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J3 第28節 レビュー【藤枝MYFC vs 鹿児島ユナイテッドFC】立ち返った場所

2021.11.20 J3 第28節
藤枝MYFC vs 鹿児島ユナイテッドFC

こんにちは。
今回もご覧いただき、ありがとうございます。

今回のお相手は藤枝。
ヘッダーは藤の花です。綺麗ですね。今回はこれで良いんでしょう、知らんけど。

藤枝は対戦前までに8勝7分10敗の勝ち点31、10位。
絶賛中位対決となりました。

鹿児島としては今節は昇格可能性が消えてからの初戦。戦術的にもそうなんですが、どちらかと言うと戦略的な見方・鹿児島ユナイテッドの哲学みたいなところが大事な試合になったかなと思っています。

思いの丈は、主に後書きに書きます。
あとがきだけでも見ていってください!
というわけで、ご笑覧ください。

スターティングメンバー

まずは藤枝。
2-0で勝利した前節八戸戦からメンバー変更はありませんでした。良い流れを継続ですかね。

続いて鹿児島。
萱沼が左SBで起用されます。言われてやっと思い出したんですが、三浦政権でやってましたね。そら出来るわ。今回はインナーを位置取ることが多く、思ったより大外レーン滑走タスクはやってなかったです。

しかし、ここでSBで登用された意味の捉え方は難しいです。上野体制でのCFとしては烙印を押されたも同然ですが、それでもトップ下でもSBでも今日出来るユーティリティっぷりを評価すべきか…微妙です。

中村も初スタメン。ゴールも挙げてくれました。
ゴールについては前半からキックが怖くなるほど調子良かったフォゲッチ、ニアで潰れてくれたFW勢、ちゃんとフォアのスペースを取れた本人の功労賞でした。

その他のプレーでは、やっぱりサイドに寄りすぎかなと思ったのと、タッチライン際で背を向けてプレーしたがりますよね。良くも悪くもオルンガがいた頃の江坂っぽい。

注意すべき角度を180°に限定して負荷を減らしたいのか、何かの副産物なのかは分かりかねますが、もうちょい中央でプレーして欲しいぜ!という気持ちです。

雑感

5レーンを駆使

3-4-2-1を基本フォーメーションにしている藤枝。
両WBとシャドー、CFで5レーンを埋めます。

序盤では5レーン使うことで、鹿児島をブロックを広げる→広がったブロック間に楔のパスを打ち込み、フリックするなどして最終ラインを突破されるシーンが多くみられました。

また、大外レーンかつ2nd-3rd間のWBも頻繁に使われます。上野監督のコメントからは「コンパクトに」とのことだったので、WBにある程度自由を与えるのは許容していた所以もありますが。

(上野監督・試合後コメント抜粋)
まずは全員でコンパクトにして、プレスも守備も粘り強く、セカンドボールもこぼれ球も拾っていこうとゲームに臨みました。

またWBについては、2Qくらいからは7番鈴木からのサイドチェンジが効いてきます。後半にかけてのサイドチェンジを狙っていたのは須藤監督のコメントからも窺えました。

(須藤監督・試合後コメント抜粋)
例えば左サイドにある時の右サイド、逆サイドが空いていたので、そこを上手く使っていこうということを強調して臨みましたが、なかなか上手くフィットしませんでした。

7番鈴木のフィードは弾道が低く、スピードがあるので、サイドチェンジされると、スライドが間に合わないですね。厄介なキックを持っている選手です。

右肩上げへの移行

また藤枝は、10分くらいまで陣形そのままにビルドアップを試みていました。

この陣形に対して鹿児島は、SHがCBまで前進することでプレッシングは掛けやすくなっていました。

これに対して藤枝は、右HVの5番岩間を上げて、右肩上がりな陣形になります。このことで、大外は5番岩間が大外で幅取り。絞れるようになった右WBの22番久富(16分に33番河上と負傷交代)や中央で数が多くなるシャドー、DHが落ちるなどして駆け引きしてきました。

そうして、鹿児島のDHなどが食いついて、空いたスペースを最前線で張っていた選手が利用するシーンも見られました。

また、鹿児島DHを動かすという意味では、今節も今節とてDH脇を取られることもありました。藤枝は、シャドーやWB・DH・HVなどが鹿児島DHをサイドに引き寄せようとしてはいましたが、こう重なってくると対応もしていきたいです。

ただ全体的に見ると、藤枝はロジカルな前進はあまり出来ておらず、苦し紛れにロングボールを蹴ることも多かったですね。藤枝のビルドアップも発展途上の様子でした。

縦に速く

一方の鹿児島。
いつも以上に縦に速く攻める意識が強かったように思います。

特に、トランジションでどうしても帰陣が間に合わないタイミングがあるWBの裏や、山本への楔のパスは意識的に入れていました。

WB裏については、鹿児島の強みであるSHが狙えて、今節は米澤・三宅と縦への推進力がある2人だったので狙いどころでした。

三宅はサイドでも輝けるようになってましたね。トップ下で最終ライン背後のスペースを取る意識が増していましたが、サイドでもその意識があったんじゃないかなと思います。右に配置されても、思い切って縦に勝負出来ていました。

攻撃面ではこれを続けて、守備面でのプレス強度も良いので、もう少し連続性があれば上位リーグのクラブも黙っちゃいない存在になりそうなんですが、あまりバラさないでおきましょう()

そして、山本が楔を受けられますね。
例えば大迫みたいに収める時の身体の使い方が上手いというより、オフザボールで先手を取れているように見えます。

あと前節もそうなんですが、全体を見て落ちるべきタイミングで、落ちるべき場所に落ちる賢さも兼ね備えています。だからこそ余裕を持って収められている、というプレーが続いています。

大卒の子達はクレバーな子が多いですね。
木出くんも復帰が待ち遠しいです。

ラストの工夫が足りないお互い

と、いったように両チームとも狙いはあったようには思うのですが、やっぱりラストサードが単調かなというのが率直な感想です。

今節はフォゲッチ→中村ラインが開通して得点でき、守備についても低く中央に固いブロックを形成出来ていたので、守り切ることが出来ました。

ただ今後優勝や昇格を狙うには、もうひと工夫が欲しいです。あるいは、新体制発表会で言及があったように、より得点に直接関与できる選手を置くという手当は必要かと思います。

あとがき

というわけで、互いに昇格可能性が消滅した中でのゲームで勝利を収めることが出来ました。

(実現可能な)目指すべきものが無いという同じような状況ですが、この状況の捉え方は両チームでくっきり分かれていました。

まずは、藤枝。
以下は須藤監督の試合後コメントです。

●J2昇格がなくなった中、来季に向けて取り組んでいること
来季というよりは1日1日、1試合1試合チーム力を上げていきたいですし、個の能力も上げていきたいということで毎日の練習から臨んでいます。その中でも、もっともっとボールを動かす、ただ動かすだけでなく動かして引きつけてどこを空けてどこを使っていくのかをより突き詰めていきたいと思います。今日のように前から同数で来るのであれば、空くところをしっかり探しながら質の高いボールを入れ込む、入れた瞬間に誰と誰が関わるのかまで考えながらボールを受ける・出すというところは今日の試合もテーマでしたが、今後も続けていきたいポイントです。

次に、鹿児島。
中村と白坂のコメントを載せます。

(中村・試合後コメント)
--J2昇格がなくなった中で、どのようなモチベーションで試合に臨んだか。
昇格の可能性はなくなったが、チームとしては少しでも順位を上げて、サポーターに戦っている姿、少しでも強い鹿児島の姿を見せるということを意識していた。個人的にはここへ来てやっとチャンスが回ってきたので、良いプレーをして結果を出すことを常に意識していた。
(白坂・試合後コメント)
--J2昇格がなくなった中、どのような意気込みでこの試合に臨んだのか。
昇格がなくなったあとの一発目のゲームはとても大事ということを、チーム全員で意識して臨んだ。この一戦でどれだけ戦う姿勢を見せられるか、自分たちの意志を見せられるか。鹿児島の価値を示すものにつながるということは、みんな十分理解して試合に臨めていたので、みんなで方向性を1つにして今日の試合を戦えた。

藤枝の須藤監督のコメントは、「動かして引きつけてどこを空けてどこを使っていくのかをより突き詰めていきたい」という趣旨で、あくまで戦術的な洗練を目指すという捉え方だったみたいです。

反対に鹿児島の選手達からは、「戦う姿を見せる」・「鹿児島の価値を示す」という言葉が出てきており、言わば抽象的なコンセプトを持って挑んだ試合だったようです。

先に断っておくと、どちらが良い・悪いだとか正しい・間違っているということはありません。難しい局面にいる時、何に立ち返るか・何を大事にしているかが明確に表れているだけだと思います。

しかし、何故この違いが表れたのか。
ちょっと考えてみたくなりました。

というわけで、鹿児島は何に立ち返ったのか、今の鹿児島の根本に根差すものは何なのかを考えてみます。

考える上で、プレーモデルの概念に触れないといけないのですが、僕のキャパでは無理難題です。というわけで、こんな時に活躍する僕達のスペクラの記事を貼っておきます。

鹿児島という土地と鹿児島ユナイテッドというチームの哲学を踏まえ、上記の記事に書いてあるようなことを整理して初めて、所謂「鹿児島のサッカー」が定義されるのだと思います。

が、そんなもの鹿児島にはありません。
というか日本でそんなものがあるところを知りません。
今上手く行っているところは、これが俺たちのサッカーだ!と言いたいでしょうが、文化として根付いてはいないのが現状だと思っています。その時々のトレンドで華々しいものをそれっぽく言ってるだけじゃないかと。

でも現実問題、方向付けないといけません。どうしましょう。
ひとまず何でしょう、サッカーにおける鹿児島県民に染み付いている価値観って。
分かんないです。分かんないですが、パッと思いついたのは松澤さんでした。

1966年に松澤が監督就任すると、身体能力の高い選手の素材を活かしつつ組織として個性を噛み合わせた。フィジカルと走力、パワーとテクニックを融合させた“疾風怒濤”のサッカーを作り上げた。

松澤さん率いる鹿実のサッカーについて、簡潔にまとまった表現を見つけました。さすが安藤さん。ありがとう、安藤さん。
さらにこんな名言も。

「突出した選手はいないが、鹿児島の子どもたちには『ハート』がある」

どうでしょう。
疾風怒濤のサッカー、ハートがある選手達。
ユナイテッドが標榜する攻撃的なサッカー、今年のスローガン「劇走」に繋がってきますかね。

ここに加えて、ボールを保持して主導権を奪うことを念頭に置いたものが、今の鹿児島ユナイテッドが目指す未来像と捉えることが出来そうです。

このような思想が根本にある為、「戦う姿勢」に立ち返る設計になっているのかなと思います。。戦略的に見ると、攻撃的なサッカー・気持ちやハードワークを求めるフィロソフィーが合う上野監督を招聘し、「戦う姿勢」を体現したがっているという見方も出来ます。

また同じように、藤枝の文化を考えてみると、須藤監督のコメントに帰結するのも納得出来ます。

勿論これらは僕の妄想で、単に上野監督の思想が強そうですし、チーム関係者が見れば何言ってたんだ!と言われそうなことですが、いずれにせよ今節に関しては、これらを勘案した戦略・フィロソフィーから成る「立ち返る原点」を感じる試合になっていました。

僕自身は困った時に「強い気持ち」に頼るやり方は大好きなので、今節の方向性には賛成しています。と言っている時点で鹿児島の指針としては正解の一つなのかもしれませんね。今シーズンも残り2試合もなりましたが、今節で見られた要素は引き続き見せてもらいたいです。

それでは、この辺で終わりにします。
また来週もよろしくお願いします。

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