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地域をアーカイブするということ ー「くらしてん」陸前高田ページのリリースによせてー

こんにちは。メディア「くらしてん」を主宰している加藤です。
この度、「くらしてん」のサイトに「地域ページ」が加わります。これから様々な地域のページをリリースしていく予定ですが、まずは「地域ページ」の第一弾として、陸前高田のページをリリースします。

このnoteでは、
①地域ページをつくることになったきっかけ
②地域ページの構成
③今後の展望

について、書きたいと思います。

①地域ページをつくることになったきっかけ

2018年にスタートしたメディア「くらしてん」。これまで5年間、私たちのゆっくりとしたペースではあるけれど、少しずつ様々な地域の方の暮らしを集め、40人を超える方々の暮らしを記録してきた。
これまでも何度か書いているように、はじめは何か怪しい活動と思われながらも、最近は私たちの活動を面白がってくれる方と繋がれる機会も多くなってきた。それはきっと長く続けることで、こちら側の説明も多少は流暢になったこと、そしてサイトリニューアルをしたことでデザインが加わり、活動が理解しやすくなったこともあるだろうと思う。そんなこともあり、活動を始めた頃のように「なぜそんな活動をしてるのか」という質問もあまりされなくなってきて、私たち自身が活動のコアを振り返る機会も自然と少なくなっていた。
だけれど、「何か忘れていないだろうか」そんな引っ掛かりがあった。
そんな中、過去の資料を漁っていると、活動を始めた当初の企画書が出てきた。その企画書には、こんな言葉があった。

「くらし」を集めることで、「地域」の姿が浮かび上がる。
たとえば、漁師の人から見たまち。農家の人からみたまち。会社勤めの人からみたまち。
同じまちに暮らしていても、まちの見え方はそれぞれ違うはず。
でも、同じ風景が好きだったり、同じ食材を食べていたり、どこか重なる部分も見えてくるのではないか。いろんな人の視点でそのまちを多角的にみることで、そのまちの地域性が立体的に浮かび上がる。

数年前に自らが記した文章に、記憶を呼び起こされた。
私たちはそもそも、人から人への興味ではなく、人から人を経て、その地域へと興味を導きたいのだった。
活動を始めて、気が付けば、陸前高田についてはすでにこれまでに10人程の暮らしを記録していた。つまり、サイトリリース当初に自ら掲げたコンセプトに、5年間の時を経てやっと辿り着いたのだった。

②地域ページの構成

地域ページは、「くらしの風景」、「くらす人」、「くらしの声」という三つのコンテンツで構成されている。

くらしの風景


これまで、同じまちに暮らす複数の人々に話をきいてきた中で感じたのは、まちの姿はどの人の視点でみるかによって、まったく違う表情をするということだ。ある人にとっては、取るに足らない風景であったとしても、ある人にとっては想い入れのある風景であるのだ。
*こちらについては、以前に書いたnoteをご参照ください。

だけれど同時に、それぞれの想いの重なる風景というのがある。別々の協力者に渡したカメラに、まったく同じ風景が写っていることが何度かあった。
陸前高田であれば、箱根山から見下ろす広田湾などである。皆この場所と風景にそれぞれ形は違えど、深い思い入れを持っていた。
ゲニウスロキという言葉が思いだされるけれど、こういう風景の存在が陸前高田というまちのアイデンティティを深いところで支えているのだろうと思った。
このような、その地域を特徴づける風景をうまく抽出できるようなカテゴリーを考えた。そして、眺・働・集・遊・住という5つにカテゴライズすることで、さまざまなスケールの風景にその街の特徴が浮かび上がられたらと考えた。
縦軸には、同一のカテゴリーでまとめたそれぞれの暮らしの場面を配置し、それぞれの暮らしとその風景との交わりを感じられるデザインとして、このコンテンツを眺めることで、その街の立体的な姿が想像できるようにしたかった。

くらす人・くらしを支える人たち



ここでは、その地域を支える人や団体を紹介する。
これまで様々な地域を訪れたとき、あたりまえのことに気が付いて、はっとさせられることがあった。それは、地域は地域の人たちがつくっているということだ。都会に暮らす僕は、自分の暮らすまちを自らがつくっているという感覚はとても希薄であったから、それぞれの地域で暮らし、そしてそのまちのことをダイレクトに改変していっている人たちの頼もしい姿がヒーローのようにさえみえたのだ。
*こちらについては、以前に書いたnoteをご参照ください。

このコンテンツを通して、その地域をつくっているヒーローたちを少しでも紹介できれば。そんな願いを込めた。

くらしの声


その地域に暮らす人への質問と、その回答をQ&Aの形にし、一枚のカードのようなデザインに落とし込んだ。
知人に投げかけるような何気ない質問と、それに対する何気ない回答。その抑揚を抑えた言葉のやり取りの中でこそみえてくるリアルがあるだろうと考えた。
そして、まちに実際に暮らす人と、そのまちに興味のある人とが、このコンテンツを通してささやかなにでも交流がなされ、「くらしてん」という活動が、もっと参加しやすいものになればという願いを込めた。

変化し続け、アーカイブされていく地域の記憶

これら三つのコンテンツは、すべて私たち運営チームだけでは完結できないものとしたかった。

なるべくその地域に関わる人や関わりたい人との関わり合いのなかで成立し、永続的に変化し続け、そしてアーカイブ化されていくそのまちの記憶のようなものをめざした。
なぜならば、どの地域にもあたりまえのようにいくつもの暮らしがあり、その暮らしのひとつひとつの総体が「地域」なのだから。

*サイトはこちら


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