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「くらしてん」

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「くらしてん」は、様々な地域にくらす人の何気ないくらしを記録しているメディアです。noteでは記事のあとがき、暮らしにまつわるあれこれを話すpodcastの話などを綴っています。
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#エッセイ

追熟の期間

山形から桃を取り寄せて、追熟に何日か要するから、食べ頃になるのを妻は楽しみに待っていたのだけれど、彼女はそれを待たずに病院での時間を過ごすことになった。 彼女と息子は、小児科の狭いひとつのベッドで過ごすらしい。息子のもとに病が突然訪れたのだ。 妻が、楽しみにしていた桃を食べられないのは可哀想だから、食べ頃になった桃を、二日おきに剥いて届ける。タッパーにいれて、保冷剤をいれて。 届けると言っても、コロナ禍による面会規制で彼女と息子には会えないのだけれど。 いつも部屋には息子

違和感を浄化すること

最近、私たち夫婦で主催している"くらしてん"というメディアのサイトリニューアルに向けて、このメディアを始めた頃のことを振り返ることが多くある。 このメディアを始めたきっかけやその頃に考えていたこと、そして自分自身のくらしに対して感じていたこと。自分の書いた文章をよみかえすと、不満たらたらで、いかにも自分らしい文章だなと思う。 そして、自分の文章を改めていくつか読んでいると、"違和感"という言葉を多用していることに気付く。 * 高校まで過ごした函館という街に対する違和感

ミウラさんの写真と、芭蕉の足跡

このあいだ、陸前高田に訪れたときのことを書いた。 そのときのことを、もうすこし書いてみたい。 ミウラさんの写真を辿る陸前高田に滞在している数日のなかで、ミウラさんが”くらしてん”で撮った写真の場所を案内してくれた。 わたしたちが、ミウラさんの写真の風景をみてみたいとリクエストしたのだ。 なるほど。朝起きて出勤しながら見ているのは海は、ここからの風景か。 作業の合間に、おばあちゃんたちと話しながら休憩しているのは、ここか。 くらしてんで記事にしたミウラさんのくらし。 そ

パズルのように、すこしずつ組み合わせて形作っていくこと

昨日このnoteを書きました。 "くらしてん"という暮らしのWebメディアをはじめたご夫婦が陸前高田にきてくれて、今日は2日目。 夕方に会ってから今日に至るまで、"くらしてん"にまつわる友達たちと会っていたんだけど、情報量が多くてなんだか最初の記憶が薄い……。 いつもオンライン上でのビデオ通話でミーティングすることが基本だったので、直接会うのは実は今回がはじめて。 やっぱり、直接会わないと伝わらない温度感とかもあるなあと実感した。 * 実際の暮らしと"くらしてん"

陸前高田に行ってきた

夫婦で陸前高田に行ってきた。 くらしてんに協力頂いている方々に会うための旅だ。 陸前高田では、これまでミウラさん、ハギワラさんの2人の記事を公開させて頂いていて、さらに今3人に協力頂いて記事を仕込んでいる。(1人は近くの花巻の方) ミウラさんのくらし↓ ハギワラさんのくらし↓ 今回はその全員に、はじめてオフラインで会うことができた。 というのも、私たちのサイトは”写ルンです”を送って、その人自身に撮ってもらうという少し変わったスタイルでやっていて、その後のインタ

くらしを形づくる”ひと”

地方に住んでいる人たちは、 その人のままくらしていて、 その延長線上で、その個性のまま働いてる。 先日、東京の家から車で数十分行ったところにある松戸の街を歩きながら思った。 このお店の人は、こういう音楽が好きなんだな。店に何気なく置いてある本もきっとこの人の思い入れのあるものだろう。 着ている服もその空間も、全てがその人を表現している。 いいお店ですね。というと、 嬉しそうな顔をするし、 その地域のことをきけば、その人の好みを交えていろいろ教えてくれる。 東京では感じ

くらしの選択肢を増やすこと

今年の1月頃に、"くらしてん"という自分の暮らしを紹介するメディアを遠野に住む友達から紹介してもらった。 そして、春頃に"私の暮らし"を載せていただいたのだけど、そのときに私が毎日noteを書いていることや学生のときにライターになりたいと思っていた話をしたことが縁で、ありがたいことに主催のご夫婦にお誘いいただいてメディアのお手伝いすることに。なんともありがたいご縁。 (そのときにヒアリングしてもらった私の暮らしはこちら。) ↓ 自分の1日の暮らしの流れ

有名であることへの違和感

サイトをはじめて1年近く経つのだけど、最初は取材させてくれる人を見付けるのも大変だった。 ある人には、 自分はほんとにただのサラリーマンだから ということで断られた。 いや、普通の人のくらしを載せたいんですよ といったのだけど、なかなか理解してもらえなかった。 そのほかにも、自分の地味なくらしをサイトに載せることのなにが地方創生になるのかとか色んな反応があった。 というか、あやしい宗教かなにかだと思われていたと思う。 会ったこともない夫婦が人づてに、いつものくらしを写真

家と会社のあいだにあるもの

函館で高校まで過ごして実家を出てから、もう何度引っ越しをしたかわからない。けれど、何度繰り返したとしても引っ越しは、いつまでも、なにをするよりもわくわくする。 まず、物件情報を見るのがものすごくそそられる。僕が建築設計の仕事をしているからかもしれないけれど、間取り図をみると、ここになに置こうかとか、ここは読書部屋にしようとか、いつまでも空想が止まらない。 実は、僕の間取りフェチは、小学生のとき自分の部屋を与えられて以来続いている。思えば小さい頃から部屋の模様替えを異常な頻