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左手に金の滝が打つ 1

機械仕掛けのコウノトリ 第1話

 木々の隙間から堅牢なバロック様式の城を見た時、私は頭の中で「ここではどういう扱いなのか」と他人事のようにつぶやいていた。

施設で和人と別れ、四時間は高級車の中でただ外を見ているだけだった。

 車が止まり、降ろされた時、そびえ立つ城は最後の晩餐を味わうにはふさわしい美しさであった。

図書館の図鑑でしか見たことがないものが目の前にあることへの感動が溢れて、自分の命が一歩ずつ絡めとられようとしていることを忘れてしまっていた。

次話

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