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左手に金の滝が打つ 3

第1話

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 食堂の人の入りはまばらで、大理石の床が日光をはね返す。

豪華な見た目にはそぐわない食券機には赤青黄のメニューボタンが並んでいる。

左上の朝食セットを選び、係の人間に食券を手渡す。バターロールにサラダとスクランブルエッグのついたシンプルなセットが緑色した簡素なトレイの上に置かれて渡される。

入り口に一番近い左端の定位置に座り、部屋の壁の奥に掛けられた大きな一枚の絵画を眺める。

全く理解できないその絵画はおそらく数百億円はするのだろうが、それは所詮百円のライターで簡単に燃えて消えてしまうものなのだ。人間は生命に価値のないものにしか価値を感じられない生き物なのだ。

私は原価三〇〇円程度であろう生命維持の必需品を口で砕き、腹に落とした。

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