いものの、実際その空間に住む人の顔がみられるというのは、設計する側のモチベーション的にはわかりやすくて良い。
そして、施主と直接話していると、彼らにももちろん個性があって、それぞれ色んなことを思うのだなと当たり前のことに気付き、はっとする。
そして、素直にこの人たちに、幸せに暮らして欲しいなと思う。

家族のこと

今月は、大きな出来事がひとつ。わんこ姉ちゃんの手術があった。彼女は、避妊手術のため数日の入院をした。彼女の健康のための手術ではあるのだけど、なんとも申し訳ない気持ちになる。
彼女がいない数日、彼女がいた何もない日々のありがたさを感じる。

数日後、彼女が無事戻ってきて、
最近、表情が豊かになってきたヒト弟との謎のコミュニケーションに、僕も横にいる妻も顔が綻んでいるのに気付く。
こういう何もない日々を大切にしたいと思った。

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