保護者の運動習慣と子どもの身体能力は関連する!!

 幼児期の運動参加は肥満解消や幸福感,将来の運動参加率などに関連するためとても重要です.

 しかしながら,近年では子どもの運動参加率や活動レベルが低下しており,それに伴って,肥満や体重過多の子どもが増えています.

 したがって,いかに子どものスポーツ・運動参加を促すか,なぜ子どもがスポーツ・運動に参加しない理由を探すことはこれらの問題を解決するためにとても重要ではないでしょうか?

 今回紹介する研究は,保護者の運動習慣と,子どもの課外スポーツ参加と身体能力の関係について検討した研究を紹介します.


Cleland et al.,Parental exercise is associated with Australian children's extracurricular sports participation and cardiorespiratory fitness: A cross-sectional study (2005)International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 2:3
https://link.springer.com/article/10.1186/1479-5868-2-3

目的 ; 保護者の運動習慣と子どもの課外スポーツ参加と心肺フィットネスの関係を明らかにすること

方法

実験参加者; 7-15歳の8484人

アンケート内容(子どもが回答);母親・父親は週に2回以上運動しますか?体育の授業以外で参加しているスポーツの名前全て

有酸素能力テスト;1.6km走, 自転車でのPWCテスト

そのた;住んでいる地域の社会経済的地位(SES; 学歴,職業,収入など).学校の種類(公立/私立,無料/有料,カトリック)


結果

両親の運動習慣は,男女ともに子どものスポーツ参加と有意な関係が見つかった.両親ともに活動的な子どもは両親ともに不活動な子どもよりも平均0.6個多くのスポーツに参加し,片方の親のみが活動的な場合でも,両親ともが不活動な子どもよりもスポーツ参加が有意に高いことが示された.親の性別には関係なし.

両親ともに活動的な男児は両親ともに不活動な男児よりも平均18秒,1.6km走のタイムが早く,両親ともに活動的な女児は両親ともに不活動な女児よりも平均24秒,1.6km走のタイムが早いことが示された.どちらか一方の親が活動的な場合,両親ともに活動的な子どもよりも1.6km走のタイムは早くなるが,有意な差ではなかった.

両親の運動習慣と男児のPWCの成績には関係がなかったが,女児の場合,活動的な両親の場合,両親ともに不活動な場合よりも平均0.7 kgm.kg-1.min-1良い成績を残し,さらに,母親が活動的な場合の方が,父親が活動的な場合よりも成績が良いことが明らかになった.

子どものスポーツ参加と有酸素能力(1.6km走タイム)には正の相関関係が見られている.

以上をまとめると,両親の運動習慣は子どもの体力(有酸素能力)ととても親密な関係があることが明らかにされた.さらに,これらの関係は年齢や学校の種類,SESに関わらず見られている.

 運動習慣がある両親は,運動が好きな場合が高く,子どもの運動を支援し協力的である可能性が非常に高い.さらに,子どもは両親の真似をして成長していくので,両親が運動している姿をみた子どもは,必然的に運動へ積極的に参加することでしょう.

 子ども期の運動参加は,将来の運動参加や持続に親密な関係があるため,子どもに運動させたい場合は,両親自身が運動を積極的にする必要があるように思える.

 指導者や先生もしくは親自身は,運動習慣のない両親を持つ子どもは,運動参加や体力が低い傾向があるので,注意して指導する必要がある.さらには,運動不足や肥満を引き起こすリスクが運動習慣のある両親の子どもと比較して高くなるのは,この研究から簡単に推測することができる.さらに,考察でも述べられているように,運動習慣のある両親は子どもの運動参加を積極的に支援する傾向がある一方で,運動習慣のない両親はあまりサポートできていない.つまり,子どもは運動参加の支援を受けずに成長しているため,運動を継続することがより難しくなると考えられるでしょう.したがって,指導者は,そのような子ども対して,注意をはらい,運動は楽しいものだと教えてあげ,できる限り運動を続けていけるような環境を作ることが重要でしょう.

指導者がやるべきことは,運動習慣のない両親を持つ子どもがより運動参加さらには運動を持続しやすい環境を作ろう!!


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